フェラーリだからこそ叶う、ワンメイクレース参戦への道のり。 夢の「フェラーリ・チャレンジ」に参戦する方法。
- 2018/02/12
- GENROQ編集部
ワンメイクレースの頂点といっても過言でない「フェラーリ・チャレンジ」。そこには激しいバトルと華やかな世界が用意されている。では、これを味わうには如何なる手段をふめばよいのか? その実情をお伝えしよう。
REPORT◎大谷達也(Tatsuya OTANI)
サーキット初心者にも対応!?
美しい姿態のフェラーリが世界各地のサーキットで白熱のバトルを繰り広げるワンメイクレース『フェラーリ・チャレンジ』。通常、自動車メーカーは自社のスポーツイメージを高めるためにワンメイクレースを開催するが、フェラーリの場合はまったくこれにあてはまらないという。
「ご存じのとおりフェラーリのスポーツイメージは極めて強固なもので、これをことさら強調する必要はもはやありません」
フェラーリのカスタマーレーシング活動を統括するコルセ・クリエンテでアジア・パシフィック地域を担当するルイ・コマーシュが力説する。
「私たちがフェラーリ・チャレンジで目指しているのは、フェラーリを愛する多くの方々(その多くはフェラーリのロードカーを所有するオーナー)が抱く『フェラーリのレーシングドライバーになりたい』という夢をかなえることにあります」
ジル・ビルヌーブ、ミハエル・シューマッハー、そしてセバスチャン・ベッテル。フェラーリF1で数々の栄冠を勝ち取ってきた彼らと同じように“跳ね馬”がついたレーシングカーでサーキットを疾走し、観客から大声援を受けたい……。そんな夢を実現する場としてフェラーリ・チャレンジは存在するというコルマーケの説明は実に明快だ。そして彼らの話を聞けば聞くほどに、コルセ・クリエンテの活動はすべてこのシンプルかつ崇高な理念を中心としていることが理解できる。
では、今まで一度もサーキット走行を経験したことのないドライバーがフェラーリ・チャレンジに参戦するには、どうしたらいいのか? コマーシュに訊いた。
「コルセ・クリエンテではピロータ・フェラーリという名のドライビング・プログラムを用意しています。ピロータ・フェラーリにはいくつものコースがあり、まずはヘルメットやレース用シートベルトを装着した状態でのドライビングに始まり、スリックタイヤの扱い方、ダウンフォースの活用の仕方などを順に学んでいくことができます。これらのコースを受講すれば、フェラーリ・チャレンジ参戦に必要なスキルを習得することができます。その次に必要となるのは国際Cと呼ばれる競技ライセンスです。これは国際自動車連盟(FIA)が統括する国際イベントに出場する資格を得るためもので、いくつもの国を転戦するフェラーリ・チャレンジにエントリーするには欠かせません。国際Cライセンス取得の際にも、コルセ・クリエンテもしくは各国の正規ディーラーがお手伝いさせていただくケースがあります」
これでようやく準備が整った。あとはフェラーリ・チャレンジのレーシングカーを用意し、シリーズ参戦の申し込みをするだけ……、と口でいうのは簡単だが、いずれもそれ相応の費用を要することはいうまでもない。なお、正規ディーラーでの購入が基本となるマシンの価格は非公表。ちなみに、ベースとなる488GTBの新車価格は3000万円強なので、その2倍ほどを見込んでおけばいいのではないかというのが私の推測。もっとも、誰も正解を教えてくれないので、こればかりはなんとも判断のしようがない。
内容を考えれば極めてリーズナブル!
では、レース参戦に必要な経費はどのくらいか? この質問に対するコマーシュの回答は明快で、「年間でおよそ20万ユーロ(約2700万円)」だという。果たして、この設定は高いのか? 安いのか? それについて考える前に、コマーシュの説明に耳を傾けていただきたい。
「極端な話、ヘルメットとライセンスさえお持ちいただければ、あとは些細なことまですべて私たちがサポートします。車両や機材の運搬、マシンのテクニカル・サポート、さらにはホテルの予約からご家族やご友人のホスピタリティまで、すべてお任せください」
驚くべきことにフェラーリ・チャレンジのアジア・パシフィック・シリーズでは、フェラーリ直属のエンジニアやメカニックが全ドライバーのマシンをサポートするという。「エンジニアもメカニックも全員フェラーリのファクトリー所属です」とコルマーケ。「彼らはル・マン24時間やデイトナ24時間にも毎年参戦しているほど高い技術的スキルを有しています。つまり、フェラーリ・チャレンジに参戦する皆さんはファクトリー直系のテクニカル・サービスを受けられるのです」
信じられないような話がもうひとつ。実は、アジア・パシフィック・シリーズに参戦するドライバーは、全員コルセ・クリエンテというひとつのチームに所属する形になるのだ。これは同じフェラーリ・チャレンジでもヨーロッパ・シリーズや北米シリーズにはない、アジア・パシフィック・シリーズだけの特徴であるという。
「アジア・パシフィック・シリーズにエントリーする全ドライバーをひとつのチームにまとめているのは、コルセ・クリエンテの本拠地であるマラネロから開催地までが遠く、これによってオペレーションが複雑になるのを防ぐことが目的ですが、このおかげで参加者の皆さんにはたくさんのメリットが生まれます。まず、全ドライバーが公平で均質なテクニカル・サポートを受けられること。そのため、自分のチームが勝てるチームであるかどうかを心配する必要はなく、安心してレースに打ち込めます。言い換えれば、勝敗はドライバーの技量だけで決まるのです」
全ドライバーがひとつのチームに所属しているおかげで、ドライバー間の信頼関係が醸成しやすいともコマーシュは打ち明ける。
「コース上のバトルやアクシデントで関係がギクシャクすることも稀にありますが、ほとんどのドライバーは深い友情で結ばれ、レース後に行なわれるパーティは和やかな雰囲気に包まれます。また、フェラーリ・チャレンジに参加するドライバーは社会的な地位が高い方が多いため、レーシングドライバー同士の友情がビジネスパートナーに発展したり、ジョイントベンチャーのきっかけとなったりするケースも少なくありません。これも、ほかのレースシリーズではあまり見られない、フェラーリ・チャレンジ特有の現象といえるかもしれません」
さらに高まりつつある、フェラーリ・チャレンジ!
ちなみに2018年のアジア・パシフィックシリーズはメルボルン(オーストラリア)、ハンプトンダウンズ(ニュージーランド)、上海(中国)、富士(日本)、鈴鹿(日本)、シンガポール、最終戦モンザ(イタリア)の全7大会。このうち、F1グランプリのサポートイベントとして開催されるのはメルボルンとシンガポールの2戦のみだが、その理由をコルマーケは次のように説明する。
「F1グランプリと同時開催するのは、そのサーキットが極めてユニークで、しかもF1グランプリ開催時期でないとレースの実施が難しいケースに限られます。なぜなら、F1グランプリと同時開催にすればフェラーリ・チャレンジはどうしてもサポートイベントとなり、メインのパドックを使えなかったり走行時間を十分にとれなかったりするからです。ですから私たちは基本的にフェラーリ・チャレンジをメインイベントとする形でレースを開催します。そうすれば、すべての観客がフェラーリ・チャレンジ・ドライバーを応援することになります。たとえば、昨年の上海には4万5000人のファンがグランドスタンドに詰めかけました。そうした方々の声援を一身に受けられるのですから、その感動はひとしおです」
それにしても、どうしてフェラーリはアジア・パシフィック・シリーズの開催にこれほど注力するのだろうか? フェラーリの極東・中東エリアを統括するディーター・クネヒテルCEOに訊いた。
「フェラーリにとってアジア・パシフィック地域はとりわけ重要です。というのも、アジア・パシフィックではモータースポーツへの関心が年々高まっているからです。また、ロードカーの販売という面でも、この地域の重要性は増しています。なかでも日本におけるフェラーリの歴史は長く、アジア・パシフィックにおける最大のマーケットであると同時に、熱心なファンが極めて多いことで知られています。また、ヨーロッパや北米を除くエリアのなかで、日本の皆さんがモータースポーツへの造詣がとりわけ深く、充実した施設や長い歴史や文化を有していることも、私たちがアジア・パシフィックを重視する理由のひとつになっています。2018年もきっとエキサイティングなシリーズになるはずですから、どうか楽しみにしていてください」
ちなみに富士では6月28日〜7月1日、鈴鹿では8月23〜25日に開催されるので要チェックだ。
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