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内燃機関超基礎講座 | ガソリンエンジンの火花の作り方 点火装置の歴史と変遷

  • 2020/09/16
  • Motor Fan illustrated編集部
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(ILLUST:BOSCH)

狙ったタイミングで、混合気の持つエネルギーを余さず膨張行程に生かすために、確実に火を飛ばす。アイドリングからレッドゾーンまで、着火の確実性を担保するための仕組みはどうなっているのだろうか。

自動車の黎明期から、点火エネルギーは電気を用いてきた。点火プラグに流す高電圧は、自己誘導作用と相互誘導作用という、ふたつのコイルの特質を用いて作られている。

コイルに電流を流しコイルを磁化すると、周囲には磁界が発生する。電流を遮断すると当然コイルは消磁し始めるが、電気には慣性力のように現状を維持しようと働く作用(起電力)があり、瞬間的に高電圧が生じる。これを自己誘導作用と呼ぶ。回路内に流れていた電流値が大きいほど、遮断する時間が短いほど、高い電圧を発生させることができるのが特徴だ。

いっぽうの誘導相互作用とは、鉄心を同一としたふたつのコイルにおいて片方のコイルで回路を断続すると、もう片方のコイルにも起電力が生じるという現象。このとき、ふたつのコイルの巻数を異ならせると、発生電圧を増幅させることができる。点火コイルの場合には、直流12Vを印加する一次側コイルの巻数に対して、二次側コイルの巻数をおよそ100倍とし、数万Vを発生させている。容易に想像できるとおり、一次側へのエネルギーを高めれば、二次側の出力も大きい。一種のトランス(変圧器)とも言えるこの点火コイルを用いて点火プラグに着火させる仕組みは、現代においても基本は変わらない。点火装置の進化は、機械的な信頼性の追求、高回転運転時の着火遅れへの対応、高エネルギー生成のための工夫など、この自己/誘導相互作用をいかに効率的かつ確実に実現するかという繰り返しであった。

点火装置の進化の理由もほかの補機の流れと同様に、メカニカルからエレクトリカルへの流れである。機械仕掛けではどうしても一定の性能を維持するための定期的なメインテナンスが必要であり、ドライバーにも知識が要された。天候や温湿度によっても好不調がある。電子機器の進化と低廉化の恩恵を受け、いまや点火装置はどのように動作しているかを知らなくてもまったく問題がないほどに、長寿命高度化を果たしている。

ポイント式点火。コイルの自己誘導/相互誘導作用を起こすためのスイッチ回路であるカム&ポイントを備える、もっとも簡潔な点火装置。スイッチ回路と並列に備わるコンデンサーは、回路を切った際にポイント部に発生する火花の発生抑制と、通電時に瞬時にエネルギーを与え一次電流の立ち上がりを早める役割を果たす。
セミトランジスター点火。発生する火花のためにポイント部が焼損してしまうと、研磨やギャップ調整など、定期的なメインテナンスが必要であり、わずらわしい。そこで、カム&ポイントによるスイッチ回路はそのままに、断続の信号をトランジスターで受けて誘導作用をコントロールする仕組みとしたのが本方式の特徴である。
フルトランジスター点火。セミトランジスター点火でポイントの焼損トラブルからは解放されたが、依然としてカムという物理的接触部位は残ってしまい、摩耗トラブルが避けられない。そこで、断続信号の生成をコイル&ピックアップとして非接触としたのがフルトランジスター点火。機械作動部が完全になくなったのが大きなメリット。
CDI。高回転となりスイッチングの周波数が高まると「遮断する時間が短いほど高電圧」という自己誘導作用に反して発生電圧が低くなってしまう。そこで、ピックアップによるタイミング機構と昇圧装置+コンデンサーによる蓄電を、サイリスターによって一気に一次電圧として放出する仕組みとしたのが本方式。

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