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Mercedes-Benz EQC海外試乗記 メルセデス・ベンツEQCにEVの王者たる実力はあるか? 実際に乗って確かめた

  • 2019/07/16
  • GENROQ編集部
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昨年9月にワールドプレミアしたメルセデス初の市販EV「EQC」。モーターを前後に2個搭載して4輪を駆動するAWDだ。0→100km/h加速5.1秒の実力を持つ俊足EVを味わった。

REPORT◉島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa) 
PHOTO◉Daimler AG

※本記事は『GENROQ』2019年7月号の記事を再編集・再構成したものです。

 昨年9月にストックホルムで発表されたメルセデス・ベンツEQCの国際試乗会は、こちらも北欧のオスロで行われた。

 ブラックパネル化され、トーチ状のイルミネーションをアクセントとしたフロントマスクや、ややクーペ寄りのエレガントなSUVフォルムがEQCの外観上の特徴だが、主張はさほど強いわけではない。ずらりと並ぶ姿を見て、まずはメルセデス・ベンツ車として違和感のない姿だと感じた。

 CクラスやGLCなどと共通のプラットフォームを用いた車体は、ホイールベース間のフロア下に専用の強固なフレームで守られた容量80kWhのリチウムイオンバッテリーを配し、前後アクスルにそれぞれ1基ずつの電気モーターを搭載する。前後合計で最高出力は408㎰、最大トルクは760Nm。航続距離はNEDCサイクルで445〜471㎞と謳われる。

 室内も、リサイクル素材を活用し、細かなディテールに差異こそあれ、基本的には見慣れたメルセデス・ベンツらしい空間である。ドライバーの眼前にはワイドスクリーンコクピット。充電管理、ルート設定などEV専用機能を盛り込んだMBUXも搭載されている。

車体前後に電気モーターを搭載するEQCは最高出力408㎰、最大トルク760Nmの実力を誇る。バッテリー容量は80kWhだ。

 早速走り出すと、やはり第一印象を占めるのはその静けさ、滑らかさである。発進は力強く、その後も気持ち良く速度が伸びていく。レスポンスも素早く、意のままの加速を引き出すことが可能だ。

 とは言え、アクセルオンとともに蹴飛ばされるようにトルクが湧き出て……という感じではない。カドはきれいに丸められ、主張は抑えつつもドライバビリティは上々。そんな走りが実現されている。

 走行モードはコンフォート/スポーツ/エコに加えてEQCではマックスレンジ モードも用意される。パワーが抑制されるだけでなく、走行状況から見て必要以上の加速をアクセルペダルを重くすることで諌めて、最良の電費を引き出すのだ。

 またステアリングホイール左右に付けられたパドルの操作で、回生ブレーキモードも変更できる。通常走行時の“D”レンジは緩い回生。左側パドルを引くと回生が強まる“Dマイナス”、さらにワンペダルドライブを可能にする“Dマイナスマイナス”に入れることができる。一方、右側パドルを1度引くと、回生せずコースティングを行う“Dプラス”モードが選択される。そして、右側パドルをさらに引くと“Dオート”モードに入る。

 地図データや標識、走行状況から判断して回生の強さやコースティング状況などを自動制御するこのモード、確かに前走車が居なければコースティングし、速度規制が出ると回生により速度を落として……という具合で、なかなか賢く働く。どこでも必ずしも意に沿った走りになるとは限らないが、少なくともオスロ近郊の流れの悪くない郊外路では有効と感じられた。

 乗り心地も上々だ。リヤだけエアスプリングを使ったサスペンションは非常にしなやかに動いて、とても快適。フットワークはこれもメルセデス・ベンツらしい穏やかな躾けだが、重心が低く、また前後重量配分比も悪くないのだろう。追い込んでも2.5tという車重を意識させない追従性の高さで、実に懐深く走ってくれる。

 このトータルで完成度の高いドライバビリティのおかげで、運転支援装備も非常にスムーズで、実に動きの精度が高い。加減速、操舵とも滑らかで、これだとディストロニックの使用頻度がとても多くなりそうだ。

日本導入時はCHAdeMOの急速充電器に対応する予定だ。ちなみに航続距離はNEDCサイクルで445~471㎞を実現しているという。

 見た目にしても走りにしても、EQCはEVだからといって気負って、特別な何かをしようという考えが、あまり無かったように見受けられる。むしろ感じられるのは、メルセデス・ベンツらしさをより強く、徹底的に突き詰めることにEVの特性を活用しようという意図。

 要するに非常に静かで、滑らかで、動きの質が高い、きわめて完成度の高いメルセデス・ベンツが、そこには出来上がっている。

 しかも、その先にはトルキーな加速や正確無比なドライバビリティ、軽快で奥深いフットワークもちゃんと備わる。旧来の“らしさ”と新しい歓びがシームレスに繋がっているのが、実に興味深い。

 まさに発表の際、ダイムラーのディーター・チェッツェCEOが「100%EV、100%メルセデス・ベンツ」と言っていた通りのクルマの登場である。充電環境など課題もあるが、少なくともそのパッケージング、その走りは日本でも十分受け入れられそうだと言っていいだろう。

GLCをベースとするメルセデスEQCは最新のメルセデス車でお馴染みのワイドスクリーンコクピットを採用する。モニターには充電状況や航続可能距離も表示できる。

床下にリチウムイオンバッテリーを搭載するため、前後席ともに快適なスペースを実現している。

SPECIFICATIONS メルセデス・ベンツEQC
■ボディサイズ:全長4761×全幅1884×全高1623㎜ ホイールベース:2873㎜
■車両重量:2495㎏
■モーター:ツインモーター 最高出力:300kW(408㎰) 最大トルク:760Nm(77.5㎏m)
■トランスミッション:1速固定
■駆動方式:AWD
■環境性能 航続距離(NEDC):445~471㎞ 電気消費率(NEDC):20.8~19.7kWh/100㎞
■パフォーマンス 最高速度:180㎞/h 0→100㎞/h加速:5.1秒

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