〈試乗記:アウディA4 オールロードクワトロ〉もはや主役! SUVとステーションワゴンの融合
- 2019/12/17
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MotorFan編集部
元来「SUVへの入口」として登場したオールロードクワトロ。しかし今や、コンベンショナルなステーションワゴンと、背高SUVの双方の魅力を高度に両立させた、ひとつの「定番シリーズ」として確固たる地位を築き上げている。A4として二代目となる新型オールロードクワトロは、そんな定番モデルに相応しい進化と熟成を遂げている。
TEXT●佐野弘宗(SANO Hiromune)
PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)
※本稿は2016年11月発売の「アウディA4/S4のすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。
無理をしすぎていない絶妙の「寸止め感」が吉
アウディがオールロードクワトロなる商品を初めて世に出したのは、1999年のことだ。99年といえば、レクサスRX(当時の日本名トヨタ・ハリアー)、メルセデス・ベンツMクラス、そしてBMW X5と、乗用モノコックボディの高級クロスオーバーSUVが一気にブレークした時期と重なる。初代オールロードクワトロはそんな潮流へのアウディからの回答でもあったが、A6アバントの既存ボディを基本的にそのまま使った初代オールロードクワトロは、失礼ながら、「過渡期ゆえの苦肉の策」と見えなくもなかった。
実際、アウディはそのわずか数年後に、専用デザインの本格SUV(Q7やQ5)を次々とリリースした。それでも、オールロードクワトロが終わることはなかった。それどころか、元祖となったA6系にA4系の弟分まで加わり、そのA4オールロードクワトロですら、こうして二代目が出現するに至ったわけだ。
オールロードクワトロはもはや完全に定番シリーズモノに成長した。だから、新型A4オールロードクワトロも当然のように存在して、すでに新型A4を知る目にはほぼ予想どおりの内容で登場した。本国では豊富なエンジンラインナップや電子制御可変ダンパーも用意されるようだが、日本仕様はひとまず、バランスのいい2.0ℓガソリンターボにオーソドックスな固定減衰ダンパーを組み合わせた1グレードのみとなる。
標準の17インチホイールを履くオールロードクワトロの走りは、とても穏当で、さわやかだ。今回の取材では、A4のセダンやアバントと同じ場所で直接乗り較べることもできた。それもあって、なおのこと、セダンやアバントが地を這うように俊敏で、それに対して車高が30㎜リフトアップされたオールロードクワトロが、ゆったりと穏やかに走ることが明確に確認できたわけだ。
クルマに詳しい読者の皆さんは「車高が上がっているんだから、そりゃ当たり前だろ!?」とおっしゃるだろう。確かにそれはまったく正しい理屈なのだが、この最新のオールロードクワトロでは、そういう当たり前の理屈が、当たり前に感じ取れるところが最大の美点でもある。
現代の技術では、背高グルマをまるでスポーツカーのように走らせることも不可能ではない。ほかでもないアウディの本格SUVであるQシリーズも、そんな典型例のひとつ。しかし、この新しいA4オールロードクワトロは車高の高いクルマとして無理しすぎておらず、絶妙の「寸止め感」によるA4とは明確に異なる鷹揚さがとても心地いいのだ。
山坂道での新型オールロードクワトロは、豊かなサスストロークを惜しげもなく使いながら、ゆったり上下しながら走る。普通のA4より速やかにスッとロール姿勢に入り、タイヤもグリップ偏重型ではないから、きれいに走らせるには、操作タイミングも普通のA4と少し変える必要がある。運転席からの眺めはA4そのまま、目線の高さも一般的なステーションワゴンと大差ない。そんなこともあって、箱根の山坂道でいきなり普通のA4から乗り換えて、一発目のカーブで操作タイミングがつかめず、思わず「おっとっと」となってしまったことを告白する。ステアリングの反応と利きは、普通のA4よりワンテンポ、マイルドだ。
各部の制御を一括可変する「アウディドライブセレクト」をイジっても、シャシー関連ではパワステのアシスト量が増減するだけなのだが、アシスト最小となる「ダイナミック」モードにすると、手に伝わる接地感がハッキリと濃厚になって、少なくとも山坂道では他モードより一体感が出て、如実に運転しやすくなるのは、地上高の高いオールロードクワトロ特有の現象で面白い。
また、ターンインでの動きは前記のように速やかなのだが、その先にはしっかりと踏ん張るので、絶対的なロール量は意外に小さい。しかも、ある程度の「おっとっと」までは、スロットルを踏み増すだけで、コーナリングが自然にまとまってくれるのは優秀なAWDのおかげだ。
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