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スバル・レヴォーグのメカニズム徹底解説 −WRX並みの走りと安全性を両立−「中古車でも人気の理由」

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スバル・レヴォーグのエンジン・パワートレーン

1.6ℓ車のエンジンとCVTの制御を変更

今回はパワートレーン系に変更はなく、従来通り1.6ℓと2.0ℓの直噴ターボを搭載する。「STIスポーツ」も「GT」系と同じエンジンを搭載しており、動力性能面での差別化は行なわれていない。

1.6ℓのFB16型は、ボア×ストロークはφ78.8mm×82.0mm。「幅をとる水平対向エンジンのロングストローク化は困難」という常識を覆し、ストローク/ボア比は1.04を確保する。

動弁系はチェーン駆動のDOHCで、ローラーロッカーアームを介してバルブを開閉。吸排気両側に、油圧式の可変タイミングリフト機構を装備する。

特徴的なのは、レギュラーガソリン仕様の過給エンジンでありながら、圧縮比が11.0対1と高いこと。圧縮比が高ければ、熱効率が高まって燃費が良くなるだけでなく、過給圧が上がらない領域でのトルク痩せが少なく、発進時からしっかりしたトルクを得ることができる。

FB16型 1.6ℓ水平対向4気筒ターボエンジン

排気量…1599cc
種類・気筒数…水平対向4気筒・縦置き
弁機構…DOHC 16バルブ 可変バルブタイミング直噴ターボ
ボア×ストローク…78.8mm×82.0mm
圧縮比…11.0
最高出力…125kW[170ps]/4800rpm-5600rpm
最大トルク…250Nm[25.5kgm]/1800rpm-4800rpm
使用燃料…レギュラー
燃料タンク容量…60ℓ

FB16型の特徴

専用TGV(タンブルジェネレーションバルブ)
FA20 型に対し、バタフライ閉時 の吸気通路をエンジン内側に変更。専用設計の吸気ポートや燃焼室を組み合わせることでタンブル流を強化し、燃費・排出ガス性能を向上。

専用ポート隔壁
タンブルジェネレーションバルブに合わせて、分割比率が5対5(FA20型は6対4)のポート隔壁を採用。これにより、吸気の流れによる筒内流動を強化。クラストップレベルの燃費と排出ガス性能に加え、2.5ℓ自然吸気を上回る動力性能を実現した。

FB16型の実用燃費を向上

インジェクターの燃料噴射設定などの制御を見直し、実用燃費域での燃料増量時における空燃比の変化パターンを最適化。

一方で、圧縮比の向上はノッキングとの戦いとなるため、燃焼温度が上がり過ぎない対策が必要となる。

ひとつめは、燃料噴射の直噴化。吸気管内に噴射していた燃料を、シリンダー内に直接噴射すると、燃料が気化する際にシリンダー内の熱を奪い、圧縮開始温度が低下してノッキングを誘発しにくくなる。

ふたつめは、水冷式EGR(排ガス再循環)クーラーの採用。もともと排ガス対策用として考え出されたEGRだが、三元触媒で排ガス対策が可能になったガソリンエンジンでは、吸気損失を低減して燃費を良くするために使われている。

しかし排ガスは大気より熱いため、吸気に戻せば温度が高まり、ノッキングには不利になる。そこで、ラジエーターを小さくしたような水冷式クーラーで再循環ガスを冷却し、ノッキングを回避している。

ところがEGR量が増えると、酸素密度が低下して失火が起こりやすくなる。

そこで、吸気の流動速度を高め、失火を防ぐために付けられたのが、タンブルジェネレーションバルブである。このバルブによって吸気流量の少ない低負荷時には、吸気管の外側半分を閉じて流路を狭め、吸気流速を高めてシリンダー内の縦渦(タンブル)を強化する。

他にもシリンダーヘッドまわりの冷却改善など、ノッキング対策はいくつか行なわれているが、それらについては本シリーズ第496弾「新型レヴォーグのすべて」に詳述しているので、そちらを参照願いたい。以下、今回の改良点について見ていこう。

今回、施された改良は1.6ℓエンジンの燃料噴射制御。実用燃費改善のための見直しが行なわれている。

FA20型 2.0ℓ水平対向4気筒ターボエンジン

排気量…1998cc
種類・気筒数…水平対向4気筒・縦置き
弁機構…DOHC 16バルブ 可変バルブタイミング 直噴ターボ
ボア×ストローク…86.0mm×86.0mm
圧縮比…10.6
最高出力…221kW[300ps]/5600rpm
最大トルク…400Nm[40.8kgm]/2000rpm-4800rpm
使用燃料…プレミアム
燃料タンク容量…60ℓ

WRX S4と同じ300psを発揮

ワゴンとしては傑出した300psを発揮するFA20型エンジン。 グランドツアラーにふさわしい圧倒的な動力性能とスポーティな特性を誇る。6500rpmまで引き上げられたレブリミットと相まって、高回転域まで気持ちのいい加速感が味わえる。

FB16型の圧縮比が高いのは既述の通りだが、高圧縮比化には常に、ノッキングのリスクが付きまとう。ノッキングが発生しやすいのは、主に低速中負荷より上の領域だ。

ノッキングとは、スパークプラグで点火した火焔が燃え広がらないうちに、燃焼室の端の方で自己着火が起きる現象のこと。火焔伝播燃焼に比べて燃焼速度が速く、高速の圧力波を生じる。

正常な燃焼が行なわれている際は、燃焼室壁の表面は、層流底層という一種の断熱層に覆われているが、ノッキングの圧力波はこれを突き破り、燃焼熱を直接、金属面に伝えてしまう。

すると、鋳鉄のシリンダー壁面より融点の低いアルミでつくったピストンが熔損し、焼きつきやピストンの吹き抜けを発生させてしまう。

これを防ぐために、ノック音を検出するノックセンサーを取り付け、ノッキングを検知した瞬間に、点火時期を遅らせて燃焼温度を下げるという対策が行なわれるが、もうひとつ行なわれているのが、リッチ空燃比の利用。

これはノックを検知してから行なうのではなく、噴射率制御マップに最初から入れておき、保険的に行なわれるものだ。

ガソリンは空気との質量比が1対14.7の時に、燃え残りも酸素も残らない完全燃焼になる(これを理論空燃比=ストイキオメトリーという)。完全燃焼だから発熱量も大きく、効率が良い代わりに、ノッキングが生じる可能性も高まる。

そこで、燃料噴射量を増量すれば、燃えないぶんの燃料が気化したり、熱解離する際に熱を奪い、燃焼温度が低下してノッキングを抑えることができる。

FB16型も、中負荷以上では徐々に空燃比を濃くしていたが、今回はこの制御を見直し。欧州仕様(オクタン価95)の制御マップをつくった際のノウハウを日本仕様(同90)へ投入したとのことだ。

モード燃費は変わっていないが、JC08モードの走行パターンは負荷率が小さく、リッチ領域には入らないから、数値には現れない。実走行では、起伏の多い高速道路を走行したり、峠道の登りでメリハリの良い加減速を行なうような走り方をした場合に、効果が現れるそうだ。

トランスミッションは、全グレードにチェーン式CVTの“リニアトロニック”を搭載。1.6ℓと2.0ℓでは最大トルクが異なるため、 別ユニットが使われている。

SI-DRIVE(2モード)

1.6ℓ車には2モードタイプを採用。燃費を重視した穏やかなトルク特性の「I」とスポーティな走りが愉しめる「S」の2モードを走行シチュエーションによって使い分けることが可能。

SI-DRIVE(3モード)

2.0ℓ車には「I」「S」に加え、レスポンスに優れた刺激的な「S#」の3モードタイプを採用したスポーツリニアトロニックを搭載。

いずれもハードウェアに変更はないが、1.6ℓ用のユニットは制御を刷新。

CVTというと、エンジン回転数と加速度が比例しない「ラバーバンド感」が生じがちだが、アクセル開度がある程度大きくなると、有段ATのようにステップ的にプーリー比を切り替える“オートステップ変速”制御を導入した(2.0ℓ用には、当初から導入済み)。

1.6ℓ車のオートステップ変速の採用

2.0ℓ車に搭載されているオートステップ変速制御を1.6ℓ車にも採用。多段フィーリングによる加速と音の一体感を向上。

駆動方式は、全グレード4WD(スバルはAWDという呼称にこだわっている)だが、エンジン排気量ごとにシステムは異なる。

1.6ℓモデルは、機械式センターデフを持たない電子制御多板クラッチ式を採用。 多板クラッチの圧着力制御によって、前後トルク配分を100対0から直結までの間でオンデマンドに変化させている。

2.0ℓモデルには、複列プラネタリーギヤ式のセンターデフと、多板クラッチ式の差動制限装置を組み合わせたVTD(バリアブル トルク ディストリビューション)システムを採用。センターデフのトルク配分比は45対55で固定されており、必要に応じて多板クラッチの圧着率を変え、差動制限を行なう。

ふたつの4WDシステム

1.6ℓ車には安定性重視の4WDシステム、新世代アクティブトルクスプリットを搭載。路面や走行条件に応じて前後輪に最適なトルクを配分し、優れた走行性能を発揮する。2.0ℓ車には前後のトルク配分を45対55にしたVTD-AWD(上の写真)を採用。後輪へのトルク配分を増やすことで積極的なスポーツドライビングを可能にする。

スバル・レヴォーグのシャシー

前後サスはチューニング変更電動パワステは操作性を向上

リヤ

① ダンパー
 ・リバウンドストロークを延長(+8mm)
 ・減衰力最適化
② コイル(※「1.6GT」「1.6GT-S」のみ)
 ・バンプストローク延長(+8mm)
 ・バネ定数ダウン
③ スタビライザー
 ・直径ダウン(φ20→φ18)→路面-タイヤの追従性改善

フロント

① ストラット
 ・リバウンドストロークを延長(+5mm)
 ・減衰力最適化
② コイル(※「1.6GT」「1.6GT-S」のみ。)
 ・バンプストローク延長(+8㎜)
 ・バネ定数ダウン
③ アームブッシュ
 ・ピロボールをゴムブッシュ化→ハーシュネス改善

電動パワーステアリングの操舵フィーリング改善

① 切りはじめからリニアにアシストが追従する自然で滑らかな操舵フィーリング/② 転舵状態からステアリングを戻す際に、セルフアライニングトルクにより自然なフィーリングの戻りを実現する制御を追加

今回のマイナーチェンジの大きなテーマは「動的質感の向上と乗り味の熟成」。シャシー系はチューニングを全面的に見直しているだけでなく、ステアリングシステムにも改良が加えられている。

サスペンションの基本構造に変更はなく、フロントはストラット式、リヤはダブルウイッシュボーン式を継続採用する。

チューニングレベルは4種類あり、「1.6GT」がKYB製ダンパーで、「1.6GT−S」と「2.0GT−S」がビルシュタイン製倒立ダンパーを採用する。

「STIスポーツ」は全グレードがビルシュタイン製で、フロントにはダンプマティックⅡシステムを採用している(詳細は本シリーズ第536弾「レヴォーグSTIスポーツのすべて」を参照)。

これだけでは3種類だが、今回は「1.6GT」と「1.6GT-S」の車高を10mmアップした。その結果、①KYBダンパー+車高アップ(1.6GT)、②ビルシュタインの車高アップ版(1.6GT-S)、③ビルシュタインのノーマル車高(2.0GT-S)、④ビルシュタイン+ダンプマティックⅡ(STIスポーツ)の4種類となる。

「1.6GT」及び「1.6GT-S」の車高を上げたのは、バンプストロークを増やして凹凸吸収能力を高めるため。それだけではリバウンドストロークが不足するので、ダンパーのリバウンドストロークをフロントで5mm、リヤで8mm延長している。

また、「1.6GT」と「1.6GT-S」のコイルスプリングは、前後ともバンプストロークを8mm延長。バネ定数は従来よりもソフトにし、それに合わせて減衰力も再チューニング。乗り心地を向上することで、より多くのユーザーに受け入れやすいキャラクターを明確化した。

それ以外のグレードでも、車両姿勢変化を許容しつつ、ロードホールディングと乗り心地を高める改良が実施された。

前後ダンパーのリバウンドストローク延長と、リヤスタビライザーの小径化(旧φ20mm→新φ18mm)は、全グレードに適用される。「GT」系はフロントのロワアーム後側ブッシュをピロボールからゴムブッシュとし、ハーシュネスを改善し ているのだ。

ステアリングシステムの形式は、ピニオンアシスト式の電動パワーステアリングと従来から変わりはないが、アシストモーターとECUを別々に配置していた従来型に対して、モーターユニットにECUを内蔵した“機電一体式”を採用。ギヤボックスまわりも新設計して、操舵感の向上を図った。

ギヤボックスは、ラックのスリーブの構造を変更し、ガタを詰めながらフリクションを低減。静摩擦と動摩擦の差を小さくすることで、切り始めの滑らかさの向上を図った。

また、機電一体化することで、モーターのトルクリップル(波打ち)特性と制御のキャリブレーションを部品単位でできるようになり、トルクリップルに起因する微少なトルク変動を打ち消す制御が可能になった。

アシスト特性も見直されており、今回から戻り方向の制御も追加。セルフアライニングトルクによる自然なリターナリビリティが得られる制御をつくり込んだ。

スバル・レヴォーグの安全技術

安全技術が大きく進化。死角を減らす装備を設定。

今回のマイナーチェンジの柱のひとつが、「先進安全技術のさらなる進化」。キーワードは「見る」ということ。

安全運転の出発点は、ドライバーに十分な視覚情報を与えること。直接視界が良いのはスバル車共通の美点だが、今回は、“夜間”と“後方”の視界改善にも取り組んだ。

まず、ステアリングレスポンシブヘッドライト(SRH)。いわゆるアダプティブヘッドランプのことで、車速と操舵角からクルマの進行方向を予測し、ヘッドランプの光軸を進行方向に動かす。

システムとしては“スイブル式”に属し、灯体そのものを、電動アクチュエーターで左右に動かす。最大作動角は、車両の外側に18度、内側に5度。旋回内側のライトをより多く動かし、外側のライトはその半分程度の角度で制御する。単にイン側を明るく照らすだけでなく、コーナー全体を把握しやすくする配慮だ。

ヘッドランプの光源には、LEDを使用。片側1個のLEDとレンズで、ハイとローの両方を賄う“バイファンクション”仕様だ。ロービーム時には、遠方に飛ぶ光をカットするシェードを降ろし、ハイビーム時にはそれを上げてフル照射する。

前方の明るさや対向車/先行車を専用のカメラで捉え、適宜ロー/ハイを切り替えるハイビームアシスト機能も用意されるが、それは“アイサイトセイフティプラス”にパッケージオプションとなっている。

ハイビームアシスタント

フロントウインドウ内側の単眼カメラが前方の光を検知し、状況に応じてハイビームとロービームを自動的に切り替える。

後方については、スマートリヤビューミラー(SRVM)を新設定。ルームミラーの全面に液晶ディスプレイを組み込み、リヤゲートガラスの上部に取り付けられたカメラの映像を映し出す。カメラは後退アシスト用の広角カメラとは別に、専用のものが用意されている。

スマートリヤビューミラー

リヤゲートガラス内側に取り付けられたカメラの映像をルームミラーに表示。リヤシートに座る人や荷物に後方視界を遮られても安全な後方確認をサポートする。カメラはリヤワイパー払拭エリア内に配置しているので、雨天時も視界確保が可能。

スバルリヤビークルディテクション

車体後部に内蔵されたセンサーで、自車の後側方から接近してくる車両を検知し、車線変更や駐車場後退時に注意を促す。ドアミラーから見えにくい車両や、隣のレーンを高速で近づいてくる車両があった場合、ミラー内のインジケーターや警報音でドライバーに知らせてくれる。

鏡面はハーフミラーになっており、SRVMオフ時には、通常の光学式ミラーとして使用が可能。防眩ミラー用のレバーを操作すると、SRVMがオンになり、ディスプレイの映像がハーフミラーを透過して見えるようになる。

ミラーの位置調整は通常のミラー同様で、まずSRVMがオフ状態で行なう。そうすることでSRVMオン時にも不要な乱反射を抑えた角度に設定ができる。

光学式ミラーでは、後席に人が乗っていたり、ラゲッジに荷物が満載されていたりすると視野が遮られてしまうが、SRVMならば心配は無用。視野角もリヤゲートガラスの大きさに左右されないため、より近いところまで見ることができる。

SRVM作動中は、いわばテレビ画面のようなものなので、アイポイントの位置に関わらず、どこからでも同じ映像を見ることができる。すなわち、助手席や後席の乗員からでも後方を確認できる、ということだ。

フロント&サイドビューモニター

フロントグリル及び助手席側ドアミラーに装着したカメラの映像をマルチファンクションディスプレイに表示。死角を低減し、安全運転をサポート。

▼ 既存のSDビューカメラの画像と合わせて広範囲を見える化できる。

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1.6L/2.0L直噴ターボとリニアトロニック、4WDを組み合わせたパワートレーン、そしてWRXと兄弟関係にある、鍛えられた基本骨格とサスペンションを備えるレヴォーグ。17年7月に実施されたマイナーチェンジで、全車が標準装備するアイサイトは新たにツーリングアシストが加わり、足まわりやパワーステアリング制御、エンジン特性を最適化するだけでなく、遮音性の向上も実現。エクステリア/インテリアのブラッシュアップも実施するなど、そのきめ細やかな進化の全貌を解説した1冊です。

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