陸上自衛隊:隊員の盾となって走る「軽装甲機動車」、意外な弱点もある?
- 2021/02/27
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貝方士英樹
軽装甲機動車とは装輪装甲車に分類される車両だ。自衛隊の軽装甲機動車は諸外国のそれと比べても遜色ない仕上がりだ。トヨタ・ランドクルーザー100系・200系と同じくらいのボリューム感の車体だが、もちろん、秘めたポテンシャルは非常に高いのだ。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)
軽装甲機動車は装輪装甲車に分類される車両だ。陸上自衛隊と航空自衛隊が使っている。陸自では主に普通科(歩兵)部隊などに装備して、戦略機動や戦場機動などに使われる。施された装甲で人員を守りながら危険地帯でも自在に行動するための装甲車、というものだ。
部隊内では英表記「Light Armoured Vehicle」の頭文字「LAV」をとり、「ラブ」と呼ばれたり、軽装甲と簡素に呼ばれたりする。製造は小松製作所。外観はかなりカッコイイと筆者は思う。諸外国軍の同様な軽装甲車両と見比べても遜色のない仕上がりだと感じる。
車体サイズは、全長4.4m、全幅2.04 m、全高1.85mだ。ランドクルーザーの100系や200系と同じようなボリュームだと思う。
しかし装甲車だから重い。空車重量で約4.5トンある。ヘビー級のランクルで装備重量は3トン弱といった重量だろうから、それ以上になる。一般乗用車と比べれば装甲車なのだから重いのは当然か。
一方、装甲車というククリのなかでは軽量級に属し、空自の輸送機で運ぶことも可能だ。輸送ヘリCH-47JAチヌークでも空輸でき、機外に吊り下げて運ぶこともできる。戦略機動性の部分がこれだ。
加えて空中投下もできる。たとえば輸送機が着陸できない場所へ送り込みたい場合、軽装甲機動車をパレットに載せ固定する。輸送機はパレットごと積み込み、それを空中投下する。パラシュートが開き、ゆっくりと目標地点へ降下、着地する。待ち受けた乗員はパレットを開梱して乗り込み、走り出す。しかし着地時に横転や転覆などしてしまった場合、その重さから人力のみでの立て直しは難しいようで、クレーン車などの重機を持ってきて作業する必要があるという。なかなか難しいものだと思う。
エンジンは4サイクル水冷ディーゼル。最高出力は160psで、最高速度は100km/hが可能だ。四輪駆動で、ハイ/ローの切り替えとデフロックを装備。登坂能力はtanθ60%。公式値のこの実力を発揮した場合、強烈な登坂能力を持つことになるが、そうした場面を見たことがないのでなんともわからない。が、山地の多い日本では必要な潜在性能だろう。
走行性や走破性では、極端な泥濘地や激しく荒れた未舗装路は苦手だという。一方、深い亀裂や凹凸のある舗装路や未舗装路、冠水路などの状態なら、大径タイヤも相まってなんなく走破するという。意外とおとなしい印象だが、走りの技を競うワケではないから、このくらいが現実的なオフロード性能というものなのだろう。
脚周りは前輪がダブルウィッシュボーン、後輪はセミトレーリングアーム。長いストロークで、柔らかめのばね。オフロード車の動きの良いサスペンションの印象がある。そして変速機は4速AT。乗車定員は4人と少ない。
固定化された武装はなく、そのかわり車上ハッチなどから5.56mm機関銃や軽対戦車誘導弾など普通科部隊が装備する各種火器を射撃することができる。軽装甲との名称どおり、車体はある程度の防弾性を持っているから、ドアを開き防弾板としても使える。微速走行でドアを開き、隊員が降車。隊員は歩きながらドアに身を隠して89式小銃を撃つ、といった使い方をする。普通科にとっては動く防弾板というような扱いだ。
いくつかのバリエーションがあり、発煙弾発射筒や荷台ラックの装備、強化された防弾ガラスを装着したものなどが存在する。2003年からのイラク派遣では「海外派遣仕様」といえる改造が施された車両もあった。上面ハッチの全周装甲板やワイヤーカッター、強化防弾ガラス、ラジエーターを強化して砂塵防護力の向上処置などだった。イラク派遣以降、ジブチやスーダンなどへの派遣でも軽装甲機動車は使われ、現地に合わせた現場改修なども行なわれたという。
また、航空自衛隊では基地警備隊が使っていて、空自基地の警備業務などで走っている。車体色は陸自の迷彩色ではなく、OD(オリーブドラブ、濃緑色)単色塗装になっている。
意外な弱点もある。防弾ガラスのフロントウインドウは左右二分割となり、中央の仕切りが運転席からは邪魔になるそうだ。その他のガラスも小型なものなので、いきおい視界は狭くなり、つまり運転しにくいという。
そして重いからか燃費も良くないそうだ。日常の移動や災害派遣時などでは燃料の残量を気にしながら運転(操縦)していることが多いという。
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