シリーズハイブリッドの今昔、これからの展望——安藤眞の『テクノロジーのすべて』第41弾
- 2020/01/15
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安藤 眞
MFi160号における誤記のお詫びと、それにまつわるホンダe:HEV/i-MMD、そしてシリーズハイブリッドのこれまで、これからを考えてみる。
TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)
いやまいった。モーターファン・イラストレーテッド誌160号(2020年1月15日発売)で、誤記をやらかしてしまった。
該当箇所は、46ページの9行目。ホンダのi-DCDに関する記述だが、どうしたことか「シリーズ式」と書いてしまった。このシステムは、モーターで駆動軸をアシストする「パラレル式」が正解だ。文脈全体を読んでいただければ、単に言葉を取り違えただけだとわかっていただけると思うが、ともあれミスをしてしまったことをお詫びし、この場で訂正させていただきたい。
さて、ホンダは昨年の東京モーターショーでも発表しているとおり、今後はi-DCDの新規開発は行わず、ハイブリッドシステムはi-MMD改めe: HEVへと統一を図る。理由はMFI誌にも書いたとおり、エンジン主体でモーターアシストをするi-DCDでは、エンジンが最高効率点から外れる頻度が高まるため、モーター走行が主体のi-MMD(シリーズ式+直結クラッチ)にはエネルギー効率で及ばないからだ。
i-DCDは独創的なものだっただけに、無くなってしまうのは残念だが、物理法則が万人に平等である以上、効率を追求すればシステムがひとつに収斂して行くのはやむを得ない。三菱は最初からシリーズ式(+直結クラッチ)だし、1モーター2クラッチ(パラレル式)から始めた日産も、最近はe-Power(シリーズ式)に移行しつつある。
しかし歴史をひもとけば、先にダメ出しを喰らったのはシリーズ式だった。1990年前後のことだったと記憶するが、かつて某大型車メーカーがシリーズ式ハイブリッドシステムを搭載したバスを仕立てて実証試験をしてみたら、想定していたようにはエンジン定点運転ができず、燃費の改善は費用対効果にはまったく見合わないものだったのだ。
にもかかわらず、今やシリーズ式が主流になろうとしているのは、周辺技術の向上に追うところが大きい。当時は発電機もモーターも変換効率が80%台だったのに加え、バッテリーも充放電速度の低い鉛電池しかなかったため、負荷変動のほとんどを、エンジン負荷の調整で賄う必要があったのだ。
それが現在では、モーター巻き線の高密度化による小型高効率化や、インバーターを始めとする制御ユニット系の飛躍的な性能向上、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池など、鉛電池とは比較にならない充放電性能を持った二次電池の登場などにより、エンジンを高効率領域から外すことなく運用できる環境が整ったため、再び脚光が当たり始めた、というわけだ。
今後は恐らく、定点運転専用にピンポイントで高効率化を図ったエンジンと、シリーズ式ハイブリッドを組み合わせたシステムが出てくるに違いない。定点運転であるならば、VVTを始めとする可変機構は不要になり、コストは下げられるし、予混合圧縮着火(HCCI)も成立させやすくなる。
問題になるとすれば、エンジン回転数と加速感が同調しないということになりそうだが、下手に変動するよりも、「止まっているか、速度とは無関係に一定の騒音で回っているか」になったほうが、違和感は減るかも知れない。騒音の周波数が一定なら、エンジンやボディでの対策もピンポイントで済むし、オーディオを利用したノイズキャンセルも行いやすいと思うのだが、さて、どうなることか。
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