アストンマーティン・ヴァンテージ試乗記 新型アストンマーティン・ヴァンテージは走れて、曲がれるスポーツカーの王道だ!
- 2018/08/20
- GENROQ編集部
アストンマーティンはセカンド・センチュリー・プランという長期計画に基づき、矢継ぎ早にニューモデルを発表している。その計画どおりにスタイリングとパワートレインを一新し、生まれ変わったヴァンテージ。ついに日本に上陸した新型は、はたしてゲイドンの次の100年の成功をもたらす1台となるか──。
REPORT◎渡辺敏史(WATANABE Toshifumi)
PHOTO◎篠原晃一(SHINOHARA Koichi)
ヴァンテージの存在意義
時は遡って1950年。その年に登場したDB2に設定された高出力エンジン仕様を「ヴァンテージ」と呼んで以来、その名はアストンマーティンにおいて特別なポテンシャルを指すものとなった。
DB4〜6そしてV8とヴァンテージは高性能グレードとして設定され、その後ヴィラージュをベースとしたハイパフォーマンスモデルがその名を冠とするヴァンテージV550として発売される。ちなみにV550は馬力を指すが、当時のスペチアーレであったフェラーリF50よりも高出力と聞けば、いかに特殊な存在であったかが伺えるだろう。
その後ヴァンテージが市場に再投入されたのは2006年。VHプラットフォームを得たアストンマーティンがリブランディングに伴い新たな商品展開を構築している最中に登場したそれは、DB9をベースに2シーターのパッケージとすることでホイールベースを140㎜短縮。コンパクトなV8ユニットを選択することで運動性能の最適化を図った。
比して安価な設定となったそれはブランドのエントリーモデルという位置づけとも受け止められたが、アストンマーティンとしては最もピュアなスポーツモデルとしてヴァンテージを位置づけるという意向を当初から示しており、現に登場以降、FIA-GT3やLM-GTEの基準車は一気にヴァンテージに入れ替わった。
高回転で聞かせるV8サウンド
そして新型ヴァンテージでもその意向が明確であることは、先のル・マン24時間レースでのエントリーをみれば言うまでもない。さらにFIA-GT3/4の販売も明言されていることを鑑みると、ヴァンテージは相変わらずサーキットに一番近いアストンマーティンということになる。
新型に搭載されるエンジンはAMGから供給を受ける4ℓV8で、90度バンクの間に2基のターボを並列搭載するホットVレイアウトを採用している。トランスミッションは先代と同様トランスアクスルとなり、専用チューニングを受けたZF製8速ATを搭載。アンディ・パーマーCEOは外紙のインタビューでMTの搭載にも言明しているが、現状はワンスペックでの展開だ。
VHプラットフォームはDB11が採用する最新世代のものとなり、ホイールベースはDB11よりも105㎜短く先代よりも100㎜長い2700㎜に設定。全長はDB11に対して285㎜も短い割に全幅はまったく同じと、平たく言えば新型ヴァンテージのプロポーションは四角に近く幅が広い。この縮小化に際して70%の部品は専用設計とされ、DB11に対して30%の捻れ剛性向上を果たしているという。
サスはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤがマルチリンクとなり、3モードの減衰力可変機能を持つ電子制御ダンパーが組み合わせられる。これらメカニズム的な構成を追うほどに、車格や成り立ちが近しく見えてくるのはAMG GTだが、アストンマーティンとしては走りと実用性のバランスポイントとして常にポルシェ911の姿を意識しているはずだ。ちなみに後部ラゲッジスペースの容量は350ℓと、トランスアクスルでありながら実用性は非常に高い。
圧縮比が低めになるターボユニットの特性もあるのだろうか、あるいは世界的な騒音規制の高まりに配慮してか、新型ヴァンテージの始動音は以前よりも小さめに抑えられたように思える。その後、発進から2500rpmあたりまではやや曇った不揃いなサウンドが、その回転域を超えるあたりから綺麗に揃っていく。
同じエンジンを搭載するAMG GTに比べるとやや整った高音を聴かせてくれるといった印象だろうか。出力特性は極めてフラットで、特に低回転域のトルクは使い勝手が良く、変速マネジメントも標準モードでは積極的にその域を使おうとする。8速ATのレシオカバレッジも広いため、高速巡航では10㎞/ℓを超える燃費を求めることも難しくはない。この辺りの柔軟性をみるに、先代からは完全に世代が更新された印象だ。
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