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【クロスオーバーSUV対決】VOLVO V60 Cross Country×Audi A4 Allroad Quattro×Volkswagen Passat Alltrack ボルボV60クロスカントリーとアウディA4オールロードクワトロ、VWパサート・オールトラックで走って、クロスオーバーSUVの魅力を考えた

  • 2019/07/18
  • GENROQ編集部
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ボルボV60クロスカントリー(右)、アウディA4オールロードクワトロ(左)、VWパサート・オールトラック(中)

昨今は空前のSUVブーム。プレミアムブランドもこぞってSUVをラインナップしもはや乗用車の主役となってしまった感さえある。しかし、何も小山のようなボディを持つクルマだけがSUVではない。むしろ通常のワゴンボディをベースとしたクロスオーバーこそ、日常使いに最適なSUVといえるのではないだろうか。

REPORT◉佐野弘宗(SANO Hiromune) 
PHOTO◉市 健治(ICHI Kenji)

※本記事は『GENROQ』2019年7月号の記事を再編集・再構成したものです。

 今回のような「伝統的ステーションの車高をリフトアップして、SUV風味を加えたクロスオーバーワゴン」という手法が世に出始めたのは1990年代半ばのことだ。

 発祥は日本で、94年に5ドアサルーンにSUV風の加飾を施した(地上高はそのまま)三菱ギャランスポーツが出た後、95年にワゴンベースで車高もきちんと上がったスバル・インプレッサスポーツワゴン・グラベルEXが登場。そして同年、現在のアウトバックの前身となるレガシィ・グランドワゴンが発売された。そんなトレンドは欧州にもほどなく伝播して、欧州で初めてその流れに乗ったボルボがV70XCをデビューさせたのが97年、続いてアウディの初代オールロードクワトロが出現したのが99年である。

 ここまで読んでお気づきだろうか。この種のクロスオーバーワゴンは、そもそも本格クロカン車(=今でいうSUV)を即座に造れないメーカーが当時のSUVブームに手早く対応するため苦肉の策……という側面もあった。実際、当時のスバルにボルボ、アウディに今でいうSUVと呼べる商品は存在しなかった。

 あれから20年以上が経過した現在では、これらのメーカーも本格的なSUVを持つようになった……というか、他社以上にSUVを前面に押し出したりもしている。一方で、最初は急場しのぎの感すらあったクロスオーバーワゴンもきちんと残っていて、ラインナップもじわりと拡大しているのが興味深い。

 ボルボは今やV40、V60、V90で「クロスカントリー」のフルラインを構成するにいたっており、アウディのオールロードにもA4とA6の2モデルがある。さらに面白いのは、今回のVWなど新規参入するメーカーがポツポツと存在するのに、世界的なブームになることもなく「知る人ぞ知る」的な静かなジャンルであり続けていることだ。

 そんなクロスオーバーワゴンの最新作がボルボV60クロスカントリー(以下CC)である。ベースはもちろんステーションワゴンのV60だが、特徴的なのは210㎜という本格オフローダーなみの最低地上高。これはXC系のサス部品もうまく活用しながらのリフトアップで、普通のV60より65㎜も増大している。ちなみに、A4オールロードクワトロの最低地上高は170㎜、パサート・オールトラックのそれは160㎜で、どちらもワゴンモデル比で30㎜増となっている。

 こうして数字にすると、アウディやVWの地上高を物足りなく感じてしまうかもしれないが、実際には3台ともワゴンに対する特別感は明確である。そもそも最低地上高が170〜180㎜もあれば、河原や砂浜に林道、そして都市部にある段差や年に数度の積雪など、「現代日本で実際に遭遇しうる悪路」での絶対的な戦闘力は十二分といっていい。

 さらにいうと、V60CCとA4オールロードはそれぞれグリルも専用(V60がドット、A4が縦じま)となり、これが写真で見る以上にワゴンとの差別化に役立っている。3台のスリーサイズはどの数値も50㎜以内の差で収まるほど似通っているが、なぜか大きく見えるのがボルボ。その理由はおそらくボクシーなスタイリングと大きめの全幅、そして前記のとおりに大きめの地上高、そして大きなタイヤ……といった要素の相乗効果だろう。逆に最も引き締まって軽快に見えるのがアウディだが、実際の寸法も僅差ながら一番コンパクトである。

乗り心地のよさこそV60クロスカントリーの美点

Volvo V60 Cross Country
ホワイト系のレザーとグレーのウッドを組み合わせるというセンスはボルボならでは。リラックスして運転できる空間だ。

 最新のV60CCの美点はなにより乗り心地の良さだ。路面のアタリが柔らかいだけでなく、上下動もピタリと収束させるフラット感で、ステアリングも印象的なほど滑らかでリニア。それは、もしかしたら普通のV60より快適なのでは……と思えるほどで、車高をこれだけたっぷりリフトアップして、しかも可変ダンパーの類も使わずに、このフットワークはちょっとした驚きである。

 アウディも同じく日本仕様に可変ダンパーの用意はないのだが、良くも悪くもボルボより引き締まった肌ざわりである。ベースのA4アバントと比較すると明らかにおおらかで癒し系の乗り味なのに、今回の3台では明確に俊敏でスポーティである。ボルボと同等の2.0ℓ直噴ターボエンジンも最大トルクはわずかにボルボを上回るし、そのうえ車重も明確に軽い。さらにキレ味自慢のツインクラッチ変速機もあって、動力性能もはっきり力強く小気味いい。

安全性と快適性を両立したシート。リヤのヘッドレストは前倒しして視界を確保できる。
ドライブモードはEco、Comfort、Individual、Dynamicに加えてOff Roadが選択できる。
エンジンは2ℓの直4ターボ。254㎰/350Nmのパワー&トルクを8速ATを介して4輪に伝える。XC60CCにはディーゼルはラインナップされない。
Proは3台の中では最も大きな19インチを装着。Pro以外のグレードは18インチとなる。

ボルボ V60クロスカントリーT5 AWD Pro
■ボディスペック
全長(㎜):4785
全幅(㎜):1895
全高(㎜):1505
ホイールベース(㎜):2875
車両重量(㎏):1810
■パワートレイン
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量(㏄):1968
最高出力:187kW(254㎰)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7㎏m)/1500~4800rpm
■トランスミッション
タイプ:8速AT
■シャシー
駆動方式:AWD
サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン
サスペンション リヤ:インテグラル
■ブレーキ
フロント:ベンチレーテッドディスク
リヤ:ディスク
■タイヤ&ホイール
フロント&リヤ:235/45R19
■性能
JC08モード燃費(㎞/ℓ):11.6
■車両本体価格(万円):649万円

走行性能の高いA4オールロードクワトロ

Audi A4 Allroad Quattro

 A4オールロードが使う最新の縦置きクワトロは非常に複雑なシステムだ。基本は電子制御多板クラッチによるオンデマンド型で、フルグリップ時にはFFで走る。しかも、途中に2つのクラッチを追加して不要な時にはプロペラシャフト/ドライブシャフトまで止めて最良の駆動効率を図るというのだからすごい。以前のような後輪優勢トルク配分を持つフルタイム4WDとは異なるのだが、そんな感触はまるでない。積極的に踏んでいくと、以前のクワトロと同じく僅かにリヤから蹴り出すような感触を味わわせてくれるのは見事なものだ(オフロードモードでは本当に常時4WDとなるが)。

精緻な作りと上質な素材の組み合わせ、高級感を感じられるインパネまわり。バーチャルコックピットはオプションだ。
電動調整機能が備わるフロントシートは、シンプルな造形だが座り心地は良い。
アウディドライブセレクトはOffroadを含む全6種類のモードが用意されている。
今回の3台の中では唯一、エンジンを縦置き搭載するが、平常時は前輪のみを駆動するFFベースのAWDを採用。エンジンは2ℓの直4ターボだ。
オールロードの最低地上高は170㎜で、かなりの荒れ地でも気兼ねなく入っていける。

アウディ A4オールロードクワトロ
■ボディスペック
全長(㎜):4750
全幅(㎜):1840
全高(㎜):1490
ホイールベース(㎜):2820
車両重量(㎏):1680
■パワートレイン
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量(㏄):1984
最高出力:185kW(252㎰)/5000〜6000rpm
最大トルク:370Nm(37.7㎏m)/1600~4500rpm
■トランスミッション
タイプ:7速DCT
■シャシー
駆動方式:AWD
サスペンション フロント:ウイッシュボーン
サスペンション リヤ:ウイッシュボーン
■ブレーキ
フロント:ベンチレーテッドディスク
リヤ:ディスク
■タイヤ&ホイール
フロント&リヤ:225/55R17
■性能
JC08モード燃費(㎞/ℓ):14.6
■車両本体価格(万円):658万円

コスパの高いパサート・オールトラック

Volkswagen Passat Alltrack

 パサート・オールトラックは今回で唯一、電子制御の連続可変ダンパー(DCC)を備える。こうしたリフトアップシャシーでこそDCC効果も如実で、特に硬いダイナミックモードでの身のこなしはお見事。路面からのアタリをそれなり上質にいなしつつ、オツリめいた余分な上下動をほぼ完ぺきに抑制して、ふらつかない。これに較べると、コンフォートやノーマルモードは余分な動きが出るが、その分、アタリは確信犯的にふわりと柔らかく、ハンドリングもおっとりとする。パサートのオールトラックはこのDCCに加えて、エンジンもコスト高のディーゼルなのに、本体価格はほかの2台より100万円以上も安いのだ! VWのコスパの高さにはあらためて感心する。

VWらしく華美さは希薄だが、エアコンルーバーとつながる横一直線のモールやアナログ時計などが高級感を演出。
走行モードは6パターンあり、ダンパーの減衰力やパワステの特性を可変する。オフロードモードも用意。
「アドバンス」はナパレザーシートやパワーランバーサポートが標準装備。サイドサポートの大きな形状でホールド性も非常に高い。
パサートオールトラックに搭載されるのはディーゼルエンジンのみ。190㎰/400Nmの出力とJC08モードで17.3㎞/ℓの好燃費を両立する。
最低地上高は通常より30㎜アップの160㎜を確保。ヘッドライトはLEDが標準装備だ。

フォルクスワーゲン・パサート オールトラックTDI 4モーション・アドバンス
■ボディスペック
全長(㎜):4780
全幅(㎜):1855
全高(㎜):1535
ホイールベース(㎜):2790
車両重量(㎏):1680
■パワートレイン
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量(㏄):1968
最高出力:140kW(190㎰)/3500〜4000rpm
最大トルク:400Nm(40.8㎏m)/1900~3300rpm
■トランスミッション
タイプ:6速DCT
■シャシー
駆動方式:AWD
サスペンション フロント:マクファーソンストラット
サスペンション リヤ:4リンク
■ブレーキ
フロント:ベンチレーテッドディスク
リヤ:ディスク
■タイヤ&ホイール
フロント&リヤ:245/45R18
■性能
JC08モード燃費(㎞/ℓ):17.3
■車両本体価格(万円):577万9000円

背の高いSUVよりも万能性は上回る これほど「ちょうどいい」クルマはほかにない。

 もちろん、内外装の仕立てを見れば、ボルボやアウディがコストをかけてワンランク上級をねらっているのは事実である。また、パサートが使う骨格モジュール「MQB」は意地悪くいうとコンパクトカーのポロまで含めた共通血統であり、V60CCの「SPA=スケーラブルプロダクトアーキテクチャー」やA4の「MLBエボ」より格下……ということも可能である。実際、パサートはアウディと同じ重量なのに、その乗り味はよくいえば軽快、悪くいえば重厚感に欠ける。また、ディーゼルであることを差し引いても、走行中のパサートの室内はアウディやボルボより議論の余地なく騒がしい(笑)。ただ、しつこいようだが、パサートは安い。この価格でこのクオリティと充実装備は破壊力バツグンである。

 それでも、V60CCはさすが飛ぶ鳥を落とす勢い(?)のボルボにして、現時点は最後発だけに、商品力はわずかながら明確にリードしている感はある。ハードウェア自体のクオリティはボルボとアウディでそれぞれに長短あるものの、ボルボの明るいデザインや調度品の素材選びはいかにも今っぽく新鮮。また、本体価格だけならV60CCとA4オールロードクワトロでほぼ同等なのだが、安全装備や液晶メーター、ハイテクLEDライト類などの先進装備を横ならびにすると、実質的にはボルボのほうが明確に安くなる。このあたりの価格設定もじつに憎らしい。

 そんなボルボにあえてツッコミを入れるとすれば、ほか2台より約150㎏も重いウエイトだが、少なくとも乗り味ではデメリットにはなっていない。乗り心地についてはその重さを逆にうまく活かしている感があり、体感的な動力性能にスペック表から想像するほどの差もない。

 ……と書いていたところに、今回のオールロードクワトロを含むアウディA4シリーズのマイナーチェンジのニュースが飛び込んできた。それはどうやら、かなり大規模な内容となるらしく、今の勢力図がまた描き変えられるかもしれない。

 それはともかく、こうして当世Dのクロスオーバーワゴンにまとめて乗ると、これほど「ちょうどいい」クルマもほかにない……と、実感した。それぞれベース車と厳密に比較すれば機動性や安定性で一歩ゆずるのは事実だが、あくまで単独で乗るかぎり、その乗り味にステーションワゴンに劣るところはほとんどない。これは90年代の登場当初からのクロスオーバーワゴンの売りではあったが、シャシー技術が進化した今、それはいよいよ真の美点となりつつある。それでいて、今回のような不整地にも気がねなくガシガシと乗り入れられる気安さは、一度使うと手放せなくなる。SUVの魅力は背高ボディのほうがなるほど分かりやすいが、本当に万能なのは、この種のクロスオーバーワゴンのほうだろう。生き残るのは当然だ。

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