内燃機関超基礎講座 | 電動ウォーターポンプの効果、開発の難しさ
- 2020/08/18
- Motor Fan illustrated編集部
冷やしたいときに冷やしたい量を送る。電動ウォーターポンプならではの芸当である。小型軽量で高耐久な製品を作るための勘所を訊いた。
プリウスのエンジンは高効率追求から、3代目から電動ウォーターポンプを採用した。これにより補機類がすべて電動となり、ベルトで駆動する補機がなくなった。
機械式ウォーターポンプ(WP)の流量は、エンジン回転数に依存する。そこでまず冷却系として最悪の条件である低回転で高負荷時(登坂などの場合)のポンプの流量を決めるが、すると、高回転で負荷が低い時は不必要な流量が冷却経路を流れてしまう。これに対して電動WPの場合は、流量の設定はエンジンの作動状態と関係なく自由にできる。電動化でポンプのダウンサイジングができるわけだ。
「最初はよくわからないので、機械式と同等くらいから話を始めました。すると500Wクラスのポンプが必要になります。当然12Vバッテリーからは電源がとれなくなってしまう。じゃあハイブリッド・バッテリーからとるか、となるとそれは“あるべき姿”と違うだろう、ということになりました」と開発を担当したアイシン精機のエンジニアは難しさを語る。最終的には最大流量80ℓ/分、12V電源で入力160Wのポンプに落ち着いたが、開発途上では、回路・モーター・ポンプの各セクション間の協業が欠かせなかった。
モーターも軽量化・低コスト化のための新機軸が満載だ。ポンプのインペラーとモーターマグネットを一体化しているが、過酷な冷却水環境下でも軸受けの耐摩耗性・防錆性を確保するために、シャフトとスラストワッシャーにDLCコーティングを施した。「過酷な冷却水環境」と書いたが、世界中で販売されるプリウスだけに、開発陣は世界中の水を集めてテストした。冷却水も地域によって塩素濃度が違うなど様々だという。
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