マツダMX-30はSUVではなくスペシャルティカー。520km走ってMX-30の本質が少し見えた? 2020年に蘇ったセリカ、プレリュードだ
- 2020/10/28
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MotorFan編集部 鈴木慎一
マツダMX-30は、MAZDA3、CX-30に続くマツダ新世代商品群の第三弾だ。3台ともに「3」ベースで作られているが、そのキャラクターは見事に違う。ハッチバック(とセダン)のMAZDA3、クロスオーバーSUVのCX-30、ではMX-30とはなんなのか? MX-30と5日間過ごして考えてみた。
マツダの新しいクルマ、MX-30と数日間過ごした。「新しいクルマ」なのだけれど、これが「クロスオーバー」なのか「SUV」なのかは、よくわからない。サイズがコンパクトなことは間違いないので、「コンパクトな新しいクルマ」である。
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ひとつ言えるのは、写真で見るより(テレビCMで見るより)実車は美しいということだ。
”わたしらしく生きる”
”自然体ーMindfully designed with purpose:Your life”
というのが、MX-30のコンセプトなのだが、どうにもわかりにくい。クルマというハードウェアとしては、とてもよく出来ている。マツダの新世代商品群の第三弾だけあって、乗り心地もしっとりしていて良いし、インテリアの質感も高い。
MX-30ってどんなクルマでどんな人にふさわしいのか? 果たして狙い通り受け入れられるのか? を考えながら数日を過ごした。通勤にも使ったし、郊外へも出かけたし、箱根のワインディングも走ったし、渋滞にもはまったし、買い物へも行ってみた。
MX-30にふさわしい人は、まず「MX-30の実車を見て、かっこいい! 美しい!」と感じるのが最初のハードルだ。前述したように「実車」を見たらこのハードルはかなり低いと思う。かっこいいかの判断はごくごく個人の価値基準によるから軽々に言い切れないが、ここは軽くクリアできると思う。
その次は価格だ。
MX-30のグレード構成はシンプルだ。2WDか4WDか。以上終わり。あとは、色を選んでパッケージオプションを選ぶだけ(現在は100周年特別記念車が設定されているが)。
今回の試乗車は、FFでボディ色がポリメタルグレーメタリックの3トーン、パッケージオプションは
ベーシックシックパッケージ:7万7000円
セーフティパッケージ:12万1000円
ユーティリティパッケージ:8万8000円
360°セーフティパッケージ:8万6880円
モダンコンフィデンスパッケージ:12万1000円
合計297万9880円である。
付いていないパッケージオプションは、ボースサウンドシステム(7万7000円)くらいだから、300万円切りでフルオプションということになる。つまり300万円が次のハードルだ。
その次は、フリースタイルドアをマツダが呼ぶ観音開きの4ドアという構造だ。これが曲者である。
フリースタイルドアはやっぱり使いにくい。
数日間過ごした結論としては、そう言わざるを得ない。フロントドアを開けないと開かないリヤドアは、どう言っても使いやすいとは言えない。前後ドアをフルオープンに、さらに左右ドアをフルオープンにしたら広大な開口部が生まれて広々とした開放感が味わえる……のかもしれないけれど、そんなシーンは撮影以外ではなかった。
なんで使いにくいと感じるのか? それはマツダが「フリースタイルドアは使い勝手がいい」と説明するからだ。「2ドアクーペなんですけど、じつはこんな工夫があって、リヤドアが開くんです。不便だけど便利でしょ?」と言ってもらえていたら別の感想を持ったかもしれない。
このクルマは、クロスオーバーではなくてかつて絶大に人気を誇った「スペシャルティカー」の再定義なのだ。現在50代以上の人たちは、トヨタ・セリカ、日産シルビア、ホンダ・プレリュードが若者の憧れだった時代を憶えているだろう。ソアラ、スカイライン(クーペ)、三菱FTO、3000GT、マツダでいえばMX-6なども人気を集めた時代があった。スポーツカーではなくスペシャルティカー。
筆者も20代の頃、セリカを乗り継いでいた。4ドアなんてオジサンの乗り物だと思っていたし、車高は低い方がいい(シャコタンという意味ではなく)と信じていた。流面形セリカを見て「かっこいい!」と思って手に入れた(中古だが)が、選んだ理由は「かっこよかった」から。FFカFRか、ターボかツインカムか、なんて二の次で、かっこいいクルマで、”わたしらしく生きる”ために選んだのだ。
2ドアで後席の乗り降りはしづらいし、ラゲッジルームだって広くない。それでも、4人(あるいは5人!)でスキーへもドライブへも出かけたし、親を乗せてどこへでも送っていた。
MX-30って、ああいうクルマの楽しさを現代に蘇らせようとしているじゃないだろうか?
ちなみに
ボディサイズは
全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1550mm
ホイールベース:2655mm
流面形セリカ
全長×全幅×全高:4365mm×1690mm×1295mm
ホイールベース:2525mm
で、クルマの大きさはさほど違いがないのだ。背が低い方がかっこいいと思うのは昭和の価値観であって、現代は全高1550mmでもいい(なにより乗り降りがしやすい)のだ。
4ドアだと思っていると「うーん」となってしまうが、2ドアだと思って使えば「これは便利かも」とポジティブに感じられる(かも)。4ドアで便利でかっこ悪いよりも2ドアでかっこいい(けどちょっと不便)の方が、”わたしらしく生きられる”人向けの現代版スペシャルティカーがMX-30だ。
そういう目で見たら、「300万円で買えるかっこいいスペシャルティカー、クーペ」がほかにないことに気づく。トヨタ86は300万円で買えるけれど、目指すところがスポーツカーであってスペシャルティカーではない。フィアット500、アバルトも違うし……。
MX-30の月販目標台数は1000台。つまり1年経っても1万2000台程度しか街を走らない。ボディカラーも各カラーバリエーションに1トーン、2トーン、3トーンが選べるから、自分とまったく同じクルマに出合う確率は相当低い。これも”わたしらしく生きたい”人にとっては大きな魅力となると思う。
フリースタイルドアを開いて後席に乗り込めば、けっして狭苦しくはない空間が確保されている。セリカやシルビアの後席とはわけが違うのだ(当たり前だが)。そこからの景色は「飛行機の窓際の席」だと思えばもっともしっくりくる。
荷物もたっぷり積める。特筆すべきはオーディオの音がとてもいいことだ。MAZDA3からマツダのオーディオ(標準オーディオ)の音は抜群に良くなった。MX-30はそれにさらに磨きがかかったと言っていい。ただし、現代のスペシャルティカーらしく、CD/DVDを挿すスロットはなし(MAZDA3とCX-30にはある)。いつもは、クルマとシーンに合わせてCDを選んで乗り込むのだが、今回は(そのために)Apple Musicを申し込んでみた。CD(アルバム)ではなくプレイリスト(90年代ドラマ主題歌のプレイリストとか80年代AORとかがあるのだ)で音楽を聴く。すごく楽しい。
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