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サスペンションとはなにか 第6回 サスペンションの決定的真相は「自由度の法則」だ:その5[フロントサスの定番・ストラット式サスペンションの自由度]

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(PHOTO:HONDA)

自由度の計算がちょっと難しいのは、フロントサスの定番であるストラット式サスペンションです。
TEXT:福野礼一郎(FUKUNO Reiichiro)

 第3回 サスペンションの決定的真相は「自由度の法則」だ:その2ではピンジョイントの拘束の計算方法、第4回 サスペンションの決定的真相は「自由度の法則」だ:その3では軸支持による拘束を学びました。

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 ピンジョイント部があれば「1ヶ所につき総自由度から3自由度を引く」、軸支持部があれば「1ヶ所につき総自由度から5自由度を引く」でしたね。

 サスを見たらまず自由度の計算です。ステップ・バイ・ステップでやってみましょう。

ストラット式サスペンションの自由度の計算

①サスの構成要素から総自由度を算出する
 タイヤ+ホイール+ハブで1要素ですが、ストラット式の場合、筒状のアウターシェルの中にダンパーを収納した部材=ストラットをハブに剛結しています。ここがストラット式サスの構造的な特徴で、これによって「アッパーアームが無限大のダブルウィッシュボーンとしてジオメトリー変化する」というユニークな機構です。

 ともかくストラット式サスの場合は、タイヤ+ホイール+ハブ+ストラット本体で合計1つと数えます。

 そのかわり、ストラットに入っているダンパーのピストンロッドを別要素の1つと考えます。ピストンロッド先端は車体にマウントされていて、ストラットユニットとは独立して作動できるからです。

 あとロワアーム。

 そしてタイロッド(フロントサスの場合)またはトーコントロールリンク(リヤサスの場合)もサスの構成要素の1と数えるんでしたよね(第4回 サスペンションの決定的真相は「自由度の法則」だ:その3)。

 4つの構成要素がそれぞれ6つの自由度を持っていますから、4×6=24。
 サスが持っている自由度は24です。
構成要素:4(総自由度24)

②ピン支持部分では「3自由度」を引く
 タイロッド(トーコントロールリンク)の両端はピンジョイント(図の黄色い丸印)です。ロワアームのハブ取り付け部もピンジョイント。図のようにストラットの自由度計算ではピストンロッドの頂部もピンジョイントと考えます。
 これでピンジョイント部は合計4ヶ所。ピン支持部分では「3自由度」を引くんでした。
 総自由度から3×4=12を引けば、残りの自由度は12です。
構成要素:4(総自由度24)-ピン拘束「-3」×4ヶ所 残り自由度12

③軸支持部分では「5自由度」を引く
 ロワアームのボディ側は軸支持です。軸支持はここ1ヶ所だけです。軸支持部分では「5自由度」を引くんでした。
 総自由度から5を引きます。
構成要素:4(総自由度24)-ピン拘束「-3」×3ヶ所 軸拘束「-5」×1ヶ所 残り自由度7

④リンクの回転運動を引く
 最後のおまけの「軸回転無視」。ここではタイロッド(トーコントロールリンク)の両端がピン支持ですから、リンクそのものがくるくる自転できますが、これはサスの作動に関係ありません。
 最後に忘れずこの自由度を無視します=総自由度から引きます。

 あともうひとつ、ストラットの中に入っているダンパーのピストンロッド。これがくるくる自転できる自由度もサスの動きには関係ありませんね。だからこれも総自由度から引きます。ストラット式ではここをいつも忘れるんです。
 軸回転のマイナス分は合計2です。
 これで残自由度は5。
 まだ5も残ってるんですよ。これをどうやって残自由度1まで減らすのか。。。
構成要素:4(総自由度24)-ピン拘束「-3」×3ヶ所 軸拘束「-5」×1ヶ所 軸回転「-2」 残り自由度5

⑤ストラットのロッドは独立ユニット、下部は「4自由度」を拘束する
 要素1と数えたあのピストンロッド部は、伸縮しつつ、軸回りの回転もできます。
 つまり6自由度のうち2自由度は維持しているわけです。逆に言えばストラットによって4自由度を拘束されているということですね。
 なので総自由度から4自由度を引きます。ここがストラット式の自由度の計算方法の肝です。

 すると、確かに残自由度は1になって、独立懸架サスが無事成立しました!

まとめ

ストラット式サスペンションの自由度
構成要素:4(総自由度24)ピン拘束「-3」×3ヶ所 軸拘束「-5」×1ヶ所 軸回転「-2」ストラット拘束「-4」 残自由度「1」

 フロントサスではタイロッドもサスの構成要素のリンクとして考えるのですが、もしストラット式の自由度計算でタイロッドを無視してみたらどうなるでしょうか。

 構成要素は3(総自由度18)になり、ここからピン拘束-3を2ヶ所、軸拘束-5を1ヶ所、軸回転を-1、ストラット拘束を-4すると、残自由度は2になります、つまりサスとして成立しません。タイヤがキングピン回り、あるいはステア軸回りにぐらぐらして、まともに走らないでしょう。
 だからストラット式サスでは、フロントならタイロッド、リヤではトーコントロールリンクというトー方向を位置決めするリンクの存在が必須なのです。

 自由度の計算ができないとサスは設計できないですね。

応用編:2種類のストラット式リヤサス

パラレルリンク+ラジアスロッド式ストラットの自由度
構成要素:4(総自由度24) -ピン拘束「-3」×7ヶ所 軸拘束「-5」×2ヶ所 軸回転「-4」 ストラット拘束「-4」 残自由度「1」

 パラレルリンク+ラジアスロッド式ストラットは、70~80年代のFF車、ランチアやフィアット、トヨタ車などのリヤサスによく使われていました。
 並行のリンクとトレーリングリンク(呼び方はトレーリングアームでもラジアスロッドでもOK)でロワを構成したストラット式です。

 この形式では構成要素が1つ増えて5=総自由度30です。ピン指示が7ヶ所でマイナス21、軸支持はなし、軸回転のマイナスはリンク3本+ピストンロッドの4本分。そしてストラット拘束が-4。
 残自由度1でサス成立しています。

台形ロワアーム式ストラットの自由度
構成要素:3(総自由度18) -ピン拘束「-3」×1ヶ所 軸拘束「-5」×2ヶ所 軸回転「-1」 ストラット拘束「-4」 残自由度「0」
サス成立の条件①アームのボディ側とハブ側の軸が平行、②台形アームの回転軸とストラット軸が直交、この①②がそろっているとき。

 台形ロワアーム式ストラットはサスペンションの決定的真相は「自由度の法則」だ:その4に登場した初代S30型フェアレディZのリヤサスです。念のためもう一回上げておきます。三菱スタリオンも基本的にはこの形式です。

第5回 サスペンションの決定的真相は「自由度の法則」だ:その4[過拘束サスペンションの怪]

自由度の計算をしていくとゼロ以下という数字になってしまうサスペンション。これは一体どういうことなのでしょうか。 TEXT...

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 構成要素は3、ピン支持はピストンロッドの1ヶ所、軸支持がロワアーム2ヶ所、軸回転のマイナスはピストンロッド1ヶ所、そしてストラット拘束4自由度、残自由度は0です。

 サスペンションの決定的真相は「自由度の法則」だ:その4で説明した通り、これは過拘束サスペンションで、「アームのボディ側とハブ側の軸が平行」「台形アームの回転軸とストラット軸が直交していること」の2つの条件を同時に満たしているときだけ、サスとして成立します。

① 自由度の計算:サスの構成部材がもつすべての自由度から、拘束した自由度と無用な自由度を引く
② ストラット本体はタイヤと一体と考えカウントするが、ピストンロッドは別に要素1と考える
③ ピストンロッドの車体側マウントはピン支持と考える
④ ストラットはピストンロッドの自由度を4つ拘束し、2つ許容していると考える

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