内燃機関超基礎講座 | 12V鉛バッテリーの長寿命化技術:頻繁な充放電制御への対処
- 2021/04/20
- Motor Fan illustrated編集部
「自動車用バッテリー」として、長年に渡って使い続けられてきた鉛バッテリー。もはや技術的には枯れ切った製品とのイメージがあるかもしれない。しかし、鉛バッテリーは時代ごとの要求に応えて、今も進化を続けているのだ。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)
鉛蓄電池は、基本的に満充電状態で使われ、しかも従来の自動車では、電力の「出入り」があまり多くなかった。オルタネーターは、通常運行状態で必要な電力量を発生できるだけの能力を持っている、だから始動時を除けば、基本的にバッテリーの電力には頼らなかった。バッテリーが蓄えている電力は、消費電力がオルタネーターの発電能力を超えた時だけ補助的に使うもので、バッテリー全体の容量でいうと、せいぜい2%程度の出入りがたまに起こる、というものだった。
回生やアイドリングストップが入ってきても、基本的にその使われ方は変わらない。頻度こそ多くなるが、出入りが5%程度に増えたか?という程度だという。ただし、燃費性能の向上を目指してクルマ側の仕組みが変わってきたことで、バッテリーにはより高い「充電受入性」が求められるようになった。
具体的には「充電制御車」の登場だ。かつてのクルマはオルタネーターが常にエンジン回転数に応じた発電を行なっていた。しかし、省燃費性能をより高めるため、電力消費が少ない状態ではオルタネーターを休止させ、エンジン負荷を減らす機構が採用されるようになってきた。なにしろ、オルタネーターの発電負荷は最大でエンジン出力の5%程度とも言われる。その分の負荷を減らし、また、充電はなるべく回生によって補うことで、燃費向上を図るものが充電制御車である。
エネルギー回生効率を高めるためには、減速状態(えてして短時間である)で発電した電力のうち、どれだけをバッテリーに蓄えられるかが問題となる。そこで発電した電気をなるべく短時間の間に効率よく蓄えられる、充電受入性の高いデザインが要求されるようになってきたわけだ。言葉を換えれば、「燃費向上に貢献できるバッテリー」である。
さらにアイドリングストップが加わると、電力の出入り頻度はますます高まる。始動性(大電流を一気に放出できる性能)を高めるだけでなく、電力の出入りを繰り返しても寿命への影響が少ない「充放電耐久性」の高度化が求められる、という流れである。
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