ジープ・ラングラー アンリミテッド・ルビコン「究極の4×4システム」だから走破できる場所がある。でも、ジープの魅力はそれだけではない
- 2020/07/19
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世良耕太
ジープの実力を試すのに絶好なシチュエーションでラングラー・アンリミテッド・ルビコンを試乗した。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
ジープには、頑丈で悪路に強い四輪駆動車のイメージがある。1941年に軍用車として誕生したジープの伝統と機能を受け継ぐのがラングラーだ。丸型のヘッドライトと、そのヘッドライトに挟まれた7本のスリットグリルの組み合わせは「ジープ」のアイコンで、これを見ると、高いオフロード走破性を感じるよう刷り込まれてしまっている。四つ葉のクローバー(クアドリフォリオ=アルファロメオのレーシングスピリットを受け継ぐ高性能車に与えられるエンブレム)を見たら、「こやつは速いゾ」と身構えてしまうのと一緒だ。
7月6日はジープ・ラングラーの実力を確かめるのに、またとないステージが用意されていた。長野県白馬にあるスキー場のゲレンデである。夏なので、厚い雪の代わりに草が背の高さまで生い茂っている。リフトの脇には上と下の拠点を結ぶ連絡路が整備されているのだが、見上げるような急斜面であり、砂利道だ。
実は試乗会の集合地点に向かう際にルートの選択を間違ってしまい、見上げるような急斜面の下で立ち往生した。このまま登っていけば集合地点にたどり着くことが想像できたが、斜面の角度と路面の状態を見て諦めた。急角度の砂利道は、度重なるクルマの走行によって轍ができており、中央が大きく盛り上がっていた。しかも、外に出るのがはばかられるほどの雨が降り続いている。もっというと、頼りの道は真っ直ぐではなく、生い茂った草によって先が見通せない状況だった。
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そのとき筆者は、四つ葉のクローバーをフロントフェンダーの左右に張り付けたクルマ、すなわちアルファロメオ・ジュリア・クアドリフォリオに乗っていたのだが、いかに四つ葉のクローバーでさえ、雨に濡れた急斜面の砂利道では水戸黄門の印籠のような効力は期待できないことを瞬時に理解した。丸型ヘッドライトと7本スリットグリルでなければだめなのである。
後でわかったことだが、ジープ・ラングラーは、「やめておこうよ」と雨音でかき消されそうなほどの小声で撤退を宣言した急斜面の、雨に濡れた、先の見通せない砂利道を、何の苦もなく駆け上った。登ってみてわかったことだが、四つ葉のクローバーでチャレンジしないで本当によかった。
ジープ・ラングラーとの付き合いで最初に感激したのは、実は悪路走破性の高さを体感した瞬間ではなく、ドアを開けた直後のことだった。心躍るとはこのことだ。ハイテク秘密基地にもぐり込んだかのような錯覚を覚えた。映画『ミッション・インポッシブル』のシリーズのひとつに、貨物列車のコンテナに逃げ込むシーンがある。扉を開けて入り込んでみるとそこは秘密のミッションルームで、高級ホテルのラウンジのようなムードが漂っており、壁にはハイテク機器が埋め込まれている。無骨なラングラーのエクステリアと、未来的ハイテク感満載のインテリアは、コンテナと秘密基地のギャップに通じるものがある。ラングラーに乗り込めば、イーサン・ハント(トム・クルーズが務める諜報員であり、映画の主人公)の気分に浸れる。
それでは、耐候型のエンジンスタートボタンを押して、ミッションを始めることにしよう。危機一髪の状況から脱出するための特殊な装置に関しては、事前に使い方を把握しておかないと、いざというときに役に立たない。ラングラーも同じ。このクルマは四輪駆動だが、「ヨンク」のひと言で済ませられるほど単純ではない。二輪駆動と四輪駆動が任意に切り換えられるし、四輪駆動にもバリエーションがある。「究極の4×4システム」を搭載するRubicon/Unlimited Rubiconをベースに整理すると、次のようになる。
2H:2輪(FR)駆動。舗装路クルーズ用
4H AUTO:前後輪に自動的に駆動力を分配するフルタイム4WD。オンロード、オフロードを問わず有効
4H:センターデフをロックした状態の4WD。雪道や砂利道などの未舗装路で有効
4L:ギヤ比を4:1の低レンジにすることで駆動力を高めた4WD。悪路や岩登りなどで有効
さらに、スイッチ操作ひとつで前後のデフを同時に、またはリヤのみロックできる「トゥルロック」を装備。電子制御フロントスウェイバーディスコネクトシステムを搭載するのもRubicon/Unlimited Rubiconの特徴で、フロントのスウェイバー(アンチロールバー)の機能を解除するシステムだ。前輪のストローク自由度を高めるこのシステムは、4L選択時かつ29km/h以下で選択できる。
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