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4G63ターボ4駆の衝撃度 ランエボの偉大なる先人「三菱ギャランVR-4」賛歌

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ランエボ誕生への道を切り拓いた偉大なる初代、ラグジュアリーな方向へと舵が切られた二代目、フルパワーを武器にスポーツ性を取り戻した三代目。車格と搭載エンジンを変えながら進化を続けたギャランVR-4の歴代モデルを紹介する。

TEXT&PHOTO●廣嶋健太郎(HIROSHIMA Kentaro)

初代[E39A]

SPECIFICATIONS
車両型式:E39A
全長×全幅×全高:4560×1695×1440mm
ホイールベース:2600mm
トレッド(F/R):1460/1450mm
車両重量:1360kg
エンジン型式:4G63
エンジン形式:直4DOHC+ターボ
排気量:1997cc
圧縮比:7.8:1
最高出力:205ps/6000rpm
最大トルク:30.0kgm/3000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR195/60R15

ランエボに託したこと。称えられるべきはその功績だ。

 ハイパワー競争の激化で終焉を迎えたグループBに代わり、1987年から改造範囲が大幅に制限されたグループAで争うことになったWRC。カタチこそ市販車だけど中身は別物…という従来の手法が通用しなくなり、ベース車のポテンシャルが勝負の行方を左右する時代が訪れた。勝利のためのマストアイテムは2ℓターボエンジンとフルタイム4WDシステム。そんなグループA時代のWRCを戦うべく、ミツビシから放たれたのが87年12月デビューの初代ギャランVR-4だ。

 エンジンは、2ℓ直4SOHCのG63B型をベースに。4バルブDOHC化を図り、三菱製TD05Hタービンを組み合わせたターボ仕様の4G63型を初めて搭載。駆動方式はビスカスカップリング式センターデフを持つフルタイム4WDとされ、4WSやABSなど当時の最新デバイスも満載していた。

 同時に限定100台で競技ユーザーに向けたVR-4Rが登場。翌88年にはパワーウインドウやABSなどの装備を省き、エアコンをオプション設定とすることで軽量化したVR-4RSも発売された。尚、車両型式は4WS付きがE39A、4WSなしがE38Aとなる。当初205psだった4G63ターボのスペックは、89年10月のマイナーチェンジで220psに向上。それまでミッションは5速MTのみだったけど、4速ATが用意されたのもこの時だ。さらに、翌90年10月に一部改良を実施。タービンの仕様変更に始まり、インタークーラーの大型化やインテーク&マフラーメインパイプ径のアップ、ボンネットへのアウトレットダクト追加、エンジン本体ではバルブ径拡大などの大幅な見直しが行なわれ、最高出力は240psに到達した。

 のちにランエボⅨMRまで、約20年にわたって改良を続けながら搭載されることになる4G63ターボの初期型は、その登場からちょうど30年が経った。なのに、いま乗っても速さや刺激を味わえるということは、デビュー当時に与えたインパクトがいかに大きかったか?それを裏付けることに他ならない。粗を探せば、絶対的パワーの物足りなさや6000rpm付近でやってくる頭打ち感などたしかに旧さは隠せないけど、2500rpmあたりから立ち上がってフラットに持続するトルクが力強い加速を楽しませてくれる。

 さらに言えば20年もの歳月をかけて、最終的にはMIVECターボにまで発展していく4G63ターボ。ステアリングを握りながら、その"原点"を実感できるのも初代VR-4だからこそ、だ。

 当時は大きくて重いと言われたボディも、今となってはむしろコンパクトに思えるほど。最後の4G63タ—ボ搭載モデルであるランエボⅨMRと比較すると、初代VR-4は全長が70mm長いだけ。また、5ナンバーだから3ナンバーのランエボⅨMRより全幅が狭いのは当然として全高も10mm低い。さらに、ホイールベースは25mm短い2600mm、車重は50kg軽い1360kg…と、サイズアップが著しい今どきのクルマに比べたら(といっても、ランエボⅨMRだってもう12年前のクルマだけど)、初代VR-4は決して大きくも重くもないのだ。実際のところ、ボディの見切りがよくて小回りも利くから、正直ランエボⅨMRよりはるかに取り回しがラクだったりする。

 そんな初代VR-4の最大の功績は、のちのランエボへと続く礎を築いたことに尽きる。ここでタラレバの話をしてもしょうがないけど、もし初代VR-4が4G63ターボを積んでいなかったら、もしフルタイム4WDシステムを採用していなかったら…そこからランエボが誕生していたとは到底思えない。

 だとすれば、90年代後半のWRCで4年連続ドライバーズタイトル獲得、うち1回はマニュファクチャラーズ合わせてダブルタイトル獲得というミツビシの偉業も成し遂げられなかった…そう考えるのが自然だろう。

 かつて取材した初代VR-4オーナーがこんなことを言っていた。「ランタボ、スタリオン、ランエボ、GTO、FTO…80年代以降のミツビシ歴代スポーツモデルを挙げていった時、VR-4って飛ばされることが多いんですよ」

POWER UNIT

競技車両としてはもちろん、チューニングベースとしても人気だったE39Aだけに、今となってはノーマルエンジンというのが希少。エアクリーナーの純正E39Aは初めて見たかもしれない。4G63ターボは205ps/30.0kgmで始まり、89年登場の中期型で220ps(最大トルクは変わらず)、90年以降の後期型では240ps/31.0kgmへとスペック向上を果たした。また89年に追加されたATモデルは、最高出力がMTモデルより10ps低い210psに抑えられていた。

INTERIOR

両端にサイドウインドウデフロスター、中央にデジタル式時計を備えたフロントウインドウ下端に接する部分がメーターフードと一体になり、そこから一段低い位置にダッシュボードをセット。そのおかげで前方の開放感は大きい。シフトノブの下に確認できるのは、以前使っていた車高調のケースをカットして表面にメッキ加工を施したマルマンモーターズのワンオフアクセサリー。右にタコメーター、左にスピードメーターが配され、それぞれ右下に水温計と燃料計が並ぶ。また、タコメーター内にはバーグラフ式のブースト圧インジケーターも装備。
センターコンソールは上部からエアコン吹き出し口、オートエアコン操作パネル、左右吹き出し口調整レバーとハザードスイッチ、シガーソケットと灰皿というレイアウト。一番下のカセットプレイヤー付きAM/FM電子チューナーは当時モノ。よく残ってた!!

SEAT

前席はレカロのコンフォートモデル、LX-Fに交換。サイドにホワイトレザー、センターに新メッシュ素材の3Dエア、バックにカムイという3つの素材を用いた上位モデルになる。一方、センターアームレストを持つヘッドレスト一体型の後席は天地方向、前後方向ともに大人が2人で乗るには十分な空間を確保。スポーツモデルである以前に、セダンとしての実用性に優れている。

REAR VIEW

3ボックスのオーソドックスなセダンスタイルが端正なイメージ。オーナーの意向によりボディが全塗装されていることもあって、新車時とそう変わらないコンディションを維持している。

TIRE&WHEEL

ホイールはアルミ鍛造1ピースのレイズCE28N。オーナーいわく、「15インチだとタイヤが小さく見えてボディとのバランスが悪い」とのことで、ノーマル比1インチアップの16インチを装着。そこに205/55R16サイズのミシュランパイロットスポーツ4が組み合わされる。シルバーのボディにブロンズのホイールがよくマッチしている。

軽量化が施されたVR-4 RS

競技ユーザー向けに用意された軽量モデルのVR-4 RS。車重は、前期型では4WSナシのベース車が1340kgだったのに対して1300kg、写真の4WS付き後期型では1410kgに対して1370kgと、それぞれ40kg軽く仕上がっていた。ボンネットに追加されたエアアウトレットダックや拡大されたバンパー開口部が後期型の証だ。

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