東京モーターショー2019で新型プロトタイプ出品か。デザインにベタ惚れなら即“買い” 〈試乗記:スズキ・ハスラーワンダラー〉走りには設計の古さを感じるものの、見ているだけで幸せになり、心が落ち着く
- 2019/06/04
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遠藤正賢
レトロフューチャー感覚のクロスオーバースタイルで、2013年12月の発表直後は納車6ヵ月待ちの大ヒット。今やスズキの軽自動車においてスペーシア、ワゴンR、アルトに次ぐ主力車種に成長しているハスラー。今回は2018年11月に発売された特別仕様車「ワンダラー」NA・FF車に、東京都内および神奈川県内の一般道を中心として、高速道路も交えながら試乗した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、スズキ
ハスラーは先代ワゴンRのプラットフォームをベースに、165/60R15の大径タイヤを装着し、さらにサスペンションストロークを変更。最低地上高を180mm(FF車。4WD車は175mm)にアップ。28°のアプローチアングル、46°のデパーチャーアングルを確保することで、ラフロードや大きな段差のある場所でも走りやすいよう配慮した。
なお、CVT車には当初、減速エネルギーをオルタネーターで回生し12Vのリチウムイオンバッテリーに電力を蓄え電装品に供給する「エネチャージ」が組み合わされていた。だが15年5月の一部改良で、オルタネーターをISG(モーター機能付き発電機)とし発電量を約30%アップ。バッテリーを大電流の充電・放電に対応させてモーターアシストを可能にした「S-エネチャージ」に進化している。
以上が主なハードウェアの構成だが、つまり現行アルト以降のFF系軽自動車に採用されている新世代プラットフォーム「ハーテクト」は、ハスラーには用いられていない。そのためリヤサスペンションはFF車でもトーションビーム式ではなく「アイソレーテッド・トレーリング・リンク」と呼ぶフルトレーリングアーム式だ。
ハーテクトはボディ・シャシーの基本性能向上と軽量化の両立を主眼に開発されているが、軽量化に関してはハスラーのベースとなった先代ワゴンRの時点ですでに推し進められていた。従ってハスラーも、今回試乗した「ワンダラー」NA・FF車(注:ワンダラーにターボ車の設定なし)で車両重量は800kgと、最新の背高軽ワゴンと比較してもむしろ軽い部類に入る。
だが、ハーテクトが旧世代のプラットフォームと決定的に違うのは、やはりリヤサスペンション。そしてボディ・シャシー各部のつながりを滑らかにしたことによる、リニアリティの高さだ。
裏を返せば、旧世代のプラットフォームに属するハスラーには、スズキの軽自動車が長年抱えてきた悪癖、具体的には旋回中にロールが一定以上まで深まった所で突然ロールスピードが速まると同時に、オーバーステアの予兆を見せて挙動が不安定になる傾向が、少なからず残されている。
また、最低地上高が高められたことに加え、安定性を確保するためダンパーが硬くセッティングされたこともあり、特に低速域では大きな凹凸に対し車体が左右にも上下にも揺すられやすい。同乗者はもとよりドライバーさえ、長時間乗り続ければ車酔いしないか心配になるほど。さらにステアリングはインフォメーションに乏しく反力も弱いため、中立付近を維持しにくいのも気になった。
一方でパワートレインは、新世代のR06A型0.66L直3NAエンジンとジヤトコの副変速機付き「CVT7(JF015E)」、S-エネチャージの組み合わせで、最新ではないが新しい部類に入る。
最大トルク63Nmのエンジンに対しISGがもたらす40Nmのモーターアシストは効果絶大で、800kgの車重に加え背が高く直立に近いAピラーを持つため空力面でも不利なハスラーを力強く加速させるのだが、その効き目は最大85km/h、30秒間まで。モーターアシストが切れると目に見えて加速が鈍くなるため、特に高速道路の上り坂では速度を一定に保つのが難しくなる場面も多々見られた。
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