キャデラックXT4 レクサスNXとメルセデス・ベンツGLCの間のポジション。キャデラックのエントリーは燃費もいい
- 2021/05/02
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世良耕太
キャデラックXT4はもっともコンパクトなキャデラックSUV。アメリカン=でっかくて燃費が悪いという図式にはまったく当てはまらない最新モデルだ。570万円からという価格も、キャデラックの入門モデルにちょうどいい。さて、XT4、どんなクルマか?
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
世代にもよるだろうが、筆者のような50代の人間にとっては(もっと上ならなおさらそうだろう)、キャデラックといえばアメリカンラグジュアリーを象徴するような存在だ。ラグジュアリーのシンボルであり、アイコンといってもいい。思い浮かぶのは、テールフィンが生えた、人間が小さく見える、巨大なモデルだ。試乗会のプレゼンテーションでは1957年のエルドラド・ブロアムがディスプレイに表示されたが、これぞまさしく「キャデラック」と聞いて思い浮かぶ姿であり、アメリカの豊かさと繁栄の象徴だった。
そんな思いに凝り固まって現代のキャデラックと対峙すると、面食らうことになる。ラグジュアリーではあるが、意図せず大統領の執務室に迷い込んでしまったかのように戸惑うようなことはない。対峙したのがキャデラックのエントリーモデルともいうべきXT4だったからかもしれないが、ずっとカジュアルだ。2018年にアメリカで発表され、国内には2021年2月からデリバリーが開始されたXT4は(左ハンドルのみの設定)、若手デザイナーが「自分たちが欲しいクルマ」をテーマにデザインしたという。
なるほど若々しいが、キャデラックの伝統を踏み外すようなことはしておらず、フォーマルとカジュアル、若さと落ち着きがほどよくミックスした印象だ。エクステリアは金属の固まりからナイフでエッジをカットしたようなシャープな造型をしており、ブーメラン型にも見える前後のライティンググラフィックがモダンな印象を与える。大径のタイヤはボディの四隅に配され、SUVらしい力強さと踏ん張り感を印象づける。
存在感たっぷりだが、実際のところ、XT4はキャデラックのラインアップでは最もコンパクトなSUVだ。全長×全幅×全高は4605×1875×1625mmだから、レクサスNX(4640×1845×1645mm)とオーバーラップする。価格帯はキャデラックXT4のほうが上で、570万円〜670万円。レクサスNXは454.6万円〜612.7万円だ。もうひとつ拾い上げると、メルセデス・ベンツGLC(4670×1890×1645mm)の価格帯は708万円〜899万円である。
キャデラックXT4は、トヨタRAV4並のボディサイズで存在感あり、パワートレーンもハイスペックで価格はドイツ・スウェーデンのプレミアムSUVよりリーズナブル!
ゼネラルモーターズ・ジャパンは、キャデラック初のコンパクトSUV、「キャデラックXT4」を発表・発売した。キャデラックのSUV...
アメリカンラグジュアリーのイメージに引きずられると、キャデラックの本質を見失うことになる。革新的な技術、先進的な技術を積極的に取り入れて現在に至るのが、このブランドの伝統だ。1902年に創業したキャデラックは、9年後の1911年にセルフスターターを発明し、エンジン始動時の手動クランクからユーザーを解放した。1924年には自動車メーカーとして初めてテストコースを建設。1940年には4速ATを実用化。1952年にはパワーステアリングを導入し、1959年にはクルーズコントロールを実用化した。電子制御燃料噴射装置(EFI)は1975年に導入。1985年にはV8エンジンを横置きに搭載してみせた(ドゥビル)。
1996年には埋め込み型テレマティクス・システムであるOnStar(オンスター)を発表。2002年には各種センサーからの情報に応じて減衰力を可変制御するセミアクティブサスペンションをセビルSTSに採用した。2012年には自動運転技術のスーパークルーズを発表。2017年には車車間通信技術(V2V)の導入を発表している。
エンジンは2.0ℓ直列4気筒直噴ターボだ。過給ダウンサイジングガソリンエンジンは欧州メーカーの専売特許ではない。ひと昔前なら3.6ℓV6自然吸気エンジンを積んでいたところだろうが、エンジンにロマンを求めず、トルクアクチュエーターだと割り切ってしまえば、直4エンジンだろうが取り立てて気にはならない。というより、いいエンジンだ。
遮音が行き届いているのもあるのだろう。常用回転域はもとより、高回転まで回しても、耳障りな音は車室内に侵入してこない。オーディオを楽しむのに最適な環境ともいえる。9速ある変速段数の恩恵で、100km/h走行時のエンジン回転数は1600rpm前後でしかない。常用回転域が低いのも、静粛性の高さに寄与しているのだろう。低負荷時には4気筒のうち2気筒を休止する気筒休止システムを備えている。
今回の試乗とは別の機会に小田厚燃費(小田原厚木道路・小田原西IC〜厚木IC間約32km)を計測したところ、16.1km/ℓを記録した。1760kgの車重がある前面投影面積の大きいSUVであることに加え4WDであることを考えれば、燃費は上々といえるだろう。動力性能面(最高出力169kW<230ps>/5000rpm、最大トルク350Nm/1500-4000rpm)に関しては、なんの不足もない。
パワートレーン系はタイトでしっかりしているが、ステアリングの手応えはやや緩く、車体の動きにも緩さが感じられた。好みにもよるだろうが、ステアリングはもう少ししっかりした手応えがほしいし、車体の動きももう少し締まってほしい。そう感じていたところで、XT4にはドライブモードの切り換えがあることを思い出した。「ツーリング(FF)」「AWD」「スポーツ(AWD)」「オフロード(AWD)」の4種類のモードが設定されており、デフォルトはツーリングだ。
このドライブモードをスポーツに切り換えると、筆者好みの味つけに切り替わることがわかった。ステアリングの手応えはしっかりし、車体の動きは引き締まる。前後の駆動系が機械的につながり、4輪でしっかり路面を捉えているクルマに特有のしっかりした身のこなしに変化し、頼もしさが増す。まさに「スポーツ」と呼ぶにふさわしいモードだ。
現代のキャデラックはラグジュアリーであることに変わりないが、より身近(価格も含めて)でモダン。国産や欧州ブランドと毛色が違って特殊ということはなく、取っ付きやすいし、扱いやすい。じゃあ凡庸かというとそんなこともなく、室内のムードやスイッチ類の配置が個性的で、やっぱりキャデラックであり、アメリカ流のラグジュアリーな要素が横溢している。
キャデラックXT4プレミアム
全長×全幅×全高:4605mm×1875mm×1625mm
ホイールベース:2775mm
車重:1760kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:LSY
排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.0mm×92.3mm
圧縮比:-
最高出力:230ps(169kW)/5000rpm
最大トルク:350Nm/1500-4000rpm
過給機:ターボ
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:61ℓ
車両価格○570万円
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