Aston Martin DB11 AMR 刺激にあふれたDB11 AMRは意外にも快適で紳士的であった
- 2019/04/14
- GENROQ編集部
アストンマーティンが新たに用意したサブブランドがAMRである。もちろんレーシーな実力を持つ1台であることは言うまでもない。その戦闘的な名前から想像される実力の程を島下泰久が確かめた。
REPORT◉島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa)
PHOTO◉小河原 認(KOGAHARA Mitomu)
※本記事は『GENROQ』2019年4月号の記事を再編集・再構成したものです。
AMRの名が示すのは当然アストンマーティン・レーシングのことであり、その名がつけられた市販モデルは、そのレースシーンからのフィードバックがふんだんに採り入れられた、よりパフォーマンス志向のアストンマーティンと位置づけられる。まあ、そんなことは改めて説明するまでもないだろう。
ましてやこのカラーリングである。世界限定100台というスターリンググリーンのボディカラーにライムのストライプの組み合わせは、ワークスレーシングカー直系。無論、これはほんの一例でオーナー諸氏は多様なコーディネートを楽しむに違いないが、こういう組み合わせをロードカーでもしれっと着こなしてしまうのは、さすが英国車である。
DB11AMRは、2016年の発表以来、これまで世界で4200台を販売する成功作となったDB11のV12モデルに代わり、ラインナップの頂点に君臨する存在だ。その心臓であるV型12気筒5.2ℓツインターボエンジンは最高出力が31㎰増の639㎰に引き上げられ、V8モデルに対して実に129㎰もの差をつけるに至った。ギヤボックスの制御も見直されて、結果的に0→100㎞/h加速は0.2秒速い3.7秒に。そして最高速は334㎞/hに到達している。
それに合わせてシャシーも見直されている。V12モデルの登場以降にアストンマーティンにチーフエンジニアとして加わったマット・ベッカー率いるチームの仕事である。
内外装はカラーリングだけでなく仕立ても特別だ。外装はレンズ類、グリルやモール類などが軒並みモノトーンで揃えられ、特に試乗車は特別仕様ということでカーボンファイバーのパーツがこれでもかとあしらわれている。鋭く前に突き出したリップスポイラー、鍛造20インチホイールとも相まって、迫力あるいは凄みは相当なものだが、地上高などは十分確保されているから、日常使いに支障をきたすことはなさそうだ。
内装はレザーとアルカンターラをふんだんに使用。シート中央のストライプやステッチはライムで統一されていて、派手なのにシックだ。AMRのロゴは、スカッフプレートに光り輝くだけと控えめである。
やまない雨を恨めしく見やりつつ、未だ慣れない特異な形状のステアリングホイールを握り走り出す。この車名、この出で立ちだけに思わず身構えるが、実際のDB11AMRは想像とは真逆の、きわめて上質な乗り味で迎えてくれた。
相応にスプリングレートは高そうだが、ダンパーの初期の動きが非常に柔らかく、衝撃を丸めてくれる。正直、街中もSモードでいいと思うぐらいのしなやかさだ。S+にするとさすがに揺すられ感が出てくるが、それも十分、許容範囲である。
エンジンは低回転域からトルク分厚く、アクセルペダルに軽く足を乗せるだけでグイグイと背中を押してくる。100㎞/h巡航時のエンジン回転数は1300rpm。ここで淡々と流しているだけでも、少しだけ音量を増した排気音ともどもエンジンの心地よい息吹が伝わってきて豊潤な気分になれる。8速ATの変速は明らかに素早く、リズム良く街乗りをこなせるが、もちろん本領が発揮されるのは、その先の領域だ。
意を決して右足に力を込めると、その豊かなトルクをさらに二乗で上書きしていくが如く猛烈な勢いで力強さを増しながら、高回転域まで一直線に駆け上がり始める。それだけでも血の気が引くのに、さらに6000rpmを過ぎた辺りで最後のロケットを点火するかのように勢いが高まり、瞬時にトップエンドまで到達するのだ。Dレンジでは7200rpmからのレブリミットより手前、6800rpm辺りでシフトアップするが、それで不満があるものか。雨の中、低いギヤでの加速では決まってここで姿勢を乱そうとするから、ESPは切らない方がいい。
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