強化された”4気筒ターボ”のフィーリングは如何に? 【初試乗】期待を裏切らない「ポルシェ718ボクスター&ケイマンGTS」
- 2017/12/22
- GENROQ編集部

前作でも好評を博してた、ポルシェの”GTS”シリーズ。先ごろ、718ボクスター&ケイマンにもラインアップされ、早くもそのステアリングを握る機会に恵まれた。モータージャーナリストの山崎元裕氏がスペインよりレポートする。
REPORT◎山崎元裕(Motihiro Yamazaki)
独特なサウンドと振動を許容できるなら不満なし!?
先代ケイマン&ボクスターのGTSがそうであったように、今回もまたGTSのエクステリアとインテリアでは、独自のディテールが与えられることになった。フロントのバンパースポイラーが専用デザインとなるほか、ヘッドランプやテールランプも独自の仕様に。リヤにはGTSでは標準装備となるスポーツエキゾーストシステムのテールパイプが、こちらも専用のリヤデフューザーのセンターからデュアルで、あたかもGTSのパフォーマンスを誇示するかのようにその存在感をアピールしている。前後のホイールは20インチ径となり、ホイールハウスの中で、その存在感を強く主張する。
スペインのマラガ近郊で開催された今回のテストドライブ・プログラムは、オンロードでは718ボクスターGTSを、そしてそのルートの途中でプライベートサーキットのアスカリ・レースリゾートを訪ね、ここで718ケイマンGTSの走りを楽しむというものだった。さっそくトトップをオープンして、718ボクスターGTSのステアリングをオンロードへと向けよう。

ミッドに搭載されるエンジンは2.5ℓの水平対向4気筒ターボ。これは基本的には718ボクスターSと共通だ。ポルシェはさらに吸排気システムの改良やターボチャージャーのタービンを大型化するなど非常に積極的な強化策をGTSのために講じてきた。最高出力&最大トルクは365ps&430Nmという数字で、これはS比で15ps&10Nmの強化となる。ターボチャージャーの搭載位置等の問題で、この水平対向4気筒ターボエンジンのサウンドと振動には独特な感覚があるが、水平対向6気筒自然吸気時代のGTSよりも、さらに魅力的なパフォーマンスが得られていることを考えれば、ネガティブな意見を唱えるのではなく、新たな個性と考えるプラス思考の方が望ましい。
その独特なサウンドと振動を許容できるのなら、ほかにこのエンジンには不満らしいものは見つからない。718ボクスターGTSでは、6速MTと7速PDKの両モデルをドライブすることができたが、実用域でのフレキシビリティは、6速MTモデルでも2速か3速でギアをホールドしたまま“ラフ”なドライブを楽しむこともできるし、ここからアクセルペダルを踏み込めば、ターボは瞬時にブースト効果を発揮し、驚くほどのスムーズさでレブカウンターの針はレッドラインに向かって駆け上がっていく。

ワインディングロードでは、やはりブレーキングとステアリングの操作に、より集中できるという点で7速PDKのメリットは大きいが、ドライブモードで“スポーツ・プラス”を選択すれば、6速MTでもシフトダウン時には、正確無比なレブマッチの制御が入るから安心だ。
PASM=ポルシェ アクティブサスペンション マネージメントシステムが標準装備され、車高もSと比較して10㎜低くなるGTSのサスペンションは、PTV Plus=ポルシェ トルクベクタリング プラスや、フロントに235/35R20、リヤに265/35R20サイズのタイヤなどとの組み合わせで、実にシャープでナチュラルなコーナリングを演出してくれる。とりわけドライバーがもっとも感動するのはステアリングの正確さで、巧みに抑えられたロールとトラクション性能の素晴らしさがそれに加わり、コーナーではまさに完璧ともいえる動きが楽しめるのだ。
911シリーズに肉薄する魅力を秘めた”GTS”

ステージをアスカリ・サーキットに移して、今度は718ケイマンGTSをドライブしてみると、その印象はさらに強くなった。ルーフが備わるメリットは、やはりドライビング・ファンを追求するミッドシップ・スポーツとして誕生したモデルにとっては限りなく大きなものだ。
実際に718ケイマンGTSと比較すると、これまで乗っていた718ボクスターGTSの剛性感には若干のハンデがあると感じたのも事実。だが、今回の718ケイマンGTSと718ボクスターGTSの車重は、実は両モデルともに1405kgで共通。オープンボディを持つハンデは、さらに小さなものになっていることは評価できる。
7速PDKとの組み合わせでサーキット・ドライブを楽しんだ718ケイマンGTSは、ポルシェ伝統の911シリーズに肉薄する魅力を秘めたモデルだった。走行中のほとんどはスポーツ・プラスモードを使用したが、それでも乗り心地には十分なしなやかさが感じられる。コーナリングは相変わらずナチュラルな印象に終始し、トラクションや姿勢も常に最適にコントロールされている。インストラクターがドライブする先導車を追うスタイルのサーキット・ドライブは、途中で徐々にそのペースは上がっていくが、その中でこのクルマには絶対的な信頼感を抱いていいのだということを確信した。

サーキットでエキサイティングな時間を楽しんだ後は、再び718ボクスターでオンロードドライブへと戻る。ルートはタイトなコーナーが連続するワインディングロードだったが、ここでもミッドシップ・スポーツとしての洗練された走り、そして快適性は印象的だった。ちなみにオープンモデルでは気になる風の巻き込みは、100km/h程度までならば頭上にわずかな流れを感じる程度。サイドウインドウをクローズしておけば、キャビンはさらにラグジュアリーな感覚になる。
インテリアは、スポーツシートのセンタートリムやセンターコンソール等々に、軽量でスポーティーなアルカンターラ素材が採用されているのが特徴だ。キャビンのスペースや操作性は、もちろんほかの718ケイマン&718ボクスターと共通だが、ドライビングへの期待感を大いに高めてくれる演出であることは確か。その一方で、7インチのマルチタッチスクリーンによる、新世代のマルチメディア・システム、「PCM」を搭載するなど、最新モデルとしての機能性がさらに高められているのも印象的だ。
ラゲッジスペースは、キャビン内には小物入れがある程度だが、フロントのトランクルームは275ℓという容量が確保されているから、短期間の旅行程度ならば、このミッドシップ・スポーツは十分にその足としての機能を果たすことができるだろう。
GTSの誕生によって、さらに魅力的なラインナップとなった718ケイマン&718ボクスター。はたしてこの先にポルシェはどのようなストーリーを用意しているのだろうか。早くも楽しみになってきた。

【SPECIFICATIONS】
ポルシェ 718 ボクスターGTS
■ボディサイズ:全長4379×全幅1801×全高1272㎜ ホイールベース:2475㎜ トレッド:前1527 後1535㎜ ■車両重量:1375(6速MT)/1405(7速PDK)㎏ ■エンジン:水平対向4気筒DOHターボ 総排気量:2497cc ボア×ストローク:102×76.4㎜ 圧縮比:9.5 最高出力:269kW(365ps)/6500rpm 最大トルク:420Nm/1900〜5500rpm(6速MT) 430Nm/1900〜5000rpm(7速PDK) ■トランスミッション:6速MT/7速PDK ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:前後マクファーソンストラット ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ディスク径:前330×34 後299×20㎜ キャリパー:前後4ピストン ■タイヤサイズ(リム幅):前235/35ZR20 (8J)後265/35ZR20(10J) ■パフォーマンス 最高速度:290km/h 0→100km/h加速:4.6秒(6速MT)/4.1秒(7速PDK スポーツプラスモード時) ■環境性能(EU複合) CO2排出量:205g/km(6速MT)/186g/km(7速PDK) ■車両本体価格:1032万円(6速MT)/1092万2000円(7速PDK)


【SPECIFICATIONS】
ポルシェ 718 ケイマンGTS
■ボディサイズ:全長4393×全幅1801×全高1286㎜ ホイールベース:2475㎜ トレッド:前1527 後1535㎜ ■車両重量:1375(6速MT)/1405(7速PDK)㎏ ■エンジン:水平対向4気筒DOHCターボ 総排気量:2497cc ボア×ストローク:102×76.4㎜ 圧縮比:9.5 最高出力:269kW(365ps)/6500rpm 最大トルク:420Nm/1900〜5500rpm(6速MT) 430Nm/1900〜5000rpm(7速PDK) ■トランスミッション:6速MT/7速PDK ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:前後マクファーソンストラット ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ディスク径:前330×34 後299×20㎜ キャリパー:前後4ピストン ■タイヤサイズ(リム幅):前235/35ZR20 (8J)後265/35ZR20(10J) ■パフォーマンス 最高速度:290km/h 0→100km/h加速:4.6秒(6速MT)/4.1秒(7速PDK スポーツプラスモード時) ■環境性能(EU複合) CO2排出量:205g/km(6速MT)/186g/km(7速PDK) ■車両本体価格:993万円(6速MT)/1053万2000円(7速PDK)
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