“AUTONOMY 自動運転の開発と未来”に学ぶ近未来のクルマ 自動運転とともに訪れるモビリティ・サービスの起点と現状:新刊紹介
- 2020/06/19
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CAR STYLING編集部 松永 大演
車の自動運転の未来とはどのような形になるのか? また、それは楽しい未来なのか。現在のエンジン文化を謳歌する我々にとっては、興味深くても不安も多い未来の自動車の形。本書では、その潮流がどこで始まり、現在何が起こり、そしてどこへ行くのかをわかりやすく、そして興味深く著している。
自動運転という "夢" との狭間で
本書は現ウェイモ顧問で、ゼネラル・モーターズ研究開発・計画部門の元副社長のローレンス・D・バーンズ氏と、世界的に有名な専門家とのコラボレーションを専門とするライター、クリストファー・シュルガン氏の共著によるノンフィクションだ。ここで語られるのは、自動車業界のこれからであり、また現在着々と進んでいる大変革の真実なのだ。
我々カーファンが、大きな期待とともに深い不安をいだいているのが、自動運転とその先にある自動車の所有形態からの変化についてだろう。車は所有するものではなく、移動という目的をサービスとして受ける時代が訪れる……ということへの向かっているのかどうか、ということだ。
当初、夢物語のように語られ、時にはその技術や法的対応には課題が多いともいわれ、実現はまだまだ先かもしれないとの見解もあるのが自動運転だ。
しかし、当書を読めば、技術的、法的問題は難関であったとしても、乗り越えるべき必然であることを感じる。新たな需要喚起や、環境対策などということだけでなく、自動車というものの抱える問題の大きさにも気がつく。
すべては9/11から始まった
その中には2001年9月11日に起こった、いわゆる同時多発テロがある。著者のバーンズ氏によれば、「この事件が起きた責任の一部が自動車業界にあるような気がしてならなかった」と語っている。
石油という資源をめぐる争いが、アメリカ本土の不特定多数の市民に刃を向けたとき、事の根源のひとつが豊かさの象徴である石油を基盤とした近代文化にあったと気がつかされた。それは、これまで無視してきた自動車を取り巻く矛盾の一部であり、それ以外の多くの矛盾に対しても目をそらすべきでないということだ。
ここから理解されることは自動運転の実現は、漠然とした明るい未来のために動き出したものではなく、これまでの自動車がひき起こしてきた禍(わざわい)が結末を迎えなければいけない、という使命感でもある。
そして筆者はこの進化を「破壊的イノベーション」とも表現する。築き上げてきた砂の山をさらに大きくするには、一度押しつぶして土台を広げる必要があるということも意味している。
本書は第I部からIV部編成で、全12章の構成となる。そのなかでも興味深いタイトルをいくつか紹介しよう。
すべては9/11から始まった / 世の中の問題を解決するために / グーグル・ストリートビューの誕生 / 2人乗りのiPod / 上海で見た未来 / 水と油のデトロイトとシリコンバレー / ウーバー、リフトの台頭 / “オートパイロット”に潜んでいた危険 / 事故が残したもの
……これらは同時に、自動運転開発時の重要なキーワードでもある。自動運転にはまだ大きなハードルがある。そして電気自動車も同様に多くのハードルが存在する。しかし、これらが実現したとき、今までとは異なる大きな可能性が見えてくる。
それらの事実をしっかりと踏まえるために、極めて重要な一冊となることは間違いない。
AUTONOMY 自動運転の開発と未来
ローレンス・D・バーンス / クリストファー・シュルガン共著
児島 修 訳
発行 辰巳出版 書籍/四六判/456 ページ
ISBN 4777824020
本体 1900 円+税
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