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内燃機関超基礎講座 | トラックにもモーターを:ふそう・キャンターエコハイブリッド

  • 2021/05/25
  • Motor Fan illustrated編集部
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商業用トラックに求められるハイブリッドとは何か。燃費率の向上はもちろんだが、ドライバーのみならず、多くの人に喜ばれるさまざまなメリットを盛り沢山に積み込むことが考えられている。
TEXT:近田 茂(CHIKATA Shigeru)

「とにかく燃費を良くしたい」というのが、キャンターエコハイブリッド開発の原点だ。2006年7月の発売当初より先進のリチウムイオン電池(日立製346V)を搭載。35kW(200Nm)の高出力を誇る、ネオジムを使用した永久磁石式同期モーター/発電機が組み合わされている。

モーターは厚さ110mmというコンパクト設計が追求され、エンジン直後のクラッチとINOMAT-II(機械式自動トランスミッション:Intelligent & Innovative Mechanical Automatic Transmission)の間にレイアウトされているのが特徴だ。クランクケースやミッションも既存の物にマッチするように考え、余計なコストの増加も抑えられている。

■ 発進時:基本的にモーターのみ。エンジン回転をシンクロさせてクラッチミートされるので発進時にクラッチを滑らす半クラッチ制御が不要。
■ 通常時:エンジンで走行。モーターやバッテリーの重量が負担になるがレシオが高められて燃費率を向上。
■ 加速時:大きなトルクを瞬時に発揮できるモーターがエンジンを加勢する。
■ 減速時:クラッチを切り減速制動力をフルに回生に回す。その間アイドリングを続けるエンジンは補機駆動用に働く。

エンジンとモーターの間にクラッチを挟んだ理由は、モーターのみで発進させること。逆に減速時はそのエネルギーをフルに回生(発電)することで効率よくバッテリーに溜める(戻す)ことにある。市街地や高速などの通常走行ではエンジンが主役であり、ガソリンやCNGも研究されたが、燃焼効率上、直噴ターボディーゼルがベストだったという。

エンジンを使用する高速クルージングでは、ハイブリッドの恩恵はゼロに等しい。コンパクト軽量設計とはいえモーター+バッテリーの重量増は100kgを超えるので、マイナス面があるのも事実だ。GVW(総重量)との関係で積載重量がスポイルされる欠点も見逃せないだろう。

ただ、ハイブリッドにすれば、減速時に熱として捨てていたエネルギーを回収できるようになる。回生して次の発進や加速のアシストにモーターの動力を活用すれば、無駄は大きく削減できるのだ。エンジンの負担を軽減できれば、理想的な燃焼状況をキープしやすく、エミッションや燃費率に有利なことは言うまでもないことだ。

キャビンをチルトするとエンジンがむき出しになる。縦置きの3ℓ直噴ターボディーゼルはDOHCの直列4気筒で96kw(130ps)/3200rpmの出力を発揮する。直後にクラッチを挟み、35kWの永久磁石式薄型同期モーターが加えられた。
荷台下の左側に搭載された日立製リチウムイオン電池は346V。底面にインバーターを備える。モーターと共に冷却は水冷式。バッテリーは空冷方式だ。鉄製の箱に納められ、衝突時の安全性も考慮されている。右端は普通の鉛電池だ。

ただキャンターは商用車だけに、ユーザーによっては24時間フル稼動するケースもある。宅配やルートセールスでは毎日100回以上のエンジン始動・停止を繰り返すこともざらである。また最低でも10年30万kmの耐久性を考慮しなければならない。

バッテリーや制御系の性能を安定発揮するための冷却システムや、充放電マネージメントも徹底的に研究され、バッテリーは使い切らず、満充電も回避する制御具合に独自のノウハウがあるようだ。結果的に主要目標の達成だけではなく、クラッチやブレーキの耐久性向上、始動時騒音の低減、そしてスムーズな走りによる輸送品質の向上(積み荷を傷めない)にも貢献。さらに場合により補助金や優遇税制は70万円近くになることもある。運送会社にとっても環境意識の高い看板を背負える魅力は大きい。

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