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日産キックス車両開発主管に訊く「キックスがe-POWER専用である理由」第一世代e-POWERの完成形を搭載したキックス(後編)

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新型日産キックスと開発責任者の山本陽一車両開発主管(CVE)このクルマが旧日産ロゴの最後。「フロントのエンブレムの中にはミリ波レーダーが入っていて特殊な加工がしてあるので、新エンブレムに変えるのは、そうそう簡単にはいかないんです」と山本さんは笑いながら話した

期待のコンパクトSUVキックスのパワートレーンは、日産自慢のe-POWERのみ。ライバルひしめくBセグSUVで勝ち抜くための戦略を車両開発主管の山本陽一さんに訊いた。「キックスにコンベのエンジン搭載モデルをなぜ作らなかったのですか?」

Interviewer◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)

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キックスがe-POWER専用である理由

キックスはノートe-POWERと同じ1.2ℓ直3DOHCエンジンとEM57型交流同期モーターを組み合わせる「e-POWER」パワーユニットを搭載する

山本陽一(やまもと・よういち) 日産自動車 第二プロジェクト統括グループ 車両開発主管(CVE)
MF:日本でe-POWERに絞って出したのは英断だと思うし結果的に成功したと思います。でも、やっぱり台数を売ろうと思ったら、1.6ℓか1.5ℓのNAにCVTを組み合わせて価格も低くするという選択肢もあったと思います。ヤリスクロスのハイブリッドではない仕様と同じ価格で売れるじゃないですか? やっぱり電動駆動が気持ち良くて買ってくれるお客様もいる半面、この格好とこのユーティリティがほしくてキックスを買う人にとっては「いや別にオレは100%電気自動車なくてもいいんだよ」もいるはずです。これは開発側としてどうお考えになりますか?
山本:確かにそういうお声はいただいています。最初の乗り出し価格が安いのがいいというのは、まさに言われていますが、開発としては、キックスに日産の技術のe-POWERを搭載して先進技術をアピールしたいという思いがあったので、ICE搭載モデルを出しちゃうとグローバルに出ている既存のものを持ってきて、それにe-POWERを付け足したね、という見られ方をされるのがいやだったのです。ですから、そこはe-POWERに絞ったのは良かったと思っています。多少販売店からは売りにくいという話は聞きますが(笑)。そこは商品としてぶれないで良い商品になっていると思っています。
MF:そこで、ぶれないで「コレ(e-POWERだけで)で行こうゼ!」って強く言うのは山本さんの仕事?
山本:そうですね。企画は企画で意見を持っていますが、開発としての意見は言います。
MF:ディーラーに意見を聞いたら「いやいや、コンベのエンジンのも作ってくれよ」って言われると思うのですが……。
山本:言われますね。ですが、この価格でe-POWERを載せてプロパイロットも標準にするので絶対自信がある、ということでアグリー(同意)をしてもらいました。

1987年入社。車両開発部、車両設計部を経て、96年にNTC-NA車体設計部へ出向。フロンティアとエクステラの車体・フレーム部品設計など、北米生産車開発に従事した。98年には再び車体設計部に戻り、初代ムラーノ、11代目スカイラインを担当。2002年にはNTC-NA車体設計部でタイタンとアルマーダの車体・フレーム部品設計に加え、北米日産キャントン工場の立ち上げに関わった。05年には車体設計部主担としてフロンティア ナバラを担当。13年より車両開発主管としてジュークおよびキックスの開発を率いた

MF:今回のキックスは4WDの設定がありません。これも多分同じ理由で、とくに北関東以北から4WD作ってよ、という声があったと思います。そのあたりは今後追加されるのですか?
山本:まずはこのクルマは早くe-POWERを載せて世の中の皆さんに乗っていただきたいという思いがあって2WD仕様に集中させていただいています。確かに東北の方からかなり強い声を聞いているので、4WDについてはいま前向きに検討し始めているところです。
MF:リヤに小さなモーターを積むe-4WDですか?
山本:いま簡単にやろうと思ったらe-4WDです。
MF:それ以上のことをやったら、すごく時間がかかってしまう?
山本:そうですね。かなり大がかりに改修しないといけなくなるので時間はかかりますね。ご存じかもしれませんが、じつはe-POWERってかなり雪道でも強いので、開発としては2WDで積雪地でもアピールできるんじゃないかな、という思いもあって、まずは早く出したいので2WDに集中してやらせてもらいました。

一番売れているのは白ですね。白黒ツートン、グレー、次がオレンジツートーン、イエローは下から2番目くらいで、あんまり量はでてないですけど、日本で黄色はやっぱり少ないですね。やっぱり日産のDNAを残したいということで黄色を残してもらいました。こだわりの色です(山本)
MF:セレナも背が高いクルマでe-POWERを載せています。今回のキックスもちょっと背が高い。背が高いクルマのe-POWERはなにが難しいんですか?
山本:アクセルペダルに非常に敏感にクルマが反応してくれるので、うまくやるとすごく気持ちいいんですが、重心が高いので、最初作ったときはぱっとアクセルを踏んだらクルマのノーズが上がって後ろが沈んで全然気持ちよくない。走らない曲がらない状態ですね。それを今度はサスペンション系を硬めていってノーズアップしないような構造にしていくんですが、今度は地面からの入力がすごい厳しいとくに都会で乗るときに高速道路の継ぎ目とかですね。ペンペンって跳ねてかなり耳にくるとか身体にくるというのがあってそれを抑えるのに苦労しました。

MF:でも、すごくうまくできてますよね。乗り心地はいいですね。
山本:はい。おかげさまで、操縦安定性の専門チームがかなり時間をかけて作って、最終的にサスペンションの系を大きくしたりダンパーを変えたり、前後でタイヤの空気圧も変えていい仕上がりにできました。乗り心地には、遮音もかなり効いています。うまく段差を乗り越えても音が入ってくるとやっぱりうるさく聞こえます。タイヤがあるのでロードノイズはしょうがないのですが、そこから車体に伝わってくるノイズってすごく耳障りなんです。キックスは、ミニバン並みの遮音性能っていって威張っているんですけど、かなりいろんな対策をしています。運転席の前のダッシュパネルの前に少し質量が重たいマスダンパーのカーペットが敷いてあります。あとドアとかフロアにも遮音材入れていますし、じつはガラスの板厚も厚くして徹底的に遮音して、伝わってくる音が入ってこないようにしてEVネスを上げてます

MF:音が入ってこないから乗り心地がよく感じる?
山本:それもあるんじゃないでしょうか。ガラスの中間膜に遮音皮膜を入れていて前からの音も入ってこないので、最初走り出しはびっくりするくらい静かになったな。ちょっとやり過ぎたかなと思うくらい静かになっていると思います。

e-POWERの弱点を克服

エンジン形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:82ps(60kW)/6000rpm 最大トルク:103Nm/3600-5200rpm モーター:EM57型交流同期モーター  定格出力:95ps(70kW)  最高出力:129ps(95kW)/4000-8992rpm  最大トルク260Nm/500-3008rpm

MF:ノートe-POWERはEVで走っていると気持ちいいのですが、エンジンがかかるとがっかりする。やっぱり3気筒のエンジンがかかったらすぐに気がつくし……。
山本:そこはかなりキックスにフィードバックを入れていますそそもそもエンジンの充電の定点回転数をノートe-POWERより400rpm下げてますノノートは2400rpmで回るんですが、キックスは2000rpmまで抑えています最初にエンジンがかかる音のインパクトが大きいのですが、それを400rpm下げられたのが非常によかった。まず街中で低速の時にかかったときに静かに感じるんじゃないかな。
MF:そうか、ノートの時はいきなりエンジンが2400rpmにガンと上がるから……正確には2370rpmでしたっけ。それがいきなりくるとみんなびっくりしちゃう。
山本:それをキックスでは400rpm下げられたのは、かなりインパクトが大きい。
MF:それはパワートレーン開発陣に「こういう理由だから下げて」って言ったわけですね。
山本:そうです。みんなにがんばってもらいました。じつはあのくらいの回転数にすると少しエンジンが振動をし始めて下手をすると乗り心地が悪くなるのですが、そこはエンジンにいろいろ工夫を入れてもらって2000rpmでも振動しない、車体側も2000rpmで共振しないような設定をあちこちに詰め込んでいます。

オレンジ色をテーマカラーにするというのは、山本さんのお考えなんですか?(MF)/ あれはスタイリング、造形スタイリングがどの色が一番いいか、あるいは2トーンか。色のセレクションもカラーデザイナーがいて、カラーデザインの方が決めます(山本)

MF:ノートe-POWERはヒットしてすごくたくさんお客さんがいらっしゃって、たぶんいろんなフィードバックがあったと思うんです。一番のコンプレインは「エンジンがかかってときにうるさい」っていうのだと思うんです。今回はそれはビシッとクリアしましたね。
山本:もうひとつ言われたのは「すぐにエンジンがかかってしまう」ってことでした。うるさいエンジンがすぐにかかる。バッテリーで走る時間がすごく短いのはノートのいまの弱点なのです。今回、キックスではそこも勉強してなるべくEVで走れる時間を長くしたいということでいろいろ制御を見直してもらいました。ノート出したときには、どのくらいのお客さんがこのあと加速するかとか、掴みきれないところもあったので、バッテリーがなくなってしまうのが非常に心配なので、なるべく充電勝手な制御をしていました。しかし、市場の運転の仕方を分析してみたら、街中ではずーっとすごい加速をしている時間はそんなにないということがわかってきたので、どちらかというと充電側もエンジンをかけずに電気がいっぱいあるときはなるべくぎりぎりまでEVで走れるようにぎりぎりまでバッテリーを使う制御に変えました。そこでも静かなクルマになっていると思います。

MF:そういう意味ではバッテリー容量はノートのままで大丈夫だと確認できたということですか?もっと積んだ方がいいとかじゃなくて、ギリギリまでも使えばこれで充分だと。
山本:そういうことですね。充分使っても充電する時間がとれる。あともうひとつ、エンジンをかけたら、今度はかかっている時間を長くしています。それは電流収支を合わせるためになるべく遅くかけ始めてなるべく遅く切るようにして、エンジンはなるべく高速道路を走っている時にかかっている。なるべく低速はかからない。エンジンがかかっているタイミングを後ろにずらしている。で、それでバッテリーが減るのを防いでいるという勉強をしてパワートレーンの開発をしてもらいました。

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