3列シートを備えミニバンの実用性とクロスオーバーSUVの走破性・スタイルを両立 マツダCX-8、ミニバンに代わる国内最上級SUVとして正式デビュー。
- 2017/09/14
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遠藤正賢
3列シートを備え6~7人乗りを可能にして、従来のミニバンに代わる存在として生み出された、マツダの新たなるミドルラージクロスオーバーSUV「CX-8」が、ついに正式発表された。(写真:宮門秀行、マツダ)
CX-8は全長×全幅×全高=4,900×1,840×1,730mm、ホイールベース2,930mmのボディに、国内向け新世代商品としては初めて3列6or7人乗りシートを備える、国内市場向けSUVの最上位モデル。
時を経てもユーザーの感性を刺激し続ける先進性を目指す「TIMELESS EDGY(タイムレス エッジー)」をコンセプトにデザインされたというエクステリアは、新型CX-5のモダンテイストを踏襲しつつ、より一層伸びやかなプロポーションとなっている。
だがCX-8はCX-5をストレッチしたものではなく、北米で販売されている3列シートのラージサイズクロスオーバーSUV「CX-9」と同じ、2,930mmのホイールベースを持つ。これを日本の道路・駐車環境に配慮し、全長を5,065mmから4,900mm、全幅を1,969mmから1,840mm、全高を1,753mmから1,730mmに小型化したのがCX-8だ。
なお、全長×全幅×全高=4,545×1,840×1,690mm、ホイールベース2,700mmのCX-5と比較すると、全高は355mm、全高は40mm、ホイールベースは230mm大きいが、全幅は全く同じ1,840mmに抑えられている。
こうした生い立ちからCX-8は、マツダのクルマづくりの基盤である「人間中心の設計思想」のもと、3列全ての乗員が上質さと心地良さを感じられるよう、パッケージングが構築された。
具体的には、1列目は「誰もがマツダ車共通の価値である理想的なドライビングポジションを取れる」こと。2列目は「ワイドな横幅とロングスライドシートを持ったシートにより、大柄な大人がゆとりを持ってくつろげる空間とする」こと。3列目は「身長170cmの乗員でも無理なく、快適に過ごせる空間とする」ことが開発目標とされている。
このうち、10mmピッチで調整できる前後120mmのスライド機構とリクライニング、3列目へのウォークイン機構を持つ2列目シートは3タイプを用意。最上級グレード「XD Lパッケージ」には、アームレスト付き大型コンソールボックスをシート間に備える専用のキャプテン(左右独立式)シートを標準装備した。
ベーシックグレード「XD」および中間グレード「XDプロアクティブ」では、角度調整機構付きアームレストを装着してセンターウォークスルーを可能にしたキャプテンシートと、倒せば最も広くフラットな荷室を確保でき7人乗りにも対応可能なベンチシートから選べるようになっている。
ラゲッジルームは、3列とも使用している時でもゴルフバッグ2個を積載できる239L、3列目を倒した際は67型スーツケース3個を積載できる572Lを確保。2列目も倒せば自転車2台を収納することができる。
運転席まわりにはインパネとドアトリムが連続した、開放感のある水平基調のデザインを与える一方、サテンクロームメッキとクロームメッキを多用し、ルーフ部もブラックとすることで質感をアップ。「XD Lパッケージ」のデコレーションパネルにはマツダの日本市場向け新世代商品としては初めて本杢(ほんもく)を採用。「XDプロアクティブ」にはシルバーへアライン、「XD」にはガンメタリックの加飾を用い、モダンなテイストを強めている。
パワートレインは2.2L直4直噴ディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D 2.2」と6速AT「スカイアクティブ-ドライブ」のみ設定されるが、CX-5に対し約200kg増加し、「XD Lパッケージ」4WD車で1,900kgに達した車重に対応するため、エンジンには大幅に改良の手が加えられた。
その一つが、少量の燃料を多段かつ高圧で微細分霧化して噴射する「急速多段燃焼」という新たな燃焼コンセプト。最大6回の近接噴射によって上死点付近で連続した燃焼を発生させて燃焼期間を短縮しつつ、緻密な噴射量コントロールで燃焼初期の熱発生の傾きを抑制してノック音を低減。さらに、燃料を高圧で微細分霧化させることで予混合を促進し、燃焼期間短縮とノック音低減による弊害を抑えている。
さらに、形状が変更された段付きエッグシェイプピストン、圧力センサーを内蔵し応答性を高めた10個の噴射口を持つピエゾインジェクター、冷却水制御バルブ、大小2個のうち大きい方のタービンを可変ジオメトリー化したターボチャージャーを採用。CX-5用に対し最高出力を15psアップの190ps、最大トルクを3.1kgmアップの45.9kgmにまで高めつつ、JC08モード燃費17.6km/L(4WD車は17.0km/L)を確保した。
なお、CX-8は新排ガス・燃費基準のWLTCモードでも認可を取得しており、FF車/4WD車の燃費はそれぞれ下記の通りとなっている。
複合モード 15.8km/L/15.4km/L
市街地モード 12.7km/L/12.5km/L
郊外モード 15.7km/L/15.3km/L
高速道路モード 18.0km/L/17.5km/L
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フロントがストラット式、リヤがマルチリンク式のサスペンションは、CX-9の基本構造を流用しつつ、スプリング・ダンパーをCX-8専用にチューニング。旋回時に内側前輪が浮き上がる挙動を抑えるリバウンドスプリングをフロントダンパーに採用して、穏やかな挙動と滑らかな乗り心地、高い接地性と直進安定性を両立させた。
CX-8のスカイアクティブ-ボディは、Aピラーに1,180MPa級超高張力鋼板を採用するとともに、その付け根にガセットを追加し高剛性発泡充填剤を入れることで強度・剛性をアップ。さらに、Cピラー下部を二叉構造として、リヤサスペンションアッパーマウントからCピラーへの連続性を高めることで、ボディ剛性と静粛性を高めつつ衝突時における3列目空間の変形を抑えている。
3列シートを備えるCX-8では、1列目から3列目まで普段通りの声量で会話できるよう、入念にNVH対策が施されている。フロントストラットにダイナミックダンパーを設けてサスペンションの共振を抑え、リヤフェンダーパネルに制振材を貼付することでロードノイズを低減。風切り音対策としては、リフトゲートにパーティングシールを採用するとともに、ルーフモール後端とルーフスポイラーの段差を縮小した。さらに、吸音効果の高いトップシーリングを採用し、Dピラー付近に吸音材を与えることで、遮音性を高めている。
CX-8は750kg以下のトレーラーを牽引できるが、その際の安定性を高めるため「トレーラー・スタビリティ・アシスト(TSA)」を全車標準装備。牽引走行中にトレーラーの横揺れを検知した際、状況に応じてブレーキとエンジンを制御して、トレーラーの横揺れを収束させる。
マツダの国内最上級SUVらしく、安全技術も数多く用意されている。「i-アクティブセンス」として、前進時だけではなく後退時にも対応する衝突被害軽減ブレーキおよびAT誤発進抑制制御、ブラインドスポットモニター、車線逸脱警報を全車標準装備。アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、アダプティブLEDヘッドライトを「XDプロアクティブ」および「XD Lパッケージ」に標準装備し、360°ビューモニターを両グレードにオプション設定している。
また、2018年に変更が予定されている安全評価基準を見据え、歩行者との衝突時にボンネット後端を約100mm持ち上げる「アクティブボンネット」を全車標準装備した。
グレードは前述の通り「XD」「XDプロアクティブ」「XD Lパッケージ」の3種類で、価格はそれぞれ3,196,800円/3,429,000円、3,537,000円/3,769,200円、3,958,200円/4,190,400円(FF車/4WD車)。
「ミニバンの実用性を兼ね備えたミドルラージクロスオーバーSUV」という、ありそうでなかった新たなカテゴリーを、マツダはこのCX-8で切り拓くことができるだろうか。
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