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【BMW・M850i xDrive Gran Coupé試乗記】最上級4ドアクーペ BMW 8シリーズ・グランクーペはファナティックなビーマーにオススメ

  • 2020/03/24
  • GENROQ編集部
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BMWの最上級クーペモデルとなる8シリーズ・グラン クーペが上陸した。優美で官能的なスタイルに、豪奢な室内空間はまさに最上級クーペに相応しい。ラインナップの頂点に君臨する4.4ℓV8搭載のM850iでロングツーリングに出てみた。

REPORT◉吉田 拓生(YOSHIDA Takuo)
PHOTO◉田村 弥(TAMURA Wataru)

※本記事は『GENROQ』2020年2月号の記事を再編集・再構成したものです。

 8シリーズのグランクーペ試乗と聞いて、現行のBMWのラインナップをおさらいしてみようと思ったのだが、それだけでページが埋まってしまうことがわかった! ディーラーのセールス氏はこの膨大なラインナップを、頭の中でどうやって整理しているのだろう? ともあれ今回はグランクーペの最高峰であるM850i xドライブである。

 真正面から見たグランクーペは8シリーズの2ドアクーペと見分けがつかない。クーペのルーフがダブルバブル形状になっているくらいしか識別箇所がないのでは? 一方、真横から見た8シリーズのグランクーペは粘土のカタマリを指で伸ばしたようにキャビンの形が伸びやかで、リヤエンドに向けてキュッとすぼまっている。8シリーズの2ドアクーペより全体のバランスがよくて、スタイリッシュだと思った。

 正直なところ、これまでのグランクーペにはあまり良い印象がなかった。最初に登場した6のグランクーペのスタイリングはそれなりだと思ったが、今回の8と比べるとリヤスタイルのスペシャリティ感が希薄だ。一方4シリーズのグランクーペは3シリーズの5ドアハッチ以上には見えず、最新の2シリーズ・グランクーペは写真で見る限り寸詰まっているように見え、どちらもラグジュアリー感に乏しいと感じた。

 グランクーペという名称が優雅な4ドアクーペのためにあるのだとすれば、それなりの全長がないと格好がつかないのではないだろうか。何しろ昨今は、衝突安全性のおかげで総じてウエストラインが高めになっているし。以上の観点から、今回の8はBMWのグランクーペ史上最高の1台だと思う。外観に関しては。

パーフォレーテッド加工やステッチを組み合わせた上質なレザーはまさにプレミアム。
3025㎜のホイールベースを採用したことで後席は広々としている。

広大なトランクスペースも魅力のひとつだ。

 では中身はどうか? まず後席に座ってみると、大き目のリヤドアから想像していたとおり空間に余裕がある。フルサイズの4ドアクーペ系の中で最もリヤシートがタイトなアストンのラピードを研究し、少し圧迫感を取り去ったパナメーラ、よりもさらに8のグランクーペは寛げる空間になっている。ヘッドレスト一体型の前席のような形状のシートもグランクーペの名に相応しい。

 とはいえ低められた全高のおかげで身長178㎝以上(たぶん)の人は頭がつかえてしまうはずだ。また乗り降りするときにルーフの端がまるでレースカーのロールケージのように立ちはだかって頭を掠める。エグゼクティブだったら腹を立てることもあるだろうが、一般的な家族、友達同士なら問題はあるまい。

 一方前席は8シリーズ・クーペのそれを踏襲しており、こちらもプレミアム感に満ちている。後ろを振り向かなければこのクルマはグランドツーリング・クーペなのである。

 8シリーズ・グランクーペのパワーユニットは3.0ℓ直6ターボのガソリンとディーゼル、そして今回試乗したM850i用の4.4ℓV8ターボという3種類が用意されている。V8の最高出力は530㎰だからこれ以上は望めないと思ってしまいがちだが、ちなみに未上陸のM8コンペティションは、同じシリンダーブロックから625㎰を引き出しているので、まだ余裕はあるようだ。

 車重は約2.1tもあるし、駆動はxドライブ(4WD)なので、いきなりスロットルを深く踏んでも、従順かつ猛烈に加速するだけだ。

10.25インチのコントロールディスプレイと12.3インチのデジタルメーターパネルを採用した最新のインフォテインメントシステムは使い勝手も良好だ。
530㎰/750Nmを発生する4.4ℓV8ツインターボエンジンを搭載する。

 M850iクーペを想像しながらワインディングにさしかかると、すぐにはっきりとした違いが感じられた。カーボン製のルーフ(オプション)を備えていたクーペに比べ全面ガラスのルーフによってロールの戻りがゆったりとしているし、ロングホイールベースのおかげもあって全体の動きも穏やか。スポーツカーの純度に関してはクーペより低いことになるが、スタビリティがとにかく高いので、安心して飛ばすことができる。例えばアマチュアがニュルで8のクーペとグランクーペを乗り比べたら、結果的に後者の方が速く走れるような気がする。

 スポーツカーの走りにおける安心感は、直進性の高さや、アンダーステア傾向と同義であることが多い。だが8のグランクーペは、安定方向に働く寸法や質量と電子制御技術が高いレベルでバランスしている。

 クーペではアクションが少し極端だった後輪操舵も、ホイールベースが205㎜伸ばされたグランクーペの場合はナチュラルに感じられた。アクティブスタビライザーの仕事量も、重心が高くロールが大きいグランクーペの方が増えているに違いない。4ドア化によるボディ後半部分の重量増によって後ろ寄りに移行した重量配分を、電子制御が補完することで、グランクーペはグランドツアラーとしての唯一無二のキャラクターを体得しているのである。

 総じて上々の仕上がりを見せてくれた8シリーズ・グランクーペだが、ではライバルと比べた場合にはどうなのか? メルセデスのCLSやAMG GTの4ドア、アストンマーティンのラピードS、ポルシェ・パナメーラ、アウディRS7等々、フルサイズの4ドアクーペ市場は活況を呈している。そんな彼らと比べた場合、BMWのアドバンテージはやはり走りにあると確信した。現在輸入車ではBMWの独擅場であるハンズオフのACCのように日進月歩でライバルが追いかけてくる分野とは違い、走りはブランドの精神に根ざしているので、これは侵されにくい本当の個性だ。

 東京から関西方面に向かう際、昼間の新東名ではなく敢えて深夜の中央道を使うような気骨のあるファナティックならば、ぜひともM850iグランクーペを選ぶべきだ。

〈SPECIFICATIONS〉BMW M850i xドライブ グラン クーペ
■ボディサイズ:全長5085×全幅1930×全高1405㎜ 
ホイールベース:3025㎜ 
トレッド:Ⓕ1625 Ⓡ1670㎜ 
■車両重量:2090㎏ 
■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 
総排気量:4394㏄ 
最高出力:390kW(530㎰)/5500rpm 
最大トルク:750Nm(76.5㎏m)/1800~4600rpm 
■トランスミッション:8速AT 
■駆動方式:AWD 
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク 
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク 
■タイヤサイズ:Ⓕ245/35R20 Ⓡ275/30R20 
■環境性能(WLTCモード) 燃料消費率:8.1㎞/ℓ 
■車両本体価格:1715万円

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