【クルマと防災②】大は小を兼ねる?兼ねない? クルマから電力を取り出すカーインバーターの選び方
- 2020/05/04
- 増谷茂樹
前回は、家庭用のAC100V電源を備えたクルマを紹介しましたが、こうした電源供給機能を備えていないクルマでも、いざというときに電源として使うことは可能です。そのために必要なのがカーインバーター。1つ持っていると 停電時などに重宝することは間違いありませんが、いざ購入しようとすると様々な種類があり、価格もかなり幅があります。どこが違って、どれを選べばいいのか? 整理してみました。
そもそもカーインバーターとは?
まず、カーインバーターがなぜ必要なのか? という基本からおさらいしておきましょう。クルマの電装系は基本的にDC(直流)12Vで動いています。シガーソケットから取り出せる電力も、このDC12V。それに対して、家庭用の電化製品はAC(交流)100Vで動いていますから、クルマを電源として使うためにはDC12VをAC100Vに変換する必要があります。その変換をしてくれる装置がカーインバーターとおぼえておけばわかりやすいでしょう。
価格の差はどこにある?
カーインバーターの値段を調べると、安いものだと2000円程度から、高いものは数万円までかなり差があります。この差はどこからくるのでしょうか? 1つは出力できる電力の違いです。カーインバーターの本体やカタログには、300Wとか1000Wというように出力可能な電力が記載されています。小さいものだと120Wや200W、大きいものになると3000Wを超えるものも存在します。電化製品もカタログや取扱説明書を見ると消費電力が記載されていますので、使いたい製品を動かせる容量のものを選ぶといいでしょう。
とはいえ、インバーターの容量が大きいものを用意すれば万事OK! とはなりません。車種によってバッテリーやオルターネーター(発電機)の容量が異なるので、極端に大きなものはバッテリー上がりの要因となってしまいます。既設のシガーライターのヒューズは15A以下が一般的。なのでここから電源をとって使える製品は150W程度、大きくてもせいぜい300W以下であると理解しておくのが無難。1000Wを超える電力を取り出すのであれば、通常のバッテリーに加えてサブバッテリーを用意したいところです。
注意したいのは「定格出力」と「最大出力」。容量の大きなカーインバーターには、だいたいこの2つの数値が記載されていて、前者は連続的に使用できる出力を、後者は瞬間的に使用できる出力を表しています。電化製品にも定格消費電力と最大消費電力が記載されていることが多いですが、定格の数値しか表記されていない場合もあります。テレビの最大消費電力は定格値の5倍、電動工具などモーターを使うものは10倍にもなる場合がありますので、余裕を持った容量のものを選びましょう。
もう1つ、価格の違いに効いているのが「正弦波出力」に対応しているか否かということ。これは出力する電力の波形を表しているもので、正弦波とは規則正しくなめらかな波形のこと。家電製品の多くはこの正弦波の電力で動くようになっているので、炊飯器や電子レンジなどを動かしたい場合は正弦波対応のものを選びましょう。製品によっては、使えなかったりトラブルのもとになることもあります。スマホやデジカメ、ノートPCの充電などACアダプターを介するものであれば、正弦波対応でなくても使えることが多いようです。
出力の大きめのカーインバーターを選ぶなら、気にしておきたいのが保護回路の有無です。これは、消費電力が過大だった場合、インバーターの内部で電力をシャットダウンする機構で、これがないとクルマのヒューズがとんだり、バッテリーに負荷がかかったりします。300W程度の出力で使うのであれば、あまり問題になることはないかもしれませんが、それ以上の出力のものを使うのであれば保護回路付きが安心です。
車中泊などで出力の大きなカーインバーターを使うと、冷却ファンの音が気になることもあるかもしれません。価格の安い製品を使っていると、走行中でも耳障りなくらい大きな音がする物もありますので、音がきになりやすい人は多少価格が高くなっても静音タイプを選んでおくのがおすすめです。
シガーソケットからだけでなく、バッテリーに直接接続して電力を取り出せる製品も存在します。シガーソケットには専用のヒューズがあって、過大な出力になりそうだと車体側のヒューズがとんでしまうので、大きな電力を取り出したい場合、バッテリーに直接接続できる製品を選ぶほうがいいでしょう。
まとめ
カーインバーターを購入しようとしたことがある人ならわかると思いますが、製品の種類が非常に多く、選び方がわかっていないと目移りしてしまいます。これでいいや……と安いものを購入すると出力が足りなくて使いたい製品が動かなかったり、逆に必要ないのに高くて高出力なものを買ってしまうことも。まずは、何を動かしたいのかをはっきりさせ、その製品に合った出力のものを選ぶことが大切です。
そして、家電を使いたいのであれば正弦波出力に対応したものを。大出力のものを選ぶのであれば、保護回路の有無や静音性などをチェックしましょう。また、バッテリーに直接接続できるアダプターは、何かと便利なので出力の小さいインバーターでも付属するものを選んでおくと後々役に立つと思います。
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