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開発ストーリーダイジェスト:日産レパード「セダンとスポーツカーとの間を埋める位置付け」

  • 2020/05/28
  • ニューモデル速報
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1986年 日産レパードUltima

これまで数多くのクルマが世に送り出されてきたが、その1台1台に様々な苦労や葛藤があったはず。今回は「ニューモデル速報 第42弾 新型レパードのすべて」から、開発時の苦労を振り返ってみよう。

REPORT:ニューモデル速報編集部

 レパードが登場した当初は、クルマに求められるのはスタイリングのほか、エンジンや足まわりの性能など、ハードウェアとしての完成度の高さと新奇性だった。しかし、当時としてはデザインやメカニズムに、従来の国産乗用車になかった新しい思想を盛り込んだ革新的な存在だったが、新型レパードを開発するにあたって、そのコンセプトがそのまま通用するとは言えなかったという。

 開発で主管を務めた山羽和夫は、「端正で普遍的なもの。アグレシブではなく、豊さとコクのある乗り心地をもち、セダンとスポーツカーとの間を埋める位置付けを考えていた。これまではスポーツ側に振っていたが、たまたまシリーズにあった4ドア車が作り手の予想に反して人気を集めていた。しかし、よりコンセプトを明確にするには、2ドアクーペだけに統一した方がいい」として、既存の価値観を延長せずに、『人間の感性』に訴える方向へと舵を向けた。

 新型の開発にあたっては、まずコンポーネンツの共用が議論された。これまではブルーバード910をベースに生産計画が立てられていたが、910がモデルチェンジでFRからFFに変更されることが決まったため、新型レパードでは足回りやアンダーボディを別の車種と共用せざるを得なかった。そこで、スカイラインやローレルあたりと共用化する方向に落ち着いた。ただし、主要パーツなどを共用する場合、外見的にそのことを意識させずに、同じものを異なる車種に使うのはなかなか難しく制約もあったという。

 エンジンは上級車用にはこれまで直列SOHCのL系列が搭載されていたが、新型レパードでは格調の高さや品格、乗り手の精神的な充足感を狙っており、静粛で落ち着いた気分で走るにはV型エンジンを搭載した方が良いというのが開発陣の統一した意見だった。というのも、V6エンジンは直6に比べて剛性が高く、端末部の振動が少ない。その反面、回転のアンバランスや構造の複雑さがネックとなるが、それらを技術的に解決すれば、コンパクトにまとまることや剛性の高さのメリットが生かせると考えたからだった。

 先代レパードでは、スタイルを優先した結果、トランクスペースに対する不満の声が多かった。そのため、新型開発の早い段階で検討された。さらに、運転席だけでなく助手席のシートも改善。しかし、当時は長時間の運転による疲労を軽減するための形状やホールド性など運転席に関わる研究はあったが、助手席に座る人がどのようなシートを求めているかの研究は少なかった。開発陣はそこに注目し、リクライニングを倒す動きと連動して座面が前方に移動するだけなく、先端を約35mmリフトアップさせ、上下二分割の背もたれは上部を手動で最大30°まで前傾できる「パートナー・コンフォートシート」を開発した。

 新型レパードは名目的な数字を捨てて、使い手に寄り添ったキメの細い心遣いで開発されたのだ。

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