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〈マツダCX-8:オフロード試乗〉こんな姿勢になっても問題ありません! |3列シート SUVインプレッション

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マツダのフラッグシップを担うCX-8。3列シートを備える大型SUVだが、とはいえ弟分たちと同様に都会派のイメージが強く、泥臭さは微塵も感じさせない。そんなMAZDA CX-8で本気のオフロードコースを走ってみたのである。

REPORT●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)

最新デバイス「オフロード・トラクション・アシスト」の効能や如何に?

 マツダのCXシリーズのブランド戦略にはブレがない。とにかく、まったく泥臭さを感じさせないのだ。

 数日前に記事公開したCX-30のレポートでも触れたが、例えばカタログひとつ取っても、それは徹底している。CX-30、CX-5、CX-8と、どのカタログを見ても未舗装路の写真が一切出てこないのだ。使われているのはどれも都会の中で撮影されたものばかりで、CX-8のカタログの巻末にあるボートを牽引している写真がアウトドアを連想させる唯一の演出だ。

 そんなイメージ戦略は今のところ大成功と言っていいはずだが、その一方でこんな誤解も招いているという。

「マツダのSUVは悪路走破性が低い」

 もちろん読者のみなさんは、とくにマツダのSUVが悪路走破性に劣るなんて考えていないだろうけれど、とはいえCXシリーズの流麗なスタイルは、あまりクルマに詳しくない人々にそうした誤解を与える可能性はあるだろう。

 さらに今なお未舗装路を走る機会の多い北米のカスタマーは、CXシリーズのようにオンロード性能の優れたSUVを容赦なく極悪路でジープ・ラングラーなどと比較してしまうらしい。

「そりゃあんた、ラングラーとCX-8を比べちゃいかんよ。それにオンロード性能はCX-8のほうが断然上でしょ」なんて理屈は通用しない。

 というわけで、CX-8の4WD仕様には19年モデルから「オフロード・トラクション・アシスト」という悪路走破デバイスが新たに搭載されている。

 これはスリップしているタイヤに高いブレーキ圧を掛け、グリップしているタイヤに高いトルクをかけるもので、トラクションコントロールの一種とも言える電子制御デバイスだ。前述のラングラーやスズキ・ジムニーやトヨタ・ランドクルーザーなどが採用している本格的なデフロック機構と比べると悪路走破性という点では一歩譲るが、重量、コスト、燃費などにおいては、電子制御タイプの方が有利である。

 オンロードにおける運動性能や快適性能を犠牲にすることもなく、ほとんどのユーザーにとってはこちらのほうが利点が多いはずだ。

 そんな19年式CX-8で、本格的オフロードコースを走ってみたのである。

 試乗コースは、モーグルと呼ばれる高さ1.5mほどのコブが左右交互に続くセクションと、隕石が落下した現場のような高低差4mほどのすり鉢状の穴を一気に駆け下り、駆け上がるセクションで構成される。

 まずはモーグルに臨む。マツダの担当者によればモーグルではオフロード・トラクション・アシストを使ってください、とのことだが、このデバイスの効果を知るために、最初はあえてオフにしてみる。

 ひとつ、ふたつ、みっつとコブを越える。最初は勢いでなんとか進めた。全部で12くらいあるコブの途中あたりまで進むと勢いも弱まり、アクセルを踏むと明らかにどこか一輪が空転するのがわかる。そろそろ前に進まなくなるだろう。

 だが、サスペンションのストロークが想像していた以上にタップリ採られていて、タイヤが路面を掴んでいる時間が長い。一輪が浮いてしまう時間が短いのだ。

 そんなこんなで……オフロード・トラクション・アシストをオンにすることなく走り抜けてしまったではないか。

オフロード・トラクション・アシストのスイッチはステアリングコラム右側のスイッチ群の右上にある。クルマがデコボコ道を上っているようなイラストのボタンだ。

 マツダの開発者と広報担当者がこちらを見ていたので、そこまで近づいてウインドウを開けた。

「あの、今オフにしていたんですけれど……」

開発者「ええ……見ていてわかりました。うまく走っちゃいましたね」

「どうしたもんですかね?」

開発者「今度は、空転しそうなところでわざと完全停止してみてください(苦笑)」

 わざと苦しい状況を作りだせということだ。

 隕石落下現場(みたいなすり鉢状セクション)など記憶に残らないほどあっけなくクリアし、再びモーグルへ。

 今度は勢いを完全に殺し、歩くよりも遅い速度でアプローチする。それでもひとつ目、ふたつ目はクリア……。

 それはイカンと、三つ目で完全停止。そこから無遠慮にアクセルを踏みつけると、見事に空転して前に進めない。バンザーイ! ……いったい自分は何をしているのだろう?

 そこで初めて指示通りにオフロード・トラクション・アシストを作動させると、ガガガガッと制御が入っているのが伝わり、接地しているタイヤにググググッとトラクションが掛かってあっけなくコブをクリアした。

これが本文中にある隕石の落下現場みたいなすり鉢状のセクションだが、もはや記憶に残らないほどあっけなくクリアしてしまった。写真で見ると、穴に落下しているみたいだが……。

 その後、動画の撮影もあったので何度かこの「わざと止まって空転させてからデバイスを介入させてクリア」を繰り返したが、なるほどこの制御は緻密で、空転やデバイス作動をしっかりドライバーに感じさせながらも無用な緊張を与えない。

 機械的なデフロックを備えていなくても、ほとんどのユーザーにとってはCX-8のオフロード・トラクション・アシストがもたらす悪路走破性で十分であるはずだ。

 ただ、もっと言ってしまえば、CX-8に先天的に備わっていたオフロード性能が思いのほか高く、オフロード・トラクション・アシストがなくても取り立てて問題はなかった……のは言いっこなしというやつですね。

CXシリーズのオフロード開発にあたっては、ヤマハ発動機のクアッド(四輪バギー)の開発チームに車両評価をお願いしたり、テストコース設定のアドバイスなどを受けたという。写真は試乗会場にディスプレイされていた競技専用車両のヤマハYZ450FとYZ250F。

CX-8 XD Lパッケージ 4WD
全長×全幅×全高:4900×1840×1730mm
ホイールベース:2930mm
最低地上高:200mm
車両重量:1840g
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:2188cc
ボア×ストローク:86.0×94.2mm
圧縮比:14.4
最高出力:140kw〈190ps〉/4500rpm
最大トルク:450Nm/2000rpm
燃料タンク容量:72L
トランスミッション:6速AT
駆動方式(エンジン・駆動輪):F・4WD
サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡマルチリンク
ブレーキ:Ⓕベンチレーテッドディスク Ⓡドラム
乗車定員:7名
タイヤサイズ:225/55R19
WLTCモード燃費:15.8km/L
市街地モード燃費:12.8km/L
郊外モード燃費:15.5km/L
高速道路モード燃費:17.8km/L
車両価格:467万0600円

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