実用燃費にも音対策にも効果的なエンジンのカプセル化技術 マツダ・SKYACTIV-X(スカイアクティブX)エンジンは、カプセル・エンジンだった!
- 2017/10/10
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Motor Fan illustrated編集部 鈴木慎一
美祢テストコースで見たスカイアクティブXのプロトタイプカーのエンジンは、カプセル化されていた。エンジンのカプセル化は、これまでも研究されてきたテーマだが、マツダはスカイアクティブX搭載車で、それを採用するようだ。さて、「カプセル化」にはどんな意味があるのだろうか?
SKYACTIV-X(スカイアクティブX)を搭載したプロトタイプカーのボンネットの下は、黒いカバーで覆われていた。このカバー、最初は、「試作車で機密事項が多いから、中を見せたくないのだ」と思っていた。が、それは間違いだった。
このカバーの意味は、「エンジンのカプセル化」にあった。
エンジンで最も効率が低いのは、コールドスタート。つまりエンジンが冷え切った状態で始動し、エンジンが適温に暖まるまでの暖機の時間である。燃料は、実際の走行ではなくエンジン本機、補機、触媒装置、トランスミッションなどを暖めるために使われるため、燃費悪化につながる。
マツダのSKYACTIV-X(スカイアクティブX)は、エンジンのカプセル化によって、完全な「コールドスタート」を出来るだけ減らして燃費を稼ごうという考えだ。
現在のJC08モード燃費の計測は、コールドスタート(25%)、ホットスタート(十分に暖機が済んでから計測を開始するのが75%)の割合で測定されたものだ。新しく導入されるWLTCでは、暖機せずに100%コールドスタートで測定試験が行われることになる。
つまり、エンジンをカプセル化して燃費を上げるのは、モード燃費のためではなく、あくまでも「実用燃費を少しでも上げたい」というマツダの考え方によるものなのだ。
むろん、音対策にも非常に有効だ。圧縮着火、とくにHCCIの実現で大きなハードルとなるのは、音だった。カプセル化することで、音の問題は大きく改善することができる。実際、プロトタイプの静粛性は非常に高かった。1クラス上と言っていいほど、車内は静かだった。
プロトタイプのエンジンカバーは、手作り感溢れるものだった。エンジンをすっぽり覆うのが「エンジン・カプセル」のキモなのだが、上下でいえば、上の方が重要度が高そうだ。上部をしっかり断熱することで、いわば、エンジンを切ったあと、「保温」をするわけだ。
実際、カプセル化したエンジンを切って一晩放置しておいても、翌朝気温+10℃ほど、「温かい」ままにキープできるという。夕方クルマで帰宅して、翌朝再び出かける、というようなシチュエーションだ。
もっと実用燃費に効果がありそうなのは、たとえば、郊外のショッピングモールまで買い物にクルマに乗っていき、そこで数時間過ごして、またクルマに乗って帰る、というようなシチュエーションだ。カプセル化したエンジンなら、ほとんどエンジンは冷めずに、再始動の際はエンジンは温かいのでコールドスタートにはならない。これは実用燃費に効く。
じつは、「エンジンのカプセル化」は、以前から多くのメーカーが取り組んで来たテーマだ。
たとえば、BMWは2009年に同様の取り組みを発表している。
その際「カプセル化のおかげで、80℃の温度で作動するエンジンが、エンジンを切って12時間後でも40℃を維持する」としていた。
さらに、ユーザーのうち、「16時間以上連続でクルマを駐車し続けるケースは、12%に過ぎない」としている。
つまり、カプセル化の恩恵は多くのユーザーに及ぶ、ということだ。
カプセル化の恩恵は、温度によるが、1℃ごとに燃料消費量を最大0.2%削減できると当時BMWは発表してた。
もちろん、カプセル化したせいでオーバーヒートを招いては元も子もない。そのあたりの対策は十分だろう、
「カプセル化してオーバーヒートなんて起こしたら、こりゃ物笑いのタネですわ」(マツダ・人見氏)と笑っていたから、問題ない。
試作車然とした素っ気ないカバーも、市販化に向けて、マツダが誇るデザイン部がデザインをしているのだろう。当然、見栄えもぐっと良くなるはずだ。
この「エンジン・カプセル技術」は、スカイアクティブXにだけに効くわけではない。基本的にどのエンジンでも効果があるはずだ。あとは、カプセル化のコストが燃費改善に見合うとユーザーに思ってもらえるかどうか、だろう。
人見氏は、「スカイアクティブXだけではなくて、できれば、ほかのエンジンでもやりたい」と話していた。
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