レクサスUXの「ダイレクトシフトCVT」──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第7弾
- 2018/12/29
-
安藤 眞
レクサスUXに積まれて日本で登場を果たしたダイレクトシフトCVT。連続無断可変レシオが美点のCVTにおいてたびたび指摘されてきた伝達効率の悪さの回復と変速比幅の拡大を両立させる技術として注目されている。乗車時のインプレッションと合わせ、機構と効果を考察してみる。
TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)
現在のトランスミッション技術のトレンドと言えば「多段化」だ。ZFが2011年に9速を実用化したと思ったら、トヨタは2016年に10速で対抗。とうとうギヤ段数は二桁に乗った。
このまま多段化が進めば、最終的には無段化=CVTに収斂するのか?といえば、そうはならないのは、目的は段数を増やすことではなく、レシオカバレッジ(最ローギヤと最ハイギヤの比率。レシオスプレッド比とも言う)を広げることだから。発進時の駆動力を確保しつつ、より高速域までエンジンの高効率領域を使えるようにするには、レシオカバレッジは広いほうが良く、その間を無理なく繋げようとすれば、必然的に段数が増える。
CVTが出始めたころは、コンベンショナルなATよりもレシオカバレッジが広く取れることがメリットのひとつとされてきたが、「7」に達した当たりから、少し雲行きが変わってきた。CVTでレシオカバレッジを広げるには、プーリーのサイズを大きくして“巻きかけ半径”の差を大きくする必要があるのだが、同じ大きさのプーリーを並列に並べる構造上、プーリーを大きくすれば外形寸法が大きくなる。しかもCVTは、巻きかけ半径の差が大きくなるほど、伝達効率が低下する。
一方で、遊星歯車はひと組で3種類のギヤ比が得られるから、計算上は2組で9速、3組で27速の組み合わせが得られる(理論的には2種の減速、2種の増速、逆転の増速と減速)。実際にはZFもベンツもトヨタも3組使用している。配列は軸方向に積み増す形になるため、長手方向には大きくなるが、RWD車なら長手方向には余裕があるから、エンジン縦置きの大型セダンは軒並み遊星歯車式ATで多段化を競っている。
そこで、CVTのレシオカバレッジの限界を引き上げるために最初に出てきたアイデアが、JATCOが開発した副変速機付きCVTである。プーリーによる変速機構と遊星歯車式変速機構を組み合わせることで、レシオカバレッジを約7.4までワイド化することに成功。理屈は自転車の前変速機と同じで、ふたつの変速機構が直列に並べられている。感心するのは、新たに遊星歯車機構を追加したのではなく、前後進切り替え用に付いていた遊星歯車の解放/拘束関係を変えることで成立させたことだ。
さらに、別のアプローチからレシオカバレッジの拡大を試みたのが、トヨタが今年(18年)に発表した「ダイレクトシフトCVT」。北米向けのカローラに搭載された後、12月にレクサスUXに搭載されて日本市場にもお目見えとなった。
構造的には、プーリーによる変速機構と並列してハス歯歯車による伝達経路を設け、これを発進〜低速用に使用するのが特徴。2速相当から上をCVTでカバーすることによって、レシオカバレッジを約7.6まで広げている。いわば、平行軸式ATとCVTの「パラレル式ハイブリッドAT」だ。
インプットおよびアウトプットシャフトそれぞれに、ドライブ/ドリブンギヤを設けておき、間にインターミディエイトシャフトを加えて1速の伝達経路を形成。インプットシャフトとドライブギヤ間、およびセカンダリーシャフトとセカンダリープーリー間に湿式多板クラッチを持っており、これをハンドオーバー制御することで、トルクフローを切り替える。
インプットシャフトとプライマリープーリーの間に解放機構はないため、ギヤ伝達経路を使用している際にもプライマリープーリー〜ベルト〜セカンダリープーリーは回転するが、セカンダリープーリーとシャフトの拘束が解かれるため、そこでトルクフローが途切れる。プライマリープーリー側にクラッチを付けて、CVTの伝達経路を止めてしまったほうが損失は少なくなるが、ここを回しておかないと、ハンドオーバーする際に、いろいろ問題が出てきそうだ。
僕はこのトランスミッションを初めて見たとき、プーリーとベルトのコンパクト化を図るのが主目的なのかと思った。負荷が最大となる発進時をギヤに負担させれば、ベルトやプーリーの強度は落とせるし、滑りのリスクも減るから、ベルト挟圧を生み出す油圧も下げられ、機械損失も下げられるからだ。
取材したエンジニア氏によれば、「そういう効果も確かにあります」とのことだが、主目的はレシオカバレッジの拡大だという。それでもプーリーの小径化やベルト幅の縮小で駆動系の慣性を40%減らせたというから、効果は決して小さくない。ベルト狭角を11度から9度に狭めたのは、ギヤ伝達による負荷低減と関係あるのか?と問えば、「関係ありません」とのこと。挟み角を狭めれば、同じプーリーの変位幅でレシオの変化量が大きくなり、変速応答が速くなる反面、制御がシビアになる理屈。その制御技術に進展があったのが、ベルト挟角を狭くできた理由のようだ。
実際に乗ってみると、おおむね12〜13km/hあたりでギヤ伝達からベルト伝達に切り替わっている模様。レシオは3.377から2.236へとスキップするが、変速ショックも感じることなく、タコメーターの針の動きで変速したことを確認するのみだ。
燃費をハイブリッド仕様と較べたところ、概ね2割落ちという感触だったから「約6%の燃費向上」という公表値に偽りはなさそう。今後は2ℓ以下の横置きエンジン用に拡大展開されそうだが、国内向けカローラスポーツへの採用が見送られたのは、エンジン締結面形状の問題か、はたまたコストが高いのか?
|
|
自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
自動車業界 特選求人情報|Motor-FanTechキャリア
日系トルクコンバータ、トランスミッション部品専門メーカー
技能職
年収
400万円〜600万円
勤務地 福井県越前市
この求人を詳しく見る
日産車のエンジンやマニュアルトランスミッションを製造する日産グループの中核企業
生産技術
年収
400万円〜700万円
勤務地 三重県松阪市松阪工場へ配属予定です。
この求人を詳しく見る
日系トルクコンバータ、トランスミッション部品専門メーカー 技能職
年収 | 400万円〜600万円 |
---|---|
勤務地 | 福井県越前市 |
日産車のエンジンやマニュアルトランスミッションを製造する日産グループの中核企業 生産技術
年収 | 400万円〜700万円 |
---|---|
勤務地 | 三重県松阪市松阪工場へ配属予定です。 |
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費が劇...
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形往復...
日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に洗練...
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこそ光...
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4とリフ...
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計ってみた...
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ
フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chapter2...
マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善手法...
マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエンジン...
ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態
林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えてくだ...
マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレインだ...
3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説
3分でわかる! スーパーカブのエンジンが壊れない理由……のひとつ...
3分でわかる! マツダのSKYACTIV-X(スカイアクティブ-X)ってな...
スーパーカブとクロスカブの運転が楽しいのは自動遠心クラッチ付...
ホンダCB1100の並列4気筒にはなぜV8のようなドロドロ感があるのか...
ホンダ・シビック タイプRの謎、4気筒なのになぜマフラーが3本?
3分でわかる!アシスト&スリッパークラッチって何? 250ccからリ...
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報
レクサス UX
UX250h Fスポーツエモーショナルエクスプローラ ナビ&TV 衝突被害軽減システム ETC バックカメラ スマートキー アイドリングストップ ミュージックプレイヤー接続可 横滑り防止機能 LEDヘッドランプ サンルーフ ワンオーナー キーレス ABS
中古価格 500.1万円
レクサス UX
UX200 バージョンC レクサス認定中古車(CPO)メーカーオプション:パノラミックビューモニター+ブラインドスポットモニタ-+パーキングサポートブレーキ、デジタルキー ディーラーオプション:ユピテルドライブレコーダー
中古価格 380.5万円
レクサス UX
UX200 Fスポーツエモーショナルエクスプローラ レクサスセーフティシステム・オレンジキャリパー・サンルーフ・Pゲート・BSM・HUD・ステアリングヒーター・前席シートヒーター・前席シートエアコン・全方位・ディスプレイオーディオ・ETC2.0
中古価格 446万円
レクサス UX
UX250h バージョンC ナビTV レーダークルーズコントロール ブラインドスポットモニター ヘッドアップディスプレイ パワーシート シートヒーター パノラミックビューモニター ETC2.0 ステアリングヒーター カードキー
中古価格 353.8万円
レクサス UX
UX250h アーバンエレガンス 純正ナビ 全周囲カメラ プリクラッシュセーフティー レーダークルーズコントロール ブラインドスポットモニター パワーシート パワーバックドア シートヒーター 純正18インチアルミホイール LEDヘッド
中古価格 363.8万円
レクサス UX
UX250h Fスポーツ サンルーフ パワーバックドア 3眼LEDヘッドライト 純正18インチAW ブラック×レッドレザーシート パワーシート シートヒーター ステアリングヒーター クルーズコントロール フルセグTV Bカメラ
中古価格 372万円