フォーミュラE世界のプレミアムメーカーが参戦中のFormula-Eは、未来のF1になるのか?| モータースポーツ基礎講座
- 2020/08/07
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世良耕太
世界中の自動車メーカーが鎬を削るのがモータースポーツの世界。頂点はFormula1(エフワン)だが、電気のフォーミュラも年々レベルと人気が上がっている。
TEXT◎世良耕太(SERA Kota)
フォーミュラEは電気自動車で行なうレースシリーズだ。2014年秋に「シーズン1」(2014/2015年)と呼ぶ最初のシーズンが始まり、シーズン6(2019/2020年)まで進んでいる。「フォーミュラ」はF1のように、4本のタイヤとドライバーが露出した車両形態を指す。「E」は「電気の」を意味する「Electric」を表している。F1が化石燃料を使った内燃機関(エンジン)搭載車の頂点を自認するカテゴリーなら、フォーミュラEは電動化技術の頂点を目指すカテゴリーだ。「電気のF1」を目指そうとしている。
シーズン1からシーズン4までは「Gen1」と呼ぶ共通のシャシーを用いていたが、シーズン5(2018/2019年)に第2世代の「Gen2」シャシーに切り替わった。最大の特徴は、バッテリー容量(リチウムイオンバッテリーを使用)が大幅に向上したこと。Gen1のバッテリー容量は28kWhだったが、Gen2ではバッテリーパックの大きさをほとんど変えずに52kWhに引き上げている。Gen1を使用したシーズン4までは、80〜90kmに走行距離が設定されたレースの途中で充電済みの車両に乗り換える必要があった。Gen2を導入したシーズン5以降は、45分+1周に規定されたレースを乗り換えなしで走りきる。
開発コスト削減の観点から、チームが独自にバッテリーの開発を行なうことはできない。つまり、指定された共通のバッテリーを使う決まり。シャシーも共通で、ウイングなどの空力開発も禁止されている。チームが独自に開発できるのは、モーターとインバーター、制御ソフトウェア、それにギヤボックス、ドライブシャフトだ。ギヤボックスに設けるリヤサスペンションの車体側取り付け点も独自設計が可能。油圧ブレーキと回生ブレーキの配分を制御するブレーキ・バイ・ワイヤ(協調回生ブレーキシステム)の開発も許されている。
レース中に使用できる電気エネルギーが限られているので、それをいかに上手に使って速く走るかが勝負を左右する。その意味で、効率の高いモーターとインバーターに加え、効率の高いエネルギーマネジメントを可能にする制御ソフトウェアの開発が焦点になっている。
モーターの最高出力は250kW(約340ps)に制限されている。ただし、出力をフルに引き出せるのはフリー走行と予選のみ。レース中の最高出力は200kW(約272ps)に制限されている。コースごとに設定されるアクティベーションゾーンを通過すると、一定時間アタックモードに切り替わり、225kW(約306ps)に出力が上がる。また、SNSなどを利用した人気投票による上位5名のドライバーはレースの後半に5秒間だけ、250kWのフルパワーを引き出すことが可能だ。各ドライバーがどのモードで走っているかは、ハロ(頭部保護装置)に設置されたLEDの点灯色で識別できる。
フォーミュラEは走行中に排ガスを放出せず、エンジンを搭載するレーシングカーに比べて走行音が小さい利点がある。この利点を生かし、市街地の特設コースで開催するのが基本だ。シーズン6には12チーム24台が参戦しているが、このうち9チームが自動車メーカー系のワークスチーム(新興EVメーカーを含む)で、アウディ、BMW、DS、メルセデス・ベンツ、マヒンドラ、NIO、日産、ジャガー、ポルシェがエントリー。シリーズの急速な発展を受け、シーズン7(2020/2021年)からは、FIA(世界自動車連盟)が統括するF1やWEC(世界耐久選手権)、WRC(世界ラリー選手権)と同じ最高格式の「世界選手権」に格上げされることが決まっている。
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