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内燃機関超基礎講座 | ホンダの面目躍如、バリアブルフローターボという解決策

  • 2020/10/14
  • Motor Fan illustrated編集部
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ターボラグ解消のための手段としてホンダは独自のターボチャージャーを考案、製品に搭載した。その名はバリアブルフローターボ。なんでも自分たちで解決するという彼ららしいシステムだ。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

アキュラRDXは、北米ではエントリーSUVに分類されるモデル。市場ではBMW X3、日産ムラーノあたりと競合することになる。
これだけのサイズと1780kgもの重量を持つクルマ、特に北米で販売されるモデルに必要十分なトルクを確保するには、3ℓ超級の6気筒エンジンを搭載するのがセオリー。しかしホンダは重量増を嫌い、軽自動車を除けば久々となる過給エンジンを採用。その意味では、ダウンサイジング目的の過給エンジンと判断していい。

K23A型。直列4気筒2300cc、179kW(240hp)/6000rpm、352.5Nm(35.9kgm)/4500rpm。(PHOTO:HONDA)

アルミブロックを持つK23A型エンジンに組み合わされたのは、「バリアブルフロー」と銘打つ新たな方式の可変容量式ターボチャージャーだ。

構造的には、やはりスクロール室を2分割している。ただしツインスクロールターボとは違い、分割は周方向だ。2つのスクロール室は完全に仕切られてはおらず、周の2/5程度がベーンによって構成されている。VGターボと違い、ベーンは固定式だ。また、インテーク部にはスクロール室に対する「フロー制御バルブ」が設けられている。

エンジン回転数が低い状態では、フロー制御バルブが閉じていて、排ガスは内側のスクロール室にだけ流れ込む。少ない排気流量に応じて小さなスクロール室を使うことで、排ガスの運動エネルギーを有効にタービンホイールへ導くことができる。
 エンジン回転数が高まってくるとフロー制御バルブが開き、外側のスクロール室にも排ガスが流れ、本来持っている容量をフルに使う。このような仕組みによって、低速時から全負荷までタービンを効率良く作動させるわけだ。

バリアブルフローターボのカットモデル。スクロール室とノズル部分を仕切るように配されたベーンがわかるだろうか。ベーン自体は固定式で、排気ガスの流れに沿って俯角が付けられている。端部の形状も微妙な角度変化が折り込まれている。これらの構造によって、排気流量が少ない状態でも運動エネルギーを効率良くタービンへ導いている。より簡便な構造でVGターボ類似の可変容量効果を実現したものと考えていい。

【左:排気流量大の状態】
フロー制御バルブが開いて外側のスクロール室へも排ガスが流れ込み、容量をフルに使う。RDXの場合、バルブは通常2000rpmで開き始め、2500rpmで全開に。それ以上はウェイストゲートを使う。最大過給圧は13.5psi(0.93bar)だ。

【右:排気流量少の状態】
フロー制御バルブが閉じ、排ガスはスクロール室の内周側にのみ流れ込む。内周側は径が小さいだけではなく、軸方向にも狭くなっており、少ない排気流量、イコール小さな運動エネルギーでも、効率良くタービンを作動させられる。

設計上のポイントは、ベーンの形状と配置に尽きるという。排ガスの流量が少ない時には外周方向へ漏れ出さず、大流量時にはスムーズに流れ込む構成は、CFD(Computational Fluid Dynamics)による3次元流体解析技術の進歩によって実現した新機軸なのである。

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