開発ストーリーダイジェスト:マツダ・サバンナRX-7「スポーツカーとは何か?」の基本に立ち返った開発
- 2020/05/27
- ニューモデル速報
これまで数多くのクルマが世に送り出されてきたが、その1台1台に様々な苦労や葛藤があったはず。今回は「ニューモデル速報 第37弾 新型サバンナRX-7のすべて」から、開発時の苦労を振り返ってみよう。
REPORT:ニューモデル速報編集部
昭和53年に送り出したRX-7は、思い切ったスタイリングとロータリーエンジンを採用したピュアスポーツとして日本はもちろん、アメリカでも人気を集めて、マツダの名を高めた。その一方で、次期モデルの原案づくりが進められていた。実研企画の主管研究員を務めていた立花啓毅を中心に、設計と実験、さらに販売企画のスタッフ(約20名)からなる勉強会が結成され、様々なスポーツカーに実際に乗って議論が交わされた。
「スポーツカーとは何か?」という基本に立ち返って計画の原案が固められていく中で、スポーツカーには単に直進安定性があるのではなく心地良い緊張感が存在することが重要だという意思統一が図られた。例えば、ベンツ500のような安定感の中では、実際の速度や加速感が大きくてもスポーツカーを操る喜びは得難い。実際のスピードが遅くても、それをコントロールする際に興奮する領域があり、それこそがスポーツカーの魅力であるという。
これまでのRX-7では、リヤサスには4リンク方式を基本にレースでの体験を生かしたワッツリンクを取り付けて横剛性を高めていたが、新世代のスポーツカーにとってリジッドアクスルは不満と判断。独立懸架が有効であるとして、セミトレーリングタイプの採用が決まったという。
そうして、昭和58年5月にようやく実験用モデルが1台つくられた。それはヨーロッパへ持ち込まれ、モンテカルロ・ラリーのコースやアウトバーンを走り、操縦性と安定性、パワー感のチェックが行なわれた。
昭和59年には、新デザインを纏った本格的な試作車を用いた実験がスタートしたのだが、前後のトレッドが拡大していることやホイールが15インチへアップしていた。主要なアメリカ市場でも40%が女性ドライバーであることや量産時のコストアップを考慮して、「そこまでやらなくてもいいのでは」という声も上がったという。しかし、立花をはじめ開発陣の信念は固く、「マーケットリサーチの意見ばかりを採り入れて信念を失った商品は堕落したものになるのは明白。開発側の考えに感動した人が買ってくれることを願うしかない」と語ったという。
開発を進めていく中で、テーマごとにプロジェクトチームを推進したという。従来はエンジンやシャシーなど縦割りで行なっていた設計は、「レスポンス向上」「音づくり」と個別のプロジェクトに分けられ、そこにはエンジンやシャシーなど垣根を越えて構成され、目的に向かって知恵を絞っていった。
アメリカでの最低1ヶ月半もの期間行なわれた日照テストや標高2500〜2700mでの高地テスト、マイナス40℃の寒冷地テストなど、様々な実験が発売の3ヶ月前まで行なわれたという。それも、性能面で妥協が許されないスポーツカーであるだけでなく、マツダのイメージリーダーでもあるため、性能面でも品質面でも遺漏があることは許されなかったからだ。
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