北部九州自動車産業の地・ 福岡県苅田町のドライバーズカフェフォレストが学生の活動に参加する理由とは? 学生フォーミュラ初挑戦の西日本工業大学をチューニングショップが強力サポート!?
- 2017/09/14
- HYPER REV編集部
9月5~9日の5日間、静岡県掛川市・袋井市にある小笠山総合運動公園(通称エコパ)において、大学生・専門学校生による自作フォーミュラカーの競技会「全日本学生フォーミュラ大会」が開催されました。この大会に初参加となった西日本工業大学の監督に、福岡・苅田町のチューニングショップ『ドライバーズカフェフォレスト』社長の小笠さんの名前がありました。その小笠さんに、今回参加した理由などをお聞きしました。
大学生・専門学校生による自作フォーミュラカーの競技会「全日本学生フォーミュラ大会」。15回目となるこの大会には、将来の自動車産業を担う若者が日本のみならず世界各国から集まり、フォーミュラカーの企画・制作・設計・デザインや走行レベルそしてコスト計算までを競いました。
そんな学生チームのなかの一つに初出場の西日本工業大学(福岡・北九州市)がありました。
このチャレンジにあたり、監督として参加していたのが福岡県苅田町でチューニングショップ「ドライバーズカフェ・フォレスト」の社長・小笠正範さんです。
なぜ小笠さんが? とても気になったので、その経緯や、現場で体験されたことについてお話を伺いました。
――学生フォーミュラの監督に街のチューニングショップの社長が就任されたというのはとてもユニークな響きです。どういった経緯だったのでしょうか?
「2年前に西日本工業大学が学生フォーミュラにチャレンジすることになり、アドバイザーをどうしようとか、監督をどうしようという話になったそうです。そのとき担当だった先生が実はうちのショップのお客さんで、JAFの公式レースや車検業務などをうちがきっちりやっていることを見ていてくれていて、これは適任だと。そんな経緯で学長に推薦してくれたそうです。今回のプロジェクト参加にあたり西日本工業大学からは『委嘱状』をいただき、きちんと監督として関わらせていただきました」
――マシンの制作もお手伝いされたのですか?
「私の役割は、クルマが完成したあとのセッティングや、ドライビングの指導、そして、仮に試走で壊したあとの指導だとかを依頼されました。そして、なにより経験ですよね。実際やってみて起きた問題をどうクリアしてゆくのか。学生だけでは解決できない問題に対して、プロのアドバイスをいかにしてあげるかということを期待されたのだと思います。
マシンづくりについては、学生自身がレギュレーションを読み解き、学生が考えて、学生がすべて実施しています。学生の頑張りをそっと見ていましたよ」
――実際のクルマの制作は順調でしたか?
「これがなかなか大変でした。技術的なことよりも、最初はみんなの意識がなかなかまとまりませんでしたね。バイトが忙しいとか、他に用事があったりなんていうことで、ほとんど4年生ががんばっていました。でも、さすがに現地に入ってからはいろいろとクリアすべき問題が出てきて、みんなが一丸となってくれました」
――技術的にはいかがでしたか? 学生フォーミュラの車検は特に厳しいと評判です。
「これは本当に大変でした。まず、本番の2週間前に地元の久留米工業大学で前車検があったのですが、なんと35ヶ所のNGポイントが発覚しました。これを直して現場に入ると、本選ではもっと細かい検査があり、11ヶ所のNGポイントが発覚しました。例えばステアリングのストロークとか、ガタとか、カウルのRなど、厳しい基準を目の当たりにしました。そうした中、カウルのRを修正するにあたって、パテを盛らなければいけないのか、ロールバーパットでOKなのかといった具体的対処法の提案をしてあげたりしました。こういった部分はプロの経験からのアドバイスですね」
――結果はどうでしたか?
「なんとか学生が一丸となて無事に車検は通りましたが、車検の後のステージでエンジンの不具合が見つかったので、出走は危険と判断して辞退しました」
――学生の皆さんのようすはいかがでしたか?
「さすがに泣いていましたね。35ヶ所の問題を2週間でクリアし、エコパに来てからも必死に修正してくれました。残念な結果でしたが、本当に良い経験になったと思います。大会全体を見ると、車検に合格したのは全体の80%くらい。その後、ブレーキ性能のチェックや、マシンを斜めに傾けての燃料漏れテスト、ドライバーの脱出テストなどをクリアしなければならず、実際に本選に残ったのは50%くらいと聞いています。他大学の例を見ると、本選までたどり着くのに5年も6年もかかるのが当たり前のなか、初年度に車検をクリアした彼らは立派だと思いますよ」
――学生らしい、良い経験ができたようですね。
「これは本当に、学生だからこそできる経験ですね。なにより、厳しい車検という壁を乗り越えることを経験できたのは、社会に行っても非常に役に立つと思います。たとえば自動車メーカーに入り、保安基準やそのメーカーの基準に適合するためのパーツ設計をするケースなどが多々出てくるでしょうが、そうした場面では、『これだったらいいでしょう』という感覚は許されない。レギュレーションをきっちり守り、守らされる。そして、それを乗り越えようと努力する経験が学生時代にきちんとできる。これはほんと素晴らしいと思いますよ」
――これは小笠さんもハマりそうですね。
「最近はよく人材不足だ人材不足だと言いますが、エコパに行ってみてこれは宝の山だと思いました。これだけクルマに関心があり、必死に物事に取り組む若者とたくさん出会えたことは、本当に貴重な経験でした。私としては、来年もぜひチャレンジしたいと思いますね。大学側も予算をもう少し上げてくれると言っていますし(笑)。なにより、今年、某有名国立大学と総合順位が変わらなかったという自信とともに、来年も頑張りたいと思います。」
学生フォーミュラは、技術的な研鑽はもちろんのこだが、それと同時に心ひとつに物事を成し遂げるスピリットこそ重要なテーマなのでしょう。優勝することも重要だが、学生が自分たちで厳しい壁を一つ一つクリアしてゆく。そこに、この大会の最大の魅力があるようです。
今年の参加は98チーム。
せっかくなので一覧にしてみましょう。
京都工芸繊維大学/横浜国立大学/名古屋工業大学/日本自動車大学校/同志社大学/神戸大学/芝浦工業大学/千葉大学/立命館大学/日本工業大学/大阪大学/九州工業大学/茨城大学/宇都宮大学/早稲田大学/Tongji University(中国)/トヨタ名古屋自動車大学校/山口東京理科大学/東京理科大学/山梨大学/岐阜大学/京都大学/Universitas Gadjah Mada(インドネシア)/Institut Teknologi Sepuluh Nopember(インドネシア)/金沢大学/UNIVERSITAS NEGERI YOGYAKARTA/豊橋技術科学大学/上智大学/東京都市大学/静岡理工科大学/King Mongkut's University of Technology Thonburi(タイ)/日本大学生産工学部/ものつくり大学/東海大学/福井大学/岡山理科大学/金沢工業大学/名城大学/東京農工大学/大阪工業大学/大阪産業大学/Harbin Institute of Technology at Weihai(中国)/Kasetsart University(タイ)/静岡大学/新潟大学/岡山大学/久留米工業大学/成蹊大学/摂南大学/北海道大学/北海道科学大学/日本大学理工学部/明星大学/愛知工業大学/ホンダテクニカルカレッジ関東/National Tsing Hua University(台湾)/鳥取大学/ホンダテクニカルカレッジ関西/崇城大学/北九州市立大学/九州大学/千葉工業大学/近畿大学/Sinhgad Technical Education Society(インド)/青山学院大学/国士館大学/専門学校麻生工科自動車大学校/静岡工科自動車大学校/Southern Taiwan University of Science & Technology/Xiamen University of Technology(台湾)/National Taipei University of Technology Taipei Tech Racing(台湾)/広島工業大学/富山大学/東京工科自動車大学校世田谷校/Sebelas Maret University(インドネシア)/Hubei University Of Automotive Technology(中国)/Graz Technical University(オーストリア)/東京大学/埼玉大学/帝京大学/西日本工業大学/大阪府立大学/RAJSHAHI UNIVERSITY OF ENGINEERING & TECHNOLOGY(バングラディシュ)/Universitas Indonesia(インドネシア)/Prince of Songkla(タイ)/一関工業高等専門学校/岩手大学/岩手県立大学 EV/トヨタ名古屋自動車大学校EV/東北大学EV/Harbin Institute of Technology at Weihai EV(中国)/名古屋大学EV/静岡理工科大学/静岡理工科大学フォーミュラプロジェクト/神奈川大学EV/R V College of Engineering EV(インド)/Tongji University EV(中国)/Liaoning University of Technology EV(中国)/King Mongkut's University of Technology Thonburi EV(タイ)/Universitas Gadjah Mada EV(インドネシア)/新潟工科大学EV/専門学校トヨタ東京自動車大学校 EV/Universitas Islam Indonesia EV(インドネシア)
(主催者発表順)
私学・国公立問わず、日本中の大学が名を連ねています。
日本だけでなく、中国・タイ・台湾・インド・インドネシア・オーストリアといった国と地域からの参加もあり、国際的にも注目されている大会であることがわかります。
多くの自動車関連企業がサポートをしています。
小笠さんの経験談をお聞きし、各社の人事担当者が注目するのもわかる気がしました。
■写真提供:ドライバーズカフェフォレスト
福岡県京都郡苅田町京町1丁目4−5
TEL093-434-0077
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