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内燃機関超基礎講座 | トヨタ8NR-FTSの実力を考察する:C-HR、カローラ、オーリスの1.2ℓ直噴ターボ

  • 2021/02/19
  • Motor Fan illustrated編集部
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国産ダウンサイジング過給エンジンの本命と目されるトヨタ8NR-FTS。1.2ℓターボで1.8ℓNAと同等の性能を出す───VWの1.2 TSIと同じコンセプトは、トヨタが勝負に出たと見るべきか。
(本記事は8NR-FTS登場時に執筆したものです)

欧州車が上から下までダウンサイズ過給一色に染まるなか、国産車はその流れを傍観しているように見える。日本のようにストップ&ゴーが多い道路環境では過給エンジンの特質が活かしにくく、HEVの方が効率が良くなる、という事情もある。マイルドハイブリッドであれば、モーターポン付けでも何とかなるわけで、モーターの制御技術を無視すれば、エンジンを作り直すより手間はかからない、ということもあるだろう。マツダの人見氏が言うように「とにかくターボは金がかかる」から、簡単には手は出せないと、思っているのかもしれない。

ハイブリッド展開を推し進めるトヨタだが、エンジンの数的にはコンベンショナルな内燃機関が多数を占める。そのなかでふたつの直噴ターボエンジンは、最も燃費のよいゾーンに位置し、従来型とHEVの隙間を埋める役割を担うことになる。

だが、HEVだってコストはかかるのだ。どう逆立ちしても、既存のNAエンジンと同じ値段で作れるわけがない。Dセグメント以上の価格帯であれば、コスト吸収はできるだろうが、これがCセグ以下の大衆車では大問題。ましてや海外市場で売るとなると、HEVは価格でもイメージでも中途半端の感を免れない。HEVと小排気量NAエンジンの間にある、大きな隙間を埋めるため、HEVの総本山ともいえるトヨタがついに動いた。2.0ℓ直噴ターボで十分技術検証を行ない、満を持して1.2ℓターボを送り出した。仮想敵はVW・1.2 TSIだ。

レクサスNXに搭載された2.0lの8AR-FTSに続く、トヨタ製ダウンサイジング直噴ターボエンジン第2弾。Cセグメントのオーリスにトップグレードエンジンとして採用された。従来の1.8ℓNA・2ZR-FAE(MT仕様)より最大出力は低いものの、トルクは上回り、JC08燃費は14.4km/ℓに対し19.4km/ℓを謳っている。
8NR-FTSと市場でぶつかる1.2ℓターボエンジンのスペックをまとめてみた。この排気量では3気筒が趨勢となっており、4気筒エンジンは少数派。そのなかでもVWの1.2 TSIとはボア×ストロークを含めほとんど同じといえる内容だ。違いはCVT対DCTというトランスミッション。オーリスでは思い切ったハイギヤード化で勝負する。

スペック的にもほとんど同一。違いはトランスミッションなのだが、ダウンサイジング過給は、カバレッジレシオを稼げないCVTと相性が悪いという短所を、トヨタの欧州市場での主力・オーリスでは極端なハイギヤード化(国内向けも同じギヤ比)で押し切ってきた。この方策は確かに欧州向きだが、日本の道路ではどうなのだろう。日本での価格付け(1.8 RS比13万円高)を見るに、まだ様子見の感は強いが、これが成功すれば他メーカーも一気にダウンサイズ過給にシフトする可能性もある。国産エンジンの明日を占う一大試金石が投じられた。

現在のガソリンエンジンに必要とされる、熱効率向上のための技術項目は、既存のエンジンに段階的に適用されており、8NR-FTSでは高圧縮比化の代わりに過給を使う。トヨタのエンジン技術の積み上げの結果生まれたエンジンということだろう。

トヨタの新系列小排気量エンジンであるNRシリーズは、HEV用エンジンで培った高容積比アトキンソンサイクルをはじめとする効率向上策が多く盛り込まれた系列で、すでにNA版1.3ℓの1NR-FKE、1.5ℓの2NR-FKEが、B~Cセグメント車に展開されている。8NR-FTSはその直噴ターボバージョンだが、過給技術に関しては、2.0ℓの8AR-FTSで採用されたコンセプトを継承している。

① 2.0ℓ・8AR-FTSから採用された可変バルタイ機構VVT-iW。従来型より可変範囲が拡大され、より積極的なアトキンソンサイクル運転が可能。中間ロック機構で始動性も確保。

② ターボエンジンの勘所はノッキングの抑制。ヘッド一体型の水冷エキマニ、ピストン冷却オイルジェットの制御機構、ウォータージャケットスペーサー等で10%以上出力を向上させている。

③ インタークーラーは水冷式。他社のものより冷却効率は高い、とトヨタでは喧伝する。設置位置はエンジン上部。エアフローの経路は短くなるが、水冷とはいえ冷え具合はどうなのだろう。

④ 直噴ターボでは強いタンブル流で空気と燃料を素早く、均質に混合させ、急速燃焼させる必要がある。ポート形状の工夫とタンブルを維持する燃焼室形状、マルチ燃料噴射でそれを実現。

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