〈試乗記:トヨタ・カローラ〉これぞ日本車の原点
- 2019/11/30
- ニューモデル速報
意外に(!?)走りが良かった1.8ℓNAモデル
まずはセダンの主力グレードになるであろう1.8ℓNA「S」に乗る。実は「このエンジンは価格訴求用だろうな」と期待せず(!?)に乗ったのだが、走らせてビックリ!! ゼロ発進時にスッと前に出るツキの良さや実用域トルクでダウンサイジングタ—ボとはいかないものの、CVTの巧みな制御も相まって街なかでは想像以上に元気に走る。ただし、高回転はそれほど得意ではないのでリミットまで回してもパワー感はない上にノイジーと、あくまでも実用に徹した味付けだ。試乗後にエンジニアに話を聞くと、「型式以外はブロックを含めてすべてやり直した」と。
フットワークはどうか?操舵力は比較的軽めだが、封来のトヨタ車のようなフワフワとした軽さではなく芯のある軽さで、スムーズかつ自然でつながりも良く路面からの情報も必要なだけ的確に伝える。車体は非常にシッカリしているがドイツ系のようにガチッとした物ではなく、剛の中に柔(=しなやかさ)がある印象。サスペンションのセットアップは絶妙の塩梅で、1.3t越えとは思えない身のこなしの軽快さや操作に対する確かな応答性と自然なクルマの動きは、スポーティモデルに足を踏み入れるレベル。しかし、段差を乗り越える際のアタリ、ショックのいなし方などセダンとしての優しさも決して忘れていない。
続いては、ツーリングのハイブリッド「S」だ。1.8ℓ+モーターはトヨタのハイブリッドモデルでは定番となる鉄壁の組み合わせだ。発進時はプリウスやC-HRよりも穏やかな特性に感じたがアクセルを踏んだ時の応答の良さや力強さは健在。ガソリン車とは「+500ccくらいの余裕」がある。THSⅡの欠点であるラバーバンドフィールも上手に抑えられたセットで、アクセルをベタ踏みしない限りはドライバビリティも高いレベルだ。
フットワークはガソリン車と基本的には共通で軽快で俊敏だが、重量的には効いているのかステアフィールとクルマの動きに重厚感がプラス。AWDモデルにも乗ったが、街乗りレベルでは重厚感も気にならない上に、舗装路ではラフに発進させた際に「トラクション性能が気持ちいいかな?」と言う程度の差で、本領を発揮するのは滑りやすい路面だろう。また、一般的なAWDはフェンダーの隙間の大きさにガッカリすることが多いが、カローラはFFとほとんど変わらないのもうれしいところだ。
パワートレーンは3種類。プラットフォームを共有する現行プリウス&C-HRと共通の1.8ℓハイブリッド、1.2ℓターボに加え、1.8ℓNA エンジンが追加された。この1.8ℓNAの仕上がりが思いのほか見事。また、セダン/ツーリングともターボモデルは6速MT のみの設定だ。
セダンとツーリングでフットワークの違いは微少
ちなみにセダンとツーリングは普通に乗る限りは走りに違いは感じないが、重箱の隅を突くとセダンはステアリングセンター付近がスッキリ、リヤはドシッとしているがやや張りのある乗り味に対し、ツーリングはステアリングセンターに若干ダルさがあるが、リヤサスの動きはセダンよりしなやかさがある。恐らくボディ剛性の差による違いだが、個人的にはツーリングの方が剛性バランスは良いように感じた。逆を言えばセダンはより高出力エンジンまで視野に入れた剛性を持っている……!?
ちなみにロードノイズは新型カローラの数少ないウイークポイントのひとつで、路面変化にやや敏感過ぎるのと、特にツーリングはボディ形状も相まってリヤまわりからの音が耳につきやすいのが少々気になった。
最上級の「W×B」には1.2ℓ直噴ターボ+6速MTと言うマニアな組み合わせを用意。スポーティなキャラクターだが、絶対的な出力はそれほど高くない上に2000rpm前後から盛り上がるトルク特性なので、シフト固定のズボラな運転は禁物。トルクバンドを考えながらこまめなシフト操作が求められる。ドライバビリティ重視ならカローラスポーツに設定されるCVTとの組み合わせが優れるが、上手にスムーズに走らせるにはクルマと上手に対話しながら……と「操る愉しさ」が残されているのは高く評価したい。
フットワークは17インチを履くが、一般道では16インチに匹敵する快適性。高速域ではコーナリング時の一体感が高められているが、欲を言えばもう少し無駄な動きを抑えられると安心感はより増すような気がする。ちなみにカローラスポーツには電子制御ダンパー(AVS)の設定がある。個人的には価格の面が気になるが、セダンでも試す価値はあるかもしれない。そういう意味では、かつてカローラにラインナップされた熱血スポーツの「GT」ではなく、「ST」や「SX」と言ったマイルドスポーツの現代版……と言った方が解りやすいかも。
ちなみに海外向けにはレクサスUXに搭載されるダイナミックフォースエンジンの2.0ℓ直噴とこのエンジン&モーターを組み合わせたパフォーマンスハイブリッドがラインナップされるが、技術的には日本向けにも搭載は可能。今後「GR」として追加設定されることを願いたい。
このように新型に乗ると従来モデルには本当に申し訳ないが、「どこか壊れているのでは?」と感じてしまうくらいの激変だ。直近の歴代モデルを振り返ると「扱いやすい」、「燃費がいい」と言うイメージばかりで、走りについて語るべきことはまったくなかったことを考えると、まさしく新型の登場は「カローラ50年目の革命」と言ってもいいだろう。
加えて、このパフォーマンスを誰でも気負いなく体感できること、どこかワクワクすることこそが、新型カローラの特徴であり「味」なのだと筆者は考える。ユーザーは知らず知らずに“イイ物”を体感することで、結果的にクルマに対するハードルが自然に引き上がる。すると日本車に対する要求はおのずと高くなり、それに伴ってメーカーはレベルアップを図り、日本車はもっといいクルマに進化する。そう、今回の新型カローラの登場は、日本車復権のスタートなのかもしれない。
モーターファン別冊・ニューモデル速報 vol.589 新型カローラのすべて
世界基準の走りと先進感
グローバルTNGAプラットフォームと国内に最適化した専用ボディ
ドライビングインプレッション
ライバル車比較試乗
開発ストーリー
メカニズム詳密解説
デザインインタビュー
使い勝手徹底チェック
バイヤーズガイド
縮刷カタログ
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