【毎日更新・人生最高の3台(河村康彦編)】第3位:日産スカイラインGT-R/第2位:ユーノス・ロードスター/第1位:レクサスLFA 【私の人生最高国産車・ベスト3】280km/hオーバーのカタルシスが今でも忘れられないレクサスLFA(河村康彦)
- 2020/08/15
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MotorFan編集部
モータージャーナリストの河村康彦さんが「マイ・ベスト国産車」に選んだのは、2010年にレクサスが500台限定で発売したスーパーカー、LFA。テストコースで全開試乗することで、そのポテンシャルを存分に体感することができたという。
TEXT●河村康彦(KAWAMURA Yasuhiko)
第1位:日産スカイラインGT-R(1989年-)
「日本車も、ついにココまで来たか!」
この仕事を長年やっていると、「日本車も、ついにココまで来たか!」と、そんな感動を味わわせてくれるモデルに出会うこともある。いわゆる”R32型”と言われる1989年に登場のスカイラインGT-Rも、まさにそうした1台だった。
電子制御式トルクスプリット4WDシステムに、位相反転制御を取り入れた4WSシステム、ツインターボ付きのDOHCエンジン等々と、様々なハイテク・メカを採用するこのモデルの走りの実力を初めて教えられたのは、生産を行う栃木工場に付随する当時は”商品性評価路”と呼ばれた日産のテストコース。
今とは異なって走行方法には殆ど何の制約も課されなかった時代、このモデルは”すべて本”の取材などで走り慣れたこの評価路を、際立って自在度の高いハンドリングと圧倒的な安定感、そして何よりもそれまでに経験したあらゆるモデルとは全く別格の速さをもって、軽々と走り抜いてくれたのだ。
たまたま別の車両の購入計画があったため何とか踏みとどまる結果とはなったものの、それが無ければ恐らく自分も購入に至っていたはず...と、それほどまでにこのモデルのインパクトは強烈だった。輸出されなかったことからも明らかなように、それはまさに”日本のため”に生み出されたスーパースポーツ。「いやはや、これはとんでもないモデルが生まれたものだ」と、そんな感慨にふけりながらひたすら走り続けたものだ。
以降、R33型、R34型のスカイラインを経て現行R35型へとGT-RGT−Rの歴史は受け継がれているのの、「着るように操れる感覚の持ち主」という点では、いまだR32型を上回るGT-Rは現れていないように思う。
第2位:ユーノス・ロードスター(1989年-)
「全塗装したりサスをいじったりしながら7万kmを走破」
一方、「日本車のヴィンテージイヤー」と言われる同じ1989年に登場しながらも、全く異なる意味で「最高だった!」のが当時は『ユーノス』なる別のブランドを語っていた、マツダの初代ロードスターだ。
こちらは前出GT-Rとは対照的に”ローテク”の塊ではありつつも、走りの心地良さでは全く負けず劣らずのテイストの持ち主。終日の原稿作成で疲れた身体も、深夜にこっそりとガレージを抜け出し、ソフトトップを開いて最初の交差点を曲がっただけで一気に活力が復活! まるで強力なビタミン剤のようなプリミティブな楽しさに手頃な価格もあって、こちらは思わず購入を即決した!
当初はマツダ自身がそれほどのヒットを予想しておらず、デビュー時のボディカラーは4色のみという寂しい設定。それゆえ、購入早々にして街中で”同じモデル”に遭遇することに嫌気がさし、思い切って”全塗”にチャレンジしたりサスペンションをいじったりしながら結局7万kmほども乗り続けることに...というのも、今では良き思い出だ。
第1位:レクサスLFA
「袋井テストコースで全開試乗した思い出は脳裏に焼き付いている」
そして、「国産車に限る」という編集部からのリクエストを踏まえて選んだベスト1のモデルは、3750万円という価格もあってちょっと反則っぽい(?)ものの、そんな規格外の高価さも話題となったレクサスLFA。
レブリミットが9000rpmというレーシング・ユニットさながらの4.8LのV10エンジンを積み、最高速は300km/hを遥かに超えるというモデルを一般道でゆるゆる乗っても、その実力のほどを知るなど困難であるのは当然。
ところが、幸運にもこのモデルのテストドライブが叶ったのは、かのエンジン開発に携わったヤマハ発動機が所有する静岡県の袋井テストコース。2輪車用でもあることからフラットな完全舗装が施されたこのコースは、1周6kmほどの途中に立体交差がある珍しい構造。それもそのはずで、まるで鈴鹿サーキットを裏返したような(!)このコースは、「ある係数を掛けると、鈴鹿サーキットのラップタイムがシミュレート出来る」という話しも聞かれるレイアウトの持ち主であるのだ。
実際、いざコースインをするとそんなこのコースは、「鈴鹿もかくや」という高速サーキットであることに納得。拘りの調律が施されたV10サウンドを耳にアクセルペダルを踏み続けると、下り坂となったストレート・エンドではメーター読みで280km/hをオーバー! それは、今でも夢に見るようなカタルシスの瞬間でもあった。
というわけで、LFAの印象に関しては多分に「贅沢に過ぎるお膳立ての成せる業」という印象も否めないものの、とにもかくにもこれこそが、脳裏に焼き付いた国産車トップ1の思い出であることは間違いなし。
願わくは、現在でも「LFAこそがイメージリーダー」というプロモーションを続けるレクサスには、そろそろそんな10年モノのイメージを塗り替える、新しいフラッグシップの姿を見せて欲しいところでもあるのだが。
選者:河村康彦(かわむら・やすひこ)
【近況報告】
世界に広がる疫病で、海外出張は当然壊滅。そもそも”在宅ベース”ではあるもののそれがさらに加速して、喜んでいるのは甘えん坊のお猫さまばかり。そんななか、律儀にやって来るのがケイマンとスマートという我が家の2台同時車検。2年に1度の”8月禍”。
【プロフィール】
1960年東京生まれ。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストに。確かな運転技術を駆使して、自動車を冷静かつ的確に批評する。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員などを歴任。
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