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開発ストーリーダイジェスト:トヨタ・セルシオ「フラッグシップとなるべき車種は、普通の意味におけるクルマの開発思想では不十分」

  • 2020/07/05
  • ニューモデル速報
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これまで数多くのクルマが世に送り出されてきたが、その1台1台に様々な苦労や葛藤があったはず。今回は「ニューモデル速報 第76弾 セルシオのすべて」から、開発時の苦労を振り返ってみよう。

 初代セリカのボディ構造を皮切りに、ボディ関連の開発に尽力してきた鈴木一郎(チーフエンジニア)は、1986年2月に「マルF」と呼ばれるプロジェクトの責任者に就任することになった。それは、すでに法人需要が主な目的となっているセンチュリーとは別に、パーソナルユースに主眼を置いた新たなフラッグシップの開発だった。

 開発にあたって鈴木は「フラッグシップとなるべき車種は、普通の意味におけるクルマの開発思想では不十分だということで、技術開発の原点に立ち返り、基本となる方針を固めることから始めた」とし、その実現のための基本方針として“源流対策と最適化”を打ち出した。

 ここで挙げられた源流対策とは、根本的なところまで遡って原因を取り去ることである。例えば、室内の静粛性を高める場合、遮音材をたくさん使うのではなく、音や振動の発生源であるエンジンなどに対策を施す。

新開発のV8(260ps/36.0kgm)を搭載。軽量化を狙って、シリンダーブロックはアルミ製で、厚さ2mmの薄肉鋳鉄ライナーが圧入されている。
ホイールストローク感応電子制御のエアサスを装備。路面の細かな凹凸を四輪独立の車高センサーが感知して、3段階のショックアブソーバー減衰力と2段階のバネ定数を切り替える。

 また、最適化の例としては、エンジンの出力軸から後輪のデフに入るまでの動力伝達軸を完全な直線の上に配置する設計が挙げられた。通常は動力伝達軸が多少折れ曲がっていてもジョイントの働きによって回転は円滑に伝わるが、セルシオはそれを直線配置にして理想的なプロペラシャフトを狙った。しかし、そのためには組み上げたときのアンバランス量を可能な限りゼロに近づける必要があったが、従来の測定装置ではセルシオに要求した精度を測れず、装置そのものを新たにつくり直したという。

 “源流対策と最適化”という微に入り細を穿つ取り組みにあたって、鈴木はFQ委員会を設立。技術、生産技術、工場の担当役員をヘッドに、250km/hの最高速度やアメリカのガス税のクリア、圧倒的な静粛性という開発目標の達成を目指した。さらに、北海道の士別に250km/hで走れるほか、北米およびヨーロッパの道路を模擬したコース(セルシオのためにつくられたようなものと鈴木は言う)を舞台に開発は進んだ。

またデザインでは、アメリカにおける高級のイメージを掴むために、デザイナー達を現地(ラグナビーチ)に3ヶ月間住まわせた。それまで、西海岸にはモダンで明るいといったイメージを抱いていたが、実際には家具や室内装飾などはフランスのロココ調のようなものに憧れている。高い水準の機能がある一方で、合理性を表に出さないことで、日本的な良さを感じてもらえると考えた。そのため、アメリカと日本で6〜7年使われたクルマを回収して、様々なポイントを確認。特に室内の色調の変化が目立ったという。

中央にスイッチを集約したインパネ。パネルには最高級のウォールナットが用いられている。

 そこで、セルシオでは使い込むほどに味の出てくる天然素材を用いつつ、クロームメッキの皮膜を従来の8倍にしたり、リヤウインドウに熱線反射ガラスを採用して太陽光による劣化を抑えるといった工夫を凝らした。

後席のアームレストには多彩なスイッチが内蔵されている。自動車電話が収まるスペースも用意される。

 鈴木は「質の高さとは何か?を改めて問い直してみたとき、日本的な観点から答えると、それは求めた人の心を豊かにすることじゃないかと思う。機能性については徹底して高度なものを追求した」と振り返った。

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