ティグアンTDIは余りに高い価格設定が最大のネック VWティグアン&ゴルフトゥーランTDI試乗…TSI以上の加速力に不満を抱こうはずもない。だがボディ・シャシーを含めNVHは大きめ
- 2018/10/13
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遠藤正賢
2月14日のDセグメントセダン&ワゴン「パサート」「パサートヴァリアント」に続き、CセグメントSUV「ティグアン」に8月29日、7人乗りコンパクトミニバン「ゴルフトゥーラン」に10月1日、待望のクリーンディーゼル「TDI」搭載モデルが追加された。荒れた路面が多い山中湖周辺で見せた、その走りとは…? 河口湖周辺の一般道で試乗した。
PHOTO&REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
ついに日本導入!VWパサートTDIが搭載する新世代2.0TDI(EA288型)とはどんなディーゼルエンジンか?(2月15日更新)
VWパサートTDIが日本上陸! ディーゼル車日本導入は20年ぶり
思わず声をあげたくなる加速力。骨太な印象のVWパサートヴァリアントTDIに試乗
パサートはクルマとしての完成度は高いのだが、名だたる高級車ブランドの主力車種がひしめくDセグメントにおいて、フォルクスワーゲンという名前の通り「大衆車」ブランドのモデルであるがゆえに存在感を高められず、2月にTDIを投入しても依然低空飛行が続いており、ディーゼル比率も1割強に過ぎないという。
それ以前に、TDI投入そのものは、本来ならば2016年にも実現するはずだったのだが、件のEA189型エンジン排ガス不正問題発覚によって中止の憂き目に。その間に競合他社は続々とディーゼル車の設定を拡大し、2017年には日本の乗用車全体で5.3%、外国メーカー生産車では21.9%、輸入CセグメントSUVでは23%、同じくミニバンでは34%をディーゼル車が占めるようになった。これが競合車との争いに敗れ販売台数を落とし、2015年からはメルセデス・ベンツ、2016年からはBMWの後塵をも拝する一因となっている。

ティグアンおよびゴルフトゥーランTDIに搭載されるEA288型・2L直4直噴ディーゼルターボエンジンは、DPFやSCR、高圧/低圧EGRなどを標準装備しポスト新長期規制をクリア。可動式ガイドベーン付きターボを採用するといったシステム構成こそパサート用と変わりはないものの、最高出力は190ps/3500-4000rpmから150ps/3500-4000rpmに、最大トルクも40.8kgm/1900-3300rpmから34.7kgm/1750-3000rpmへと、いわばデチューンされた仕様が日本仕様に設定された。
これに組み合わされるのは、ティグアンが7速、ゴルフトゥーランが6速の、いずれも湿式のDSG(デュアルクラッチトランスミッション)。駆動方式は、ゴルフトゥーランがFFのみ、ティグアンは第5世代ハルデックスカップリングを用いた電子制御4WD「4MOTION」のみ設定される。
現行ティグアンの日本仕様にはこれまでFF車しか設定がなく、また従来からのガソリン車は依然としてFF車のみのため、低μ路を走る機会の多いユーザーにとっては念願の4WD追加と言えるだろう。
さらにティグアンTDI 4MOTIONは、4リンク式リヤサスペンションの設計もFF車と異なっている。具体的にはトレーリングリンクが20mm延長され、それに合わせてサブフレームの形状が変更されているほか、ホイールベアリングもより強度の高いものに改められている。
最初に試乗したのはゴルフトゥーランTDIの上級グレード「ハイライン」だったが、150ps/5000-6000rpm、25.5kgm/1500-3500rpmを発するEA211型1.4L直4直噴ガソリンターボ「TSI」エンジンでも加速性能に不足はないというのに、それをトルクで9.2kgm上回るTDIに、車重が70kg増え1630kgになっていようと不満など抱くはずもない。
その一方、DSGがもたらす変速フィールは、MTを由来とするそのメカニズムに期待されるダイレクト感に満ちたものとはほど遠く、半クラッチの時間が長く変速そのものの時間も長い、MT初心者のような感触に終始する。出来の悪いCVTのMTモード、あるいはステップ変速モードに近いラバーバンドフィール、と言い換えてもいい。
多くの人や荷物をのせた時に配慮したセッティングという可能性も否定できないが、従来の素早い変速制御でも同乗していて不快に感じることはないだけに、少なくともドライバーにとって好ましくないこの変速フィールは、一刻も早く改善してほしいポイントだ。
また、215/55R17 94Vのコンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト5という、エアボリュームがしっかり確保されたコンフォートタイヤを装着するにもかかわらず、車重の増加に合わせてサスペンションを硬くセッティングしているためか、粗粒路でのNVHが大きかったのも気になる所。
今回は荒れた路面の多い河口湖周辺を常時60km/h以下で走行したが、街乗りメインのミニバンでありながら低速域の快適性が低いのには首を傾げざるを得ない。
気を取り直してティグアンTDI 4MOTIONに乗り換える。今回試乗したのは、専用のエアロパーツを身にまとうスポーティグレード「R-Line」。オプションのレザーシートと、255/40R20 101Vのコンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5、電子制御ダンパーの減衰力とEPSの特性を任意に変更できる「DCC」を装着していた。
車重はFFガソリン車の「TSI R-Line」に対し190kgも増加し1730kgに達しているが、7速となったDSGの助けもあって、それでも加速性能は充分以上。ただし前述のDSGとは思えない変速フィールに違いは見られなかった。
なお、ゴルフトゥーランで気になったNVHは、ティグアンは明らかに1ランク以上小さい。とても同じCセグメントのMQBプラットフォームを採用するモデルで、しかもミニバン以上にオンロードでの運動性能や快適性の面では不利なSUVとは思えないほど。
しかしそれでも粗粒路での突き上げは「コンフォート」以外の走行モードでは少なくなく、一方で「コンフォート」を選んでもハンドリング面でのマイナスは最小限。別の機会に高速道路で試乗した際もその印象は変わらなかったため、DCC装着車を購入しても使用するのは常時「コンフォート」ということになりそうだ。
また、窓を閉め切っているとさほど聞こえないディーゼル特有のガラガラ音は、ひとたび窓を開けると思いのほか盛大で、特に冷間始動直後は大きい。直接のライバルであるマツダCX-5の「SKYACTIV-D」、それも最新バージョンが窓を開けてもほとんど聞こえないのとは、明確な差が感じられた。
そして、ティグアンの最大の欠点は、その価格設定にある。同等レベルの性能と装備内容を持つ仕様同士でCX-5と比較すると、ティグアンはガソリン車で約170万円、ディーゼル車で約200万円もの価格差がある。
なお、今回試乗したTDI 4MOTION R-Lineは、車両本体価格524万円に、レザーシートパッケージ31万3200円、DCCパッケージ21万6000円、有償オプションカラー6万4800円、フロアマット(プレミアムクリーン)5万9400円を装着しており、総計589万3400円に達していた。
ティグアンの完成度も決して低くはない、いやむしろ非常に高いのだが、内外装の質感やエンジンの性能、静粛性ではCX-5がそのティグアンを上回っている。しかもCX-5は、フル装備の仕様にしても400万円前後で収まってしまう。
これを、CX-5が安すぎると取るべきか、ティグアンが高すぎると考えるべきか、あるいはその両方なのか、悩ましい所ではあるが、いずれにせよティグアンTDIが発売直後の現時点ですでに大きな販売上のハンデを背負っていることだけは間違いない。
【Specifications】
<フォルクスワーゲン・ティグアンTDI 4MOTION R-Line(F-AWD・7DCT)>
全長×全幅×全高:4500×1860×1675mm ホイールベース:2675mm 車両重量:1730kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ディーゼルターボ 排気量:1968cc ボア×ストローク:81.0×95.5mm 圧縮比:16.2 最高出力:110kW(150ps)/3500-4000rpm 最大トルク:340Nm(34.7kgm)/1750-3000rpm JC08モード燃費:17.2km/L 車両価格:524万円
<フォルクスワーゲン・ゴルフトゥーランTDIハイライン(FF・6DCT)>
全長×全幅×全高:4535×1830×1670mm ホイールベース:2785mm 車両重量:1630kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ディーゼルターボ 排気量:1968cc ボア×ストローク:81.0×95.5mm 圧縮比:16.2 最高出力:110kW(150ps)/3500-4000rpm 最大トルク:340Nm(34.7kgm)/1750-3000rpm JC08モード燃費:19.3km/L 車両価格:407万9000円
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