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キャデラックCT5 GM最後の2.0ℓ直4エンジンを積み、欧州ブランドのプレミアムセダンと真っ向勝負

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キャデラックCT5プラチナム 車両価格○560万円

キャデラックCT5は、2.0ℓ直4ターボをフロントに縦置きするプレミアムFRセダンだ。目指したのは欧州のプレミアムブランドに対抗できる走り。たとえば、BMW5シリーズとライバルになる、そんなクルマなのだ。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

現在のGMは「トリプルゼロ」を目指している。「Zero Crashes, Zero Emissions, Zero Congestion.」だ。日本語に置き換えれば、「事故ゼロ、排ガスゼロ、渋滞ゼロ」である。排ガスゼロとは電動化を意味する。内燃機関とモーターやバッテリーを組み合わせるのではなく、2020年代の終わりまでに内燃機関(エンジン)をなくし、バッテリーEVにシフトしていく(燃料電池車も考えられる)。

エンジンはLSY型2.0ℓ直列4気筒エンジン。縦置きと横置きがある。
この動きにともない、エンジンの開発はフェードアウトしていく。すでに取り組みは始まっており、エンジンやトランスミッションの開発部門は規模を縮小している。もうGMからは新開発のエンジンは出てこないだろう。どうしても必要になったときは、外部から調達する手段を選ぶことになる。LSYの記号を持つ2.0ℓ直列4気筒ガソリンターボエンジンは、GM最後の2.0ℓ直4エンジンになる可能性が高い。

ボンネットを開ければ、エンジンが縦置きされていることがわかる。
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:LSY 排気量:1997cc ボア×ストローク:83.0mm×92.3mm 圧縮比:- 最高出力:240ps(177kW)/5000rpm 最大トルク:350Nm/1500-4000rpm 過給機:ターボ 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:66ℓ

ラグジュアリーサルーンを標榜するキャデラックCT5のエンジンルームを覗くと、化粧カバーにはこれ見よがしに「TURBO」の文字が躍っており、パワーを誇示するかのようだ。だが、LSYは典型的な過給ダウンサイジングエンジンである。ターボチャージャーには、排気干渉を防いでタービンの効率を高めるツインスクロール式を採用。カムシャフトにはスライディングカムシステム(SCS)と呼ぶカム駒切り替え機構を用いている。吸気側を小リフト(小開角)と大リフト(大開角)を切り換えるだけでなく、気筒休止機構も備えているのが特徴だ(2番と3番シリンダーには、排気側にも切り替え機構を搭載)。燃費と出力を両立させるためである。

最高出力は169kW<230ps>、最大トルクは350Nm、BMEP(正味平均有効圧)は22.0barなので、正直、「TURBO」過給エンジンであることを誇示するほどではないと思うのだが、燃費も加味しながら、出力を引き出したということなのだろう。実際、とてつもなく力強いというわけではないが、LSYはCT5を楽しく走らせる。

日本車とも欧州車とも違うキャデラックの世界。ハンドル位置は左

CT5はキャデラックの最新セダンだ。本国での発表は2019年5月。国内では2021年1月に発表され、5月にデリバリーが始まる予定だ。アメリカンブランドのセダンと聞くと、大きなクルマをゆったり動かす様子をイメージしがちだ。CT5が目指した走りは違う。意識したのは走りだ。ニュルブルクリンク北コースで走り込んだのがその証拠。ヨーロピアンブランドのセダンと同じ土俵で戦おうとしている、ということだ。

プラットフォームはATSやCTSで採用済みのアルファ・アーキテクチャーをベースに刷新した。フロントエンジン・リヤドライブ(FR)だ。全長×全幅×全高は4925mm×1895mm×1445mmである。ボディサイズと走りを意識したコンセプトを考え合わせると、欧州ブランドではBMW5シリーズ(4975×1870×1480mm)が競合になるだろうか。

プラットフォームはアルファ・アーキテクチャーを使う。CT5プラチナムはFR CT5スポーツは4WD(620万円)
全長×全幅×全高:4925mm×1895mm×1445mm ホイールベース:2935mm

CT5の開発にあたってはホイールベースを延長した。ATSの2775mmに対しCT5は2935mmだ。2016年にデビューした現行BMW5シリーズのホイールベースが2975mmだから、そこを意識したということだろうか。ホイールベースの延長はもちろん、後席居住性の向上を実現するためである。先に印象を記しておくと、ひざの前に残る空間の大きさに驚いた。同時に、「トヨタMIRAI(4975×1885×1470mm、2920mm)にもこれくらいの余裕があればなぁ」と思ってしまった。ちょっと感動するくらい、後席は広い。

CT5はスポーティさを演出するため、ファストバック風のデザインを採用している。ルーフはBピラー付近を頂点にしてデッキの短いトランクに向けて傾斜していくが、後席の頭上空間に寸法上の不足は感じなかったし(筆者の身長は184cm)、心理的な圧迫感もなかった。前輪はフロントバンパーの背後にあってAピラーから遠く離れ、極めてFRらしいプロポーションを形成している。いかにも走りそうな形だし、強そうな面構えだ。

ニュルブルクリンク北コースで走り込んだ成果を反映したのだろう。CT5を開発するにあたっては、走りの質を高めるべく脚周りの強化も行なったという。都心部で行なった今回の短い試乗(試乗車はCT5プレミアム:560万円)では「走りはすばらしい」と言い切れるほどの走り込みはできなかったが、ゆったり動くクルマでないことはわかった。といって、「ニュルを攻めるならいいんだろうけど、公道でこれは……」と眉をひそめたくなるような硬い脚でもなかった。

LSYを積むのはSUVのXT4と同じだが、XT4がパワートレーンを横置きに搭載するのに対し、CT5は縦置きだ。そのため、エンジンに組み合わせるトランスミッションは異なっており、XT4の9速に対してCT5は10速ATを組み合わせる。数が大きいほどエライと決めつけるわけにはいかないが(トランスミッションは重く、大きくなるし)、低速側、高速側ともに車速のカバー範囲は広くなるし、より緻密に制御できる。

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100km/h走行時のエンジン回転数は1400rpmほどでしかなかった。低い回転数で走れるのは変速段が10ある恩恵でもあるが、エンジンが低回転域から充分なトルクを発生しているおかげでもある。無理して走っている感じはまったくしない。エンジンが低回転で回っているのに加え、遮音が行き届いているのもあり、車室内は常に静かだ。日常的な走行でエンジン回転数が2000rpmを超えるようなことはほとんどない。

ワインディングロードを攻められるポテンシャルを持ちながら、普段はゆとりある走りを実現する。そのための「TURBO」なのだろう。走りを意識した欧州ブランドのプレミアムセダンと真っ向勝負するために生まれた、アメリカンラグジュアリーなサルーンがキャデラックCT5だ。インテリアは、レザーの良さを引き立たせる仕立てが印象的である。

キャデラックCT5
全長×全幅×全高:4925mm×1895mm×1445mm
ホイールベース:2935mm
車重:1680kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:LSY
排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.0mm×92.3mm
圧縮比:-
最高出力:240ps(177kW)/5000rpm
最大トルク:350Nm/1500-4000rpm
過給機:ターボ
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:66ℓ
駆動方式:FR
トランスミッション:10速AT

車両価格○560万円

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