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ニッサン・コンセプトカー NX-21 技術の日産はデザインも世界一をめざす! |1983年第25回・東京モーターショー 前編【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】

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1983年、第25回となる東京モーターショーは945台の展示車が並んだ。4年前の第23回で100万人を超えた来場者数は、120万人を突破。自動車業界に暗雲をたれこませた、オイルショックからの脱却を明確とした。そして展示される車も、さらに未来を見据えたものとなっていたのである。

80年代という充実の時代へ

1980年代初頭は第2次オイルショックによる厳しい船出となった。しかし基幹産業には底力がありこれまでの不景気とは何かが違うと国民は感じていた。海外のせいで今は物価が高いが、じき明るい未来がやってくるとトイレットペーパーの買い占めに走らなかったのである。
そして1982年にはNEC98シリーズコンピューターが発売になり、様々な分野での新製品が登場し新時代への可能性をみんなで共有できたのが1983年であった。

少々前置きが長くなったが、モノづくりやデザインが大胆にできることと、経済状況を反映した消費マインドは正比例しているということが言いたかったからである。

大きなが右ウイング式2ドア、そしてピラーは前後に2本という大胆さ。特に後方視界が抜群となる、実用性までしっかりと見据えたスタイリングも魅力的。

大胆なデザイン其の一、ニッサンの参考出品車NX-21。
いやー驚いた! 世界で初めて未来の自動車だと信じられるコンセプトカーが東京モーターショーに現れた。そのリアリティに度肝を抜かれた。楽な運転姿勢で(F1みたいに寝た姿勢ではない)必要な前方視界や居住性を実現し、ヘッドアップディスプレイに似た最新技術で後方視界を前方に映し出すといった様々な快適アイデアが盛り込まれ、しかも動力はガスタービン! を搭載していて今にも公道を走られそうだったのである。

リヤエンジン、ガスタービンと挑戦的な試み満載

実際に走ったかは記憶にないが、写真にも写っているようにクルマの後方にはセラミック・ガスタービンと控えめなロゴが見える。ガスタービンは1万回転以上の高速回転で初めて効率の良い出力が得られるのだ。回転数が下がるとトルクが得られない。しかも微妙な速度コントロールが難しく、ソルトレークなど直線コースでの速度記録チャレンジカーには適したエンジンだが、普通の都市交通の走行リズムに合わせるのはほぼ不可能だ。にもかかわらず……まさに意欲的すぎる提案! おおいに大胆だったのである。

それまでの世界のコンセプトカーはイタリアのカロッツェリアがリードし、まさにスタイリング・アドヴァンスド・カーであってスピード感の表現やアイデアの斬新さに偏った提案であった。だがNX-21は一皮むけていた。
数年後の都市に暮らすかっこいい人達を未来予測し、その人達にふさわしいクルマを大手自動車メーカーが自力でカッコよくデザインしたことを私は高く評価している。
完ぺきなフラッシュサーフェス(スムースなボディ表面)によるいわゆるモノフォルム(ボンネットやキャビンの境目が無いカタチ)、すべての表面はシンプルで美しいカーブで構成されていて、周りの景観が非常に美しく映り込む面造形をしている。

目玉焼きみたいに滑らかな造形はなんとCd=0.25とのこと!
リヤエンジン・リヤドライブを選んだのも空気抵抗を減らすためだ。
のちに、ピニンファリーナ(最大手カロッツェリア)が公開したクルマを模したクレイの塊で出来たテストピースがCd=0.20だからこれはすごい値だ。おそらくスケールモデルの床下の隙間を塞いだりしたと思われるが、それにしても素晴らしい。

何といっても中折れ式のガルウィングドアがきちんと開き、室内には座り心地が良さそうで「2001年宇宙の旅」に出てきそうな未来感あふれるデザインのシートがリアルであった。曲率の大きなウインドウは解放感にあふれ、インストルメントパネルやステアリングのデザインもよく考えられていて、これまでの“ショーカー”とは一線を画していた。
少々褒めすぎかもしれないが時代に対する提案性において、私は東京モーターショーの歴史に残る価値あるコンセプトモデルのナンバーワンではないかと思うのである。

リヤエンジンのため、フラットなフロアを実現。しかし、現代のEVを見るような広々空間だ。

NX-21は海外デザインセンターのポテンシャルの高さを証明

付け加えたい事柄がある。1979年、ニッサンデザイン・インターナショナル(NDI:現在のNDA)という開発センターがカリフォルニアに開設することが決定された。そして公開された初仕事がこのNX-21である。トヨタもすでにデザイン開発センターを開設していくつかのモデルを発表していたが、なんといっても突出した高いレベルの成果を出したのがNDIであった。
初代のセンター長は四本和巳氏で、チーフデザイナーは元GMのジェラルド・P・ハーシュバーグ、担当デザイナーには後にNDIトップに就任するトム・センペルだった。

これらをお手本として同様の成果を期待し、各社が本格的に海外からの人材確保も念頭にアメリカ西海岸だけでなく、ヨーロッパにもデザインセンターやスタジオを持つようになった。カーデザインのレベルアップと世界一を目指した競争が激化して行ったのである。

シンプルながら豊かさを感じさせるインテリア。81年にソアラ、ピアツッアが登場するなど、コンセプトカーにはより先進的なアイデアが求められた。

ちなみに、いま中国や韓国の大手自動車メーカーは、マツダや三菱自動車(現在は撤退してしまった)がデザインセンターを開設したカリフォルニア州オレンジカウンティー(オレンジ郡)のアーバイン付近に、大挙して日本企業を凌駕する大規模なデザインセンターを設け、高い報酬を掲げ優秀なカーデザイナーを根こそぎ集める勢いなのである。
デザイナーが移籍すればするほど、どのメーカーも最先端ではあるが同じようなデザインテーマに自然淘汰されてゆくという弊害も見え隠れする。
また優秀な人材を引き抜かれたら やり返す! カーデザイナー争奪戦は仁義なき戦いに近いものがあるのだ。

そしてメーカーの存続にもかかわる重大局面が、このコロナ禍の影響でやってくるのは避けられそうにない。それが本格的な自動車業界世界再編だ。

私が以前在籍した中国の政府系企業JAC江准汽車は、当時からフランス人や韓国人デザイナーが半数を占め、今年の5月末フォルクスワーゲンと資本提携した。いまや中国の急成長した大手自動車メーカーは本気で危機感を持って世界視野での再編を模索しているのである。日本でも2019年末にボルボといすゞが業務提携した関係で、これまでライバルだったUDトラックスがいすゞの子会社になってしまうなど驚く展開を見せている。トヨタもこれまで日本のメーカーのみの提携だったが、世界の波にいつ飲み込まれるか、または飲み込むのか、2020年末は大変なことになるに違いない。

これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。

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