試乗記:フォルクスワーゲンT-CROSS(Tクロス)「VWポロから主役の座を奪い取った?」|コンパクトSUVインプレッション
- 2019/12/17
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MotorFan編集部 小泉 建治
フォルクスワーゲンSUVシリーズの末っ子、T-Crossがいよいよ日本に上陸した。プラットフォームはMQBを採用し、エンジンは1.0Lの直列3気筒ターボを搭載。コンパクトなボディに最新技術を満載させた自信作に山梨県のリゾート地周辺で試乗した。
REPORT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
クラスを勘違いしてしまうほどの上質さ
まず最初に対面して感じたのは「新しい!」ということだ。写真で見る限りは兄貴分のティグアンの流れを汲むデザインだと思っていたが、実物を目の当たりにすると、明らかに世代がひとつ前進していることを実感させられる。それはデザインそのものの力によるのか、サーフェスやチリ合わせに生産精度の向上が表れているからなのか、もしくはその両方なのか、いずれにせよこのデザインだけでも購入の動機になり得るだろう。
ちなみに左右のテールランプを結ぶリフレクターバンドとブラックのトリムパネルは、このT-Crossから取り入れられたフォルクスワーゲンの新しいデザイン手法だ。
乗り込んでみると外観から想像する以上に広々感がある。プラットフォームとパワートレインを共有するポロと比べると、全長が55mm増、全幅が10mm増とほぼ同じで、ホイールベースはまったく同じだ。ただし全高は130mmも高くなっていて(T-Crossの最低地上高の数値が明らかにされていないため、ボディそのものの天地高はわからないが)、これが大きく効いている。
地上からシート座面までの高さはフロントシートが597mm、リヤシートが652mmで、これは前後ともにポロと比べて約100mmも高くなっている。よって見晴らしが良くなるばかりでなく、アップライトな乗車姿勢となることで前後にも余裕が生まれるのだ。多くのSUVに共通したアドバンテージかも知れないが、とくにスペース的な制約の多いコンパクトなクラスでは影響が大きい。
搭載されるのは直列3気筒1.0Lターボだ。気筒数と排気量だけ見れば、1270kgの車体に組み合わせることなど一昔前には考えられなかったコンパクトさだが、今さら言うまでもなくデイリーユースにおける発進加速やドライバビリティに不足はない。200Nmの最大トルクはわずか2000rpmで発生され、7速DCTでテンポ良くつないでいくことで加速力が途切れることはない。
MQBプラットフォームがもたらす落ち着いた乗り味と高い静粛性のおかげで、高速巡航も快適極まりない。ただ、その上質さゆえにもっと上のクラスの───つまりキャパシティに余裕のあるエンジンを搭載した上級モデルと勘違いしてしまい、追い越し時に物足りなさを感じてしまう場面があった。
実際には7速DCTの緻密な制御によって問題のない加速が得られるのだが、そのシフトチェンジのビジーさがイメージと違っていたというか、アクセルを軽く踏み増すだけでシフトダウンすることなく余裕の加速をしてくれるような期待を勝手に抱いていたのだ。
言い換えれば、直列3気筒1.0Lというコンパクトなエンジンを搭載していることを忘れてしまうほどの上質な乗り味だったということで、それがこのサイズ、この価格で得られるわけだ。
参考までにWLTCモード燃費は16.9km/Lで、高速道路モードでは19.1km/Lとなっている。トップギヤの7速での100km/h巡航時のエンジン回転数は2350rpmだった。
ガソリンタンク容量は40Lだから、高速道路だけであれば航続距離は760kmとなる。ぜひともロングドライブで燃費を計測してみたいものである。
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