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内燃機関超基礎講座 | 畑村博士に訊く点火と燃焼の基礎知識——ノッキングを知ればエンジンがわかる

  • 2021/01/21
  • Motor Fan illustrated編集部
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(PHOTO:BOSCH)

エンジンにとっての大敵、ノッキングとはどのように起こっているのか? そして、どのような対策が施されているのか? ノッキングを軸に見ていけば、点火と燃焼は理解しやすい。多くの人が知りたいであろう点火と燃焼の基礎知識をDr.畑村がノッキングをキーワードに伝授する。
TEXT:小泉建治(KOIZUMI Kenji)

燃焼と爆発、そしてノッキング

───まず、ノッキングとはどういう現象のことを指すのでしょうか?
畑村:点火した炎が伝わって燃え広がっていくことを「燃焼」、至る所でそれぞれ自己着火してしまうことを「爆発」とすれば、ノッキングは後者と言っていい。通常、ガソリンエンジンでは燃料蒸気と空気が混ざったところに点火し、それが燃え広がることで熱エネルギーを得ているわけじゃが、常に綺麗に燃えるわけではなく、どうしても偏りが生じてしまうんよ。ある部分は燃えたのに、まだ燃えん部分もあって、シリンダーの圧力と一緒にそこの圧力が上がる。で、圧力が上がると温度も上がるけえ、燃え残った混合気が自己着火してしまう。つまり、それが爆発というわけじゃ。シリンダー内の隅の方でその爆発が起こり、その圧力が反対側まで伝わって反射する。とても高く、キンキンという音がする。ノッキングとはそういうことじゃ。
───音の発生のほかに、どんな悪影響があるのでしょうか?
畑村:大きな圧力振動が加わって、シリンダー内側の壁面やピストンに大きなダメージを与えてしまう。通常、シリンダーの内側の壁面には数十ミクロンの空気の層があって、それが断熱層のような役割を果たしとる。しかしノッキングのような圧力振動が加わると、その層が壊され、直接シリンダーやピストンに熱が伝わってしまう。その結果、ピストンの温度が上がって焼き付いたり、ピストンリングが固着したりする。酷い場合はプレイグニッションを誘発してピストンに穴が開いたり溶けてしまったり......。コンロッドが曲がったりもする。
───そのプレイグニッションとは?
畑村:ノッキングによってピストンやプラグなどの温度が上がると、点火する前にそれに接した混合気が燃え始めてしまう。それがプレイグニッションで、点火時期を早めたことと同じことになる。ただでさえ圧縮することで温度が上がっているのに、その過程で火がついてしまうことでさらに熱うなってしまう。通常は上死点を過ぎて、ピストンが下がりながら火がついて圧力が上昇するのに、それが圧縮過程で起きてしまうんじゃけえたまらん。強烈なノッキング、いわゆるスーパーノックが起こってしまう。それでさらに温度が上がると、次はもっと早く火がついてしまう。
───まさに悪循環ですね。
畑村:そんな状態のことを暴走プレイグニッションとも言う。だんだん早うなって、そのうち壊れてしまう。

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