連載コラム「酷道を奔り、険道を往く」Vol.9 落ちたら死ぬ!!『最凶酷道───国道157号線で温見峠を越える(酷道険道:福井県/岐阜県)』ジープ・レネゲード
- 2018/06/01
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小泉 建治

常にリスクを意識し続ける

しかし温見峠周辺には左(モバイル版でご覧いただいている場合は上)の写真の通り、まるで本気の川渡りをしているかのように見える洗い越しが多い。とはいえ車体まで水に浸かってしまうような深さのものはないので、とくにSUVなどでなくても通過できる。
落石注意の看板が多いのも国道157号線の特徴だ。実際、路上にはゴルフボール大からバスケットボール大まで、さまざまな石がゴロゴロと転がっている。こんなものが直撃したら......クルマももちろん心配だが、外に出て撮影する機会の多い我々は、生身の身体に一撃を喰らう可能性も高い。
というわけでカメラマンと筆者は、今回バイク用のヘルメットを持参している。ヘルメットをかぶった男ふたりが路上でクルマを撮影している姿は異様かもしれないが、ここは安全最優先だ。
実際、根尾黒津から根尾能郷の間(下写真の辺り)は、2005年11月に発生した岩盤崩落のために2012年10月まで7年にも渡って通行止めとなっていた。今回は筆者はヘルメットをかぶる機会はなかったが、備えあれば憂いなし。酷道険道とはそれほど危険な道であると、誰より自分に言い聞かせ続けたい。

そしてなにより、コンポーネントを共有するフィアット500Xとの見事な作り分けに感心させられた。あちらは実際のサイズよりもコンパクトに感じられ、ワインディングでもついペースを上げてしまうのに対し、こちらはサイズ以上にガッシリと堅牢な印象で、「この中にいればとりあえず安心だ」と思わせてくれる。
トレイルホークが積む2.4ℓ自然吸気エンジンのキャラクターもあるが、飛ばす気にはあまりならず、のっしのっしと歩を進めるサマがなんとも頼もしい。
ついにあの看板と対面! そして旅もフィナーレへ

「落ちたら死ぬ!!」の看板である。
ここにあるということは岐阜県側からアプローチする人のために掲示されていたわけで、ここから本格的に酷道が始まる───つまり福井県側からやってきた我々から見れば酷道はここまでということである。
この看板に妙な魅力を感じていた筆者にとっては、温見峠よりもこの場所のほうが目的地というに相応しく、カメラマンが撮影している横で臆面もなくスマートフォンを取り出してパシャリ。気がつけば電波は圏内を示している。
「落ちたら死ぬ!!」の上にある落石注意の看板も味わい深い。岸壁に顔があり、その顔が口から石を吹き飛ばしている。その顔───いわば落石くん───の顔はかなり凛々しい。一方のクルマくんのビビリようもなかなかのもので、落石くんとの力関係が一目瞭然だ。
これだけ印象深いということは、注意看板としては成功と言っていい。
落石くん看板から3分ほど走り、左手に小さな発電所が見えるとセンターラインが現れ、“酷道”としての157号線は終わる。温泉施設や食堂も姿を見せ、沿道は一転して観光地の様相を呈してくる。何も知らなければ、この先に最凶の酷道が待ち受けていようとはなかなか予想できない。だからこその「落ちたら死ぬ看板」と「落石くん看板」であろう。
国内最凶との呼び声高い国道157号線は、期待に違わぬ酷道っぷりだった。だが、これぞ日本ならではの醍醐味、とも思う。
細長い国土に険しい山々が連なる日本、とりわけ本州や四国では、かつてこうした酷道険道は当たり前の存在だった。度重なる改修や道路網の発達によって徐々に姿を消しつつはあるものの、まだまだ我が国は酷道険道の宝庫である。
もちろん道路にはライフラインという役目もあるわけで、改修や道路網の整備は進める必要があるが、一方で酷道険道をもっとポジティブに楽しむ文化があってもいい。
最凶の酷道を走破した今、自分の酷道険道への想いがさらに強まったのを感じたのである。


【ジープ・レネゲードトレイルホーク・ビーツ・エディション】
▶全長×全幅×全高:4260×1805×1725mm
▶ホイールベース:2570mm
▶車両重量:1560kg
▶エンジン形式:直列4気筒SOHC
▶総排気量:2359cc ボア×ストローク:71.0×75.6mm
▶最高出力:129kW(175ps)/6400rpm
▶最大トルク:230Nm/3900rpm
▶トランスミッション:9速AT
▶サスペンション形式:F&Rマクファーソンストラット
▶ブレーキ:Fべンチレーテッドディスク Rディスク
▶タイヤサイズ:215/60R17
▶車両価格:345万6000円
Vol.1「酷道険道は日本の宝である!【顔振峠から秩父へ(酷道険道:埼玉県)】」はこちら!
Vol.2「恐怖! クルマで渡れる驚きの吊り橋!【井川湖、そして接岨峡へ(酷道険道 :静岡県)】」はこちら!
Vol.3「フィアット・パンダで本格ダート林道を走ってみる【中津川林道へ(酷道険道:埼玉県)】」はこちら!
Vol.4「日本のトンネル技術が敗退!? 険しく長すぎる国道152号線を完全走破!【酷道で南アルプス越え!(酷道険道:静岡県/長野県)】」はこちら!
Vol.5「トンネルだと5分、旧道だと最大10時間! 【安房峠を越えて(酷道険道:長野県/岐阜県)】」はこちら!
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