メルセデスの新型直6をメルセデス・ベンツSクラス S450で味わう 時代は再び直6へ! F1エンジン開発者が作ったメルセデスの新型直6エンジン・M256【メルセデス・ベンツSクラス S450】
- 2018/03/21
-
世良耕太

メルセデス・ベンツSクラスに新型直列6気筒ターボエンジンを搭載するS450がラインアップに加わった。このエンジン、メルセデスが20年ぶりに送り出した意欲作なのだ。V6から直6への回帰、というだけでない。48Vシステムや電動コンプレッサーなど最新技術を満載した直6=M256エンジンをS450の試乗で試した。
TEXT◎世良耕太(Kota SERA)
メルセデス・ベンツSクラスに「S450」が追加になった。例によって(?)、三ケタの数字はエンジンの排気量を示してはいない。4.5ℓのエンジンを搭載しているわけではなく、自然吸気エンジンにあてはめると4.5ℓ相当のパフォーマンスを発揮するというイメージだ。実際には排気量3.0ℓの直噴ターボエンジンを搭載する。最高出力は270kW(367ps)、最大トルクは500Nmである。
しかもこのエンジン、新開発だ(本国デビューは2017年)。さらに言うと、直列6気筒である。メルセデス・ベンツが直6を送り出すのは、1997年に生産を中止したM104以来、20年ぶりのことになる。新型の直6はM256と呼ぶ。メルセデス・ベンツはM112、M272、M276と3代続けてV型6気筒ユニットを作り続けてきたが、M276の後継ユニットとしてM256が生まれたというわけだ。メルセデスの6気筒ユニットは順次、直列に切り替えられていく。
直6への回帰だ。全長を直列3気筒並みに抑えられることから、パッケージングの面でV6は歓迎され、主流になった。シリンダーを直列に6本並べるのと、3本を2列で並べるのでは、全長に大きな差が生じるのは考えるまでもないだろう。
だが事情は変わり、直6の方がパッケージングだけでなく、コストや環境、効率の面で好都合になってきたのだ。先代M276・3.0ℓ版のボア径は88mm、隣り合うボア中心間の距離(ボアピッチ)は106mmだった。この仕様のまま直6にすると、1番シリンダーの前端から6番シリンダーの後端までの距離は618mmになる。
一方、M256のボア径は83mm、ボアピッチは90mmだ。シリンダー間の壁の厚さは7mmしかない(M276は18mm)。1番シリンダー前端から6番シリンダー後端までの距離は533mmとなり、M276の仕様を受け継いで設計するより85mm(つまり1気筒分)も短くできる。従来の5気筒分の長さで6気筒が成立してしまうのだ。


エンジン
エンジン形式:直列6気筒DOHCターボ
エンジン型式:M256
排気量:2999cc
ボア×ストローク:83.0×92.0mm
圧縮比:10.5
最高出力:367ps(270kW)/5500-6100rpm
最大トルク:500Nm/1600-4000rpm
カム配置:DOHC
ブロック材:アルミ合金
吸気弁/排気弁:2/2
バルブ駆動方式:ロッカーアーム
燃料噴射方式:筒内燃料直接噴射(DI)
VVT/VVL:In-Ex/×
ボアを小さくし、ストロークを長くとるのは冷却損失を減らすための常套手段で、最新のM256はトレンドに乗った格好。M276のボア×ストロークは88×82.1mmのショートストローク(ボア/ストローク比0.93)だったが、M256のボアストは83×92mm(ボア/ストローク比1.1)のロングストロークになっている。環境/効率志向の高まりが、直6エンジンの復帰をパッケージング面で後押ししたことになる。
隣り合うシリンダー間の壁の厚みが18mmから7mmへと極端に薄くなっているが、これにはNANOSLIDE(ナノスライド)と呼ぶコーティング技術が貢献している。従来はアルミブロックに鋳鉄製シリンダーライナーを鋳込んでいたが、アーク放電による高温で溶かした鋼材をシリンダー壁面に吹きつけるNANOSLIDEを適用することにより、鋳鉄ライナーを鋳込むよりもはるかに薄く、鉄の層を形成することができる。これが、薄さの秘密。しかも、表面はガラスのように平滑になり、摩擦が低減され、耐摩耗性が向上する。

F1エンジンで適用していた技術を転用した格好になるNANOSLIDEは、2006年にAMG向けの6.3ℓ・V8ガソリンエンジンに適用したのを手始めに、ガソリン&ディーゼルのV6、ディーゼルの直4と適用を広げ、M256も採用したというわけだ。最新メルセデス・ベンツ製エンジンのスタンダードな技術となっており、新型Aクラスが搭載する新開発の1.3ℓ・直4ガソリン(M282)にも適用する。
新型メルセデス・ベンツAクラス:打倒ゴルフ! エンジンはすべて新規開発 M282型/M260型/OM608型
- 1/2
- 次へ
|
|

自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
自動車業界 特選求人情報|Motor-FanTechキャリア
「自動車業界を支える”エンジニアリング“ 、”テクノロジー”情報をお届けするモーターファンテックの厳選転職情報特集ページ

ヤマハ発動機株式会社 バッテリーマネジメントシステム(BMS)開発<電動モビリティ用>
年収 | 500万円〜1000万円 |
---|---|
勤務地 | 静岡県磐田市,神奈川県横浜市みなとみ... |
ダイハツ工業株式会社 防振ゴム技術開発・設計<次世代車両/新型車>
年収 | 400万円〜800万円 |
---|---|
勤務地 | 大阪府池田市桃園2丁目1番1号・池田第1... |
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費...
- 2021/03/26
- インプレッション
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形...
- 2021/04/03
- インプレッション

日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に...
- 2021/02/20
- インプレッション
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこ...
- 2019/08/11
- インプレッション
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4と...
- 2021/06/28
- インプレッション
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計って...
- 2019/08/09
- インプレッション
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ

フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chap...
- 2018/08/28
- 新車情報

マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善...
- 2020/04/26
- コラム・連載記事

マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエン...
- 2019/07/15
- テクノロジー

ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態
- 2020/04/19
- テクノロジー

林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えて...
- 2020/02/24
- テクノロジー

マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレイ...
- 2019/07/27
- テクノロジー
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報

メルセデス・ベンツ Sクラス
S500 4マチック AMGラインパッケージ ワンオーナー ベーシックパッケージ レザーエクスク...
中古価格 1013万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S560eロング 後期最終型 右H 正規D車 パノラミックR 黒革 全席シートヒーター&ベンチレ...
中古価格 541.1万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S450エクスクルーシブ 後期モデル パノラミックスライディングルーフ 全周囲カメラ レーダーセ...
中古価格 498.4万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S450 AMGラインプラス パノラミックスライディングルーフ リヤコンフォートPKG ブルメス...
中古価格 419万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S550 クーペ AMGライン /スワロフスキークリスタルPKG/全車検時ディーラー記録簿/レザ...
中古価格 639.3万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S550 クーペ AMGライン レザーエクスクルーシブPKG スワロフスキクリスタルPKG デジ...
中古価格 652万円