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連載コラム「酷道を奔り、険道を往く」Vol.7 房総半島は素堀りトンネルの宝庫!【房総トンネル紀行(酷道険道:千葉県)】スズキ・ハスラー

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人の手で掘り進めたものなのに、どこか自然の力で生み出されたようにも見える。
露わな岩肌には地層が見え隠れし、ところどころ光が差していたり、苔生していたり。
人工と言っても、天然と言っても、おそらくどちらでも間違いではない。
素堀りトンネルを探し求め、スズキ・ハスラーで房総半島を駆け巡る。

TEXT:小泉建治(KOIZUMI Kenji) PHOTO:平野 陽(HIRANO Akio)

なぜこれほど昔ながらの姿で残っているのか?

 房総半島が素堀りトンネル天国であることは意外と知られていない。東京都のとなりだし、まさかこんなに都心から近いところに前世紀の遺物みたいな素堀りトンネルがあるなんて思ってもみなかった、というのは普通の感覚だ。

 実際、今回の取材の後に写真を社内の何人かに見せたところ、千葉県在住の人間を含め、これらの素堀りトンネルが千葉にあることを言い当てた者はひとりもいなかった。

 だが、千葉県には素堀りトンネルが本当に多い。同じように東京都に接している埼玉県や神奈川県など比べものにならず、全国的に見たって千葉県が圧倒的に多いのだ。なぜか? そんなの知りません。だからこそ行ってみるわけだ。行けば理由がわかるかもしれないじゃないか。

 そんなわけでスズキ・ハスラーを連れ出し、房総半島を目指したのである。目指したっていったって、アクアラインを渡ればすぐだ。海ほたるパーキングエリアでカメラマンと待ち合わせ、まるでかずさアカデミアパークでやっているメディア向け試乗会に行くような気軽な感じで出発である。

「今日は房総半島にある素堀りトンネルを巡るんです」と筆者。「ほう、房総半島にそんなもんあるんすか。じゃあ、鋸山の奥の方まで行くんだな」とカメラマン。鋸山とは、房総半島の南端に近い場所にある険しい山のことで、確かにあの辺りに行けば素堀りトンネルのひとつやふたつありそうだ。だが違うんだな。「いや、木更津東インターチェンジで降りますよ」「は?」

 木更津東といったら、東京都民にとってもそこそこ身近な場所だろう。ギリギリ「都市部」と言えなくもない範囲である。

雰囲気満点の月崎トンネル

素堀りトンネルの多くは江戸時代から昭和初期にかけて、つまりモータリゼーションが本格的に始まる前に作られたため、自動車の幅を考慮していない。よって軽自動車でも圧迫感を覚える場面が多い。
 そんな木更津東インターチェンジから国道410号線、県道160号線、そして県道32号線を経て、小湊鐵道の月崎駅を目指す。インターチェンジから時間にしてほんの20分ほどだろうか。駅の手前で左折し、突如現れる狭く荒れた古めかしい旧道を西に進めば、最初の目的地である月崎トンネルに到着する。

 もう、のっけから雰囲気満点だ。上のハスラーのバックショットの写真がその月崎トンネルであるが、周囲は草木が生い茂り、トンネルの内側は苔で覆われ、そして途中で一瞬だけ天井が抜けて陽光が差すあたりがなんとも風情がある。

 素堀りトンネルの多くは江戸時代から昭和初期にかけて作られたそうだが、まさにこの月崎トンネルは100年くらい前にタイムトラベルしたかのような気分を味わわせてくれる。

 この月崎トンネルを抜けてしばらく走るとまたすぐに再び素堀りトンネルが現れ、そしてその先で行き止まりとなる。パソコン版では左の、モバイル版では上の写真がその場所だ。
 
 細い登山道のようなものの入り口はあるのだが、とてもクルマが通れるような道ではないし、ほかにはとくに何もない。神社とかご神木とか湧き水とかも見当たらない。唐突に道が終わるのだ。

 ここでひとつの疑問が浮かび上がる。「ならば、なぜわざわざトンネルを掘ったのか?」それも二本である。

 おそらくトンネルを掘るのは今よりも大変な作業だったはずだ。確かにこの場所が登山道のスタート地点になってはいるけれど、人が歩けるくらいの幅でいいのなら、もっと手前から登山道にしておいて、わざわざ道幅のあるトンネルを掘らずに迂回すればいいわけだし、登ったってそんなに大変な山でもない。

 この行き止まりのスペースに何かあったに違いないのだが、本当にまったく何の痕跡も見つけられないのである。だがこうした謎は、実は月崎トンネルにとどまらなかった。この後に訪れるほとんどの素堀りトンネルにおいて、同じような疑問を抱くことになるのである。

将棋の駒トンネルは突然に

 月崎駅方面にいったん戻り、県道172号線を東に左折し、小湊鐵道の踏切を越えてすぐに左折すると、すぐに、本当にすぐに将棋の駒のような形をしたトンネルが現れる。県道172号線からも見えるはずだが、パッと見た限りではクルマで通っていい道とは思えないだろう。それくらい異物感がある。

 では、とにかく進んでみよう。幅は軽自動車一台でピッタリちょうどいいという感じで、Bセグメントあたりが限界かもしれない。いずれにせよクルマ同士のすれ違いはまず不可能だ。天井も低いから、軽自動車でもハイト系ワゴンだとけっこうな圧迫感を覚えるだろう。酷道険道で無敵を誇るジムニーでも車高を上げた本気仕様だったりすると天井につっかえてしまうかも知れない。

 それにしても、なぜにこの形なのか? 横長よりも縦長のほうが強度面で有利なのはわかるが、楕円ではなく将棋の駒のような五角形にしたのはどうして? しかもこのトンネル、南側は五角形なのだけれど、3/5くらい進むとフツーに楕円になるのだ。

 途中で面倒くさくなって楕円に変更したのか。それともどこかのタイミングで北側が崩れ、修復された際に楕円にされたのか。軽く調べてみたけれど、結局わからずじまい。思うに、将棋の駒の形というのはなんとなく美しいし、この五角形の最大の理由は、意外にもデザイン性だったりするのかもしれない。

県道172号線を東に走り、小湊鐵道の踏切を過ぎてすぐの場所にある、将棋の駒のような形をしたトンネル。
県道側から見た入口。あまりに唐突に現れる。どうしてこんな形になったのだろうか?

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