【最終回!】最高にフツーなフランス車でした〈ルノー・カジャー長期レポートVol.13〉
- 2019/04/12
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MotorFan編集部
ルノー・カジャーが編集部にやってきてから8カ月。ついにお別れの時がやってきてしまった。「ヨーロッパの日常を感じ、ヨーロッパの本気を知る」をテーマに走り続けた約9000km。果たしてカジャーはどんなクルマだったのか?
レポート日:2019年4月11日
オドメーター:13950km
TEXT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
MFカジャー号が編集部にやってきてから8カ月が経過した。当初は一年くらいは乗り続ける見通しだったが、事態は急転した。
カジャーがルノー・ジャポンのラインナップから外れてしまったのである(泣)!
公式ホームページから姿を消したのは2019年3月29日のこと。新車を購入したければ、もはやディーラー在庫を探すしかない。
別に新車で売らなくなったからといって、長期レポートをやめる必要はないんじゃない? 当然そんな考えも頭に浮かんだが、当連載の主たる目的は、新車購入を検討している人の参考となる情報を提供すること。もちろん長期レポートを続けるためには、諸経費もかかるわけで、担当者個人の一存でMFカジャー号を所有し続けることはできなかった、というわけである。
MFカジャー号の連載1回目にも書いたことだが、我々が長期レポート車にカジャーを選んだのは、「ヨーロッパの日常を感じ、ヨーロッパの本気を知る」ためである。
結論から言うと、カジャーはまさに「フランスの偉大なるフツーのクルマ」だった。
偉大とフツーは相反するだろって? いえいえ、そうではなく、気兼ねなく、身構えることなく乗れて、それでいて妥協なくしっかり仕立てられた実用車という意味では、まぎれもなく「偉大なるフツー」だったのである。なんというか、ドライビングポジションから動力性能まで、とにかく尖ったところがない。だからとくに強烈な印象も残らないのだが、これが取材の足、機材運搬といった目的で乗るには都合がいい。余計なことに神経を使わずにすむから、仕事に専念できるのだ。
その一方で、シートはルノーらしく実に快適で、少々飛ばしても不満を覚えないホールド性の高さも特筆できる。室内スペースの広さも自慢のひとつで、平均的なCセグメントサイズながら、クロスオーバー的シルエットのおかげでアップライトな乗車姿勢になり、おかげで足元が広い。ラゲッジルームも広大で、カメラ機材やイベント用の資材の運搬にどれだけ活躍してくれたことか。
とはいえ、不満がまったくないわけではなかった。
連載7回目でも言及したが、低速時に車体がユサユサッと揺すられるような足まわりのマナーや、冷間時にDCTのクラッチ動作が少しギクシャクする悪弊は最後まで解決することはなかった。
前者はあくまで低速時の話で、60km/hを越えればフラットライドそのものだし、後者はしばらく走って暖まればすぐに滑らかになるので、いずれも大騒ぎするほどのことではない。だが、これからディーラー在庫の新車を買おうとしている方や、中古車での購入を検討している人は知っておいて損はないだろう。
それにしても、カジャーはなんでこんなに早くカタログ落ちしてしまったのだろう? 日本正規導入が始まったのは、2017年8月31日から。このときは限定車という形だったが、翌18年早春から正式にカタログモデルとして販売がスタートした。
つまりたったの約1年半でカタログから姿を消してしまったのである。
ルノー・ジャポンによれば、日本におけるカジャーの累計販売台数は、3月末の時点で256台だという。セール的にはとても成功したとは言い難い。
だが、販売台数とクルマの出来は必ずしも一致しない。
我が国の自動車マーケットの特殊性は広く知られているところで、とにかく自国のメーカーが強い。これだけ多くのフルラインメーカーが顔を揃えている国など日本しかない。
よって海外の「フツーのクルマ」は出来の善し悪しにかかわらず苦戦する。ルノーもプジョーもフィアットも、だからキャラクターの立ったモデルを厳選して日本に導入することで成功している。それができなかったフォードやオペルは撤退してしまった。非プレミアムブランドで、本国と同じように「フツーのブランド」として日本で成功しているのはフォルクスワーゲンしかないのだ。
もちろん一部のファンはカジャーのような「フツーのルノー」でこそ味わえる素のフランス車の良さに魅力を感じている。だがそんなファンは少数派だ。
カジャーのようなクロスオーバーはマスを狙わなければならない。走りもユーティリティも至極真っ当に仕立てられたカジャーだが、飛び道具がなかった。そういうことだろう。
だが以前にも書いたが、パリではカジャーがけっこう走っている。Cセグメントなんだけれど、ちょっとだけ背が高い。でもAWDではない。多くの日本人には中途半端に見えるだろうけれど、ほとんどの都市生活者にとっては実際はこれくらいがちょうどいい。
日本で人気が出なかったことは、通を気取りたい人にとってはむしろ好都合かもしれない。1年半しか売られなかった「レアな」「フツーの」ルノーなのだから。
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