電動パワートレーンの高効率化を包括的に支える 【不二越】カーハイドロリクス&軸受:油圧制御で培われた技術で新たなデバイスを創出 PR
- 2021/06/15
- Motor Fan illustrated編集部
ベアリングから油圧制御用コンポーネンツ、機械加工用の切削工具などの幅広い分野を、素材開発から手がける不二越。 パワートレーンを中心に電動化が進むなか、従来から持つ技術を堅実に磨きながら、独自のアプローチで効率向上に挑む。
TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI) PHOTO:山上博也(Hiroya YAMAGAMI)/NACHI FIGURE:NACHI
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社会全体のCO2削減目標が引き上げられるなか、自動車におけるエネルギー効率を取り巻く状況はよりいっそうシビアなものとなりつつある。もはや内燃エンジンは電動化の助けなしには成立が難しいところまできている。いっぽうで、直接的にはCO2を排出しないとされるEVが期待を集めているが、そのEVにしてもバッテリーが蓄えることのできるエネルギーの密度が低い(ガソリン比1/40程度)という問題がいまだ残る。
決して安価とはいえないバッテリーをフロア下の全面に敷き詰め、ようやく内燃エンジン車なみの航続距離が確保できる現状において、これを少しでも改善すべく、現在のEV開発はエネルギー効率の向上に力が注がれている。熱効率が50%に届かない内燃エンジンに対し、EVに用いられる電気モーターのエネルギー効率は90%を優に超えるとあって、改善の余地はほとんど残されていないようにも見えるが、その先には減速機構やデファレンシャルギヤからなるトランスミッションが繋がっている。内燃エンジン用と比べればシンプルではあるが、ギヤなどといった個々の構成要素は共通であり、損失の発生メカニズムも同じだ。
上にイラストで紹介しているのは、ギヤボックスの潤滑に用いられるメカニカルオイルポンプ(MOP)を電動化、さらにモーター冷却用(ローターを支持するベアリングへのオイル供給にも用いられる場合もある)の電動オイルポンプ(EOP)と統合するという提案だ。車両駆動用モーターの出力軸と連れ回るかたちをとるメカニカルオイルポンプの機械的な損失を排除し、運転状態に応じたオンデマンド運転を行なうことで、エネルギー損失を必要最小限に抑制する。
注目すべきはひとつのローターに3つのポンプ要素を持たせるという構造。ベーンの動きを司る外周部のカムリングには3箇所に“山”(実際のには凹みであり谷だが)が刻まれている。ひとつのカムリングにふたつの“山”が設けられる例は他でも見られるが、3つというのは不二越でも初めてとのこと。不二越では産業機械用として古くから手掛けるベーンポンプで培われたノウハウが生きており、ポート開口部付近などで急激な圧力変化が起きないよう、流路の形状に工夫を凝らすことで、ポンプの効率に悪影響を及ぼすキャビテーションを最小限に抑制。当然ながらモーターはひとつだから、ここでも高い効率が期待できるはずだ。
サイズは73mm×82mm×108mmとコンパクトながら、制御基板も内蔵する機電一体構造。カムリングに刻まれるそれぞれの“山”の形状は個別に作り分けることが可能で、モーター冷却用、減速機の軸受、そしてギヤの潤滑用途と、供給先に応じて吐出特性を決めることができるという。減速機構のみのシンプルなギヤボックスでは、オイルポンプを持たない例も見られるが、今後進むとされるモーターの高回転化では潤滑の必要が高まるうえ、オイルの攪拌抵抗を抑制する意味でもオイルポンプは必須となるだろう。近年EVでも増えつつある変速機構を備えたものであればなおさらである。
電動化は車両駆動だけでなく、これまでドライバーが行なっていた操作領域にも広がっている。そのひとつがPレンジで作動するパーキングロック。かつてはセレクターレバーに連結されたワイヤーやリンク機構などが用いられていたが、現在では電動化が進んでいる。
パーキングロックはEV用のトランスミッションにも組み込まれるのだが、同機構は停車状態で用いられることから、ソレノイド式の直動アクチュエーター単体では成立が難しく(状態の維持に電力消費がともなうため)、複雑でスペースを必要とするものが多かった。こうした状況を大きく変えるのが、不二越の非通電ロック型アクチュエーターだ。
内蔵するネオジム系磁石の吸引力により、電力消費をともなわずにロック状態を維持するというものなのだが、興味深いのはロック解除時。磁気飽和という現象を利用して磁路を切り替える技術により、磁石の吸引力をキャンセルするのだ。パーキングロック機構がシンプルにまとまれば、トランスミッションはより軽くコンパクトになる。当然ながらEVの効率向上にも生かせる可能性がある。
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