【クルマの教科書】レイアウト編-2 FR(エフアール)

2020/11/13
MotorFanアーカイブ編集部

これは1894年7月22日にフランスでおこなわれた世界初の自動車レース、パリ～ルーアン・トライアルのようすをつたえた絵です。

クルマのカタログや雑誌、メディアでは、様々な専門的な用語が使われています。この連載ではそんな言葉をなるべくわかりやすく説明します。

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FR(エフアール)ってなんだ?

自動車は、エンジンをつんでいる位置と、エンジンで動かす車輪が前と後ろのどちらなのかの組み合わせで、よりくわしく区別することができます。自動車のどこにエンジンをつみ、前後どちらの車輪を動かすかの組み合わせのことを、自動車の「レイアウト(配列(はいれつ))」と言います。
その中で、「自動車の車体の前にエンジン(フロント・エンジン)をつみ、後ろの車輪を動かす（リヤ・ホイールドライブ)」ものを英語で「フロント・エンジン、リヤ・ホイールドライブ」と言い、その英語の頭文字をとって「FR(エフアール)」と言います。

FR(エフアール)＝自動車の前にエンジンをつみ、後輪を動かすレイアウト

FRは、車体の前に置いたエンジンの軸の回転を後輪につたえるために、エンジンと後輪とをつなぐプロペラシャフトという回転軸(かいてんじく)が必要になるのが目立つ部分です。

大むかしは、プロペラシャフトではなく、自転車やオートバイのように、金属のくさり(チェーン)を使って力をつたえていたこともあります。

これは1904年につくられた、ドイツの「メルセデス・シンプレックス 28/32HP」という自動車（上の写真)の中身です。今から120年ほど前、日本では明治37年のことになります。この自動車はチェーンを使って、エンジンの回転を後輪につたえる仕組みになっていました。この仕組みのほか、下の写真ではタイヤの色が白っぽいのも今の自動車とちがったところです。今のタイヤの色が黒いのは、長もちさせるため、カーボンブラックという黒いコナをまぜて黒くしているからです。ゴムだけでは白っぽい色になるのです。

FRは、エンジンと車輪を動かす仕組みとを車体の前後にわけてつむため、両方を同じ車体の前部に積むことになるFF(エフエフ)にくらべ、大きなエンジンをつむのに有利です。このため、サイズの大きな自家用車に使われることが多いレイアウトです。

また、FFではエンジンで前輪を動かすため、前輪は自動車を動かすための力を地面につたえると同時に、進む方向を決めるかじをきる役目もはたさなければなりません。

そのため、前輪タイヤにさまざまな力がかかって大きな力になりますが、その力をタイヤがうけとめにくくなります。つまり、あまり急なカーブを走ったりすると、曲がりにくくなったり、すべりやすくなってしまうのです。

しかし、FRでは自動車を動かすための力を地面につたえる役目は後輪がうけもち、前輪は進む方向を決めるかじをきる役目をはたすだけでよくなります。

タイヤがうけとめる力は、FFとちがってバランスよくわけられるわけです。FFよりもタイヤの性能にゆとりができるため、FRは、はやく走るスポーツカーにもよく使われるレイアウトです。

今ではさまざまな工夫が進んだためにほとんど問題はおこりませんが、エンジンの重さで地面を押し付ける力が強い車体前側にくらべ、重いものをつんでいないため地面を押し付ける力が弱い後ろ側で自動車を動かすため、車輪が空まわりしやすく、特に雨や雪など天気が悪いときの道路ではあぶないことがあります。