内燃機関超基礎講座 | いすゞ・エルガハイブリッド(Gen.1):路線バスを電動化する
- 2021/05/13
- Motor Fan illustrated編集部
乗用車よりも早い時期からハイブリッド技術を応用した車両の導入が進められてきた路線バス。 いすゞはパラレル式のハイブリッドシステムで、路線バスを電動化した。
TEXT:高橋一平(TAKAHASHI Ippey)
*本記事は2012年9月に執筆したものです
街中でのストップ&ゴーを繰り返す路線バスは、大型車両のなかでもっともハイブリッド化に適したカテゴリーのひとつ。近年華々しく展開される乗用車のハイブリッド化の影に隠れている感があるが、実は乗用車よりも早い時期からハイブリッド化が進められており、現在乗用車用として主流となっている電気式ハイブリッド(HEV:Hybrid Electric Vehicle)だけでなく、減速時のエネルギーをガス圧力として蓄え、この圧力で油圧モーターを駆動、発進時にアシスト力を得るという「蓄圧式」も使われてきた。
ここに紹介するいすゞ・エルガハイブリッドは電気式ハイブリッドシステムを採用するハイブリッドバス。興味深いのは、バスの製造において同社と協業関係にある日野が古くから電気式ハイブリッドを採用した路線バスを手掛けているものの、電気式ハイブリッドバスについては日野からいすゞへの供給は行なわれておらず、エルガハイブリッドの登場により、両社それぞれが独自開発の電気式ハイブリッドを持つに至ったという点である。
これには、あえて競合し合うことで、選択的により良いシステムを育て上げていこうという狙いがあるとのこと。実際、両社のそれは同じ電気式ハイブリッドシステムではあるものの、それぞれで異なる構成へのトライを行なっている。ハイブリッドシステムを未だ発展途上の技術と捉えたうえでのアプローチだ。
エンジンとトランスミッションの間にモーターを備えるパラレル式のハイブリッドシステムを採用。クラッチをエンジン直後のモーターとの間に配置することで、エンジンを駆動系から完全に切り離し、モーター動力のみで走行することも可能としている。クラッチからモーター、トランスミッションに加えバッテリーやインバーターなどで構成されるハイブリッドシステムはイートン社製。主にトラック用に開発されたシステムということで、制御系を中心に路線バス用としていすゞ独自のチューニングが施されている。トランスミッションには6速のAMT(Automated Manual Transmission)が用いられているが、AMTの元祖ともいえる、いすゞのNAVIシステムとはまったく異なるものとのこと。
ちなみに、路線バス用のハイブリッドシステムにおける両社の大きな違いは、クラッチの位置。エンジンとトランスミッションの間にモーターを置くパラレル式ハイブリッドという点では共通だが、日野がモーターとトランスミッションの間にクラッチを備えるのに対し、いすゞではエンジンとモーターの間にクラッチをレイアウト。これによりエルガハイブリッドではエンジンを切り離したモーター走行が可能となっており、エンジンが切り離せることで回生時にも高い効率を確保することにも成功している。
【いすゞ・エルガハイブリッド】
エンジン形式:直列6気筒OHC直接噴射式ディーゼルエンジン
型式:6HK1-TCC
ボア×ストローク:115×125mm
総排気量:7790cc
圧縮比:17.5
排ガス浄化装置:尿素SCR、DPD
最高出力:191kW/2400rpm
最大トルク:761Nm/1450-2200rpm
モーター型式:HB1
最高出力:44kW
主電池種類:リチウムイオン電池
主電池総電圧:346V
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