新型プジョー508で東京〜福岡2000kmイッキ試乗! 新東名120km/hクルージングで見えたフランスの底力
- 2019/11/13
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MotorFan編集部
自分を主張することは、人を認めるということ
奇妙といえばかなり奇妙なメーターパネルだ。まだヘッドライトを必要とする暗闇の中、東名へとクルマを進める。この液晶パネルは表示を変えるときに、いちいち動きが大げさだという人もいる。工業製品たるもの……機能優先と、確かにその気持ちはわかる。しかし、これはフランスの機械なのだ。法規上で必要な表示、例えば速度のデジタル表示などは素早く点灯。しかし、そのほかがなんともきらびやかに、ダンスをしながら動く。
終業時間になれば会社からはぱったりと人がいなくなり、街のレストランに人が集まる。休日には、会社に入ることさえ許されない国。テロの恐怖に晒されても、まず日常の営みを変えない。パリに行くたびに、その独特な世界を見る。地下鉄に乗れば、そこにパフォーマーが乗ってきて勝手に歌を歌う。でも、みんな普通。むしろ、ちょっと耳を傾ける。なんかその感じ。自己主張はするが、他人も受け入れる。
いいという人がいればそれでいい。絶賛がもらえれば、なおさら良し。しかし悪いは、ない。なぜならば、それが今回の508だから。それだけ。主張があちらこちらに飛び交いながらも、淡々と送られて行く毎日。その中にあるのが、他を認める気持ちなのだろう。
それにしても、老眼となってきた自分にとってメーターパネルはちょっと苦手。文字にピントが合わないこともしばしば。しかし、508のiコクピットのディスプレイは、視点が遠く外からの視線移動に苦痛がない。508にヘッドアップディスプレイがないのも、このメーターパネルの狙いなのだろう。
サスペンションはずっとコンフォートのまま。ロングランにはこのクルーザーのようなおおらかさがいい。といっても急な動きにもついてくる。このあたりが電子制御の妙で、かつてのソフト&ロングストローク一辺倒の路線からの進化かもしれない。
120km/hクルーズはフランス車のポテンシャルを発揮
と思っているうちに第二東名、いよいよ120㎞/h区間に突入。電光の標識に120と刻まれるのは、なんとも感動的だ。ここから合法的に100㎞/hオーバーの世界が開かれる。120㎞/hへと速度をあげるのは、いともたやすいことだ。この速度で淡々と走るとまだ周囲はこの制限速度にピンときていないのか、どんどんと追い越すことができる。ちょっと快感。
ハンドルの吸い付く感じ、路面の継ぎ目のトンという衝撃が小さく感じられるのがわかる。この安定感は、大げさにいうならフランスの新幹線TGV。あちらは気がつくと270〜280㎞/hで巡航。普通に談笑しているのに、時に300㎞/hを超える普通の凄さ。もちろん120㎞/hは全然次元の異なる話なのだが、その安定感や静かさが、まさにフランスの大地を移動するためにあるのだと実感。とはいえサッシュレスの限界か、トンネルに入るとそのノイズは普通のセダンよりやや大きめに感じた。
意識の違いなのだろうが、名古屋までがこんなに近かったとは思わなかった。車での名古屋出張はあるが目的地を名古屋と考えると、こうは感じない。まだこの先700㎞との思いが、距離を感じさせないのだ。
そこから約150㎞で京都。約50㎞で大阪と景色は様々に変わり楽しいのだが、だんだんと山陽道へと入って行くと、道は淡々としてくる。こうなってくるとアクティブクルーズコントロールは疲労を軽減してくれる。
150〜200㎞を基準にドライバー交代など休み休みの走行だったが、その都度出会うサービスエリアがまた魅力的だ。2時間ごとに何かを食べるというのは現実的ではないが、その土地の風土に直接触れられるのは、飛行機や新幹線では味わえないものだ。
そして下関を渡るころには、夜も8時近くになっていた。さらに豪雨。前5mも見えない中、極度なスピードダウンだが意外にもアクティブクルーズコントロールが役に立った。この環境下で完全に頼ってはいけないが、そんな中でもちゃんと白線を読んでくれていて、走行をサポートしてくれた。
トータルで17時間にも及ぶ移動だったが、何よりも疲労が少ないのはこのクルーズコントロールのおかげだ。と実感できた。なぜ今回福岡を目的地にしたかというと、誌面でも紹介しているディーラー取材を翌日に設定したためだった。
プジョー福岡の栗原店長の驚いた顔が印象的だったのと、またここから東京へお帰りですね、といわれた瞬間、往路の行程が走馬灯のようによぎった。
帰りは午後早めに出て、500㎞先の大阪で一泊、そして東京へ。
この手で走るという実感。カメラ機材から、小型のスーツケース。たくさんの荷物を自分のこの手で運ぶという、自由な感覚。
ショールームの中からポケットのキーをいじると、窓越しの赤い508のハザードが光る。
それはまさに「そろそろ、行こうぜ」と言っているように思えた。
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